紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『ネバーランド』恩田陸

2005年06月20日 | あ行の作家
久々の恩田さん。一気に読んでしまいました。学園モノだからいい、
というわけではなく(実際、『六番目の小夜子』は外したし)、
具体的に“何”が良かったのか、ハッキリと言葉にできないのが
とてももどかしいのですが。強いていえば、男の子たちの発する
“青臭さ”でしょうか…言葉を選べよ、自分(^^;)。
懐かしいというのではなく、どちらかというと、憧れですかね。

舞台は、辺鄙なところに建てられた名門高校の寮「松籟館」。
文化財になろうかというほど古く、歴史あるこの建物で、
冬期休暇を過ごす4人の1週間が、とても悲惨に(笑)描かれます。

この設定はね、ある種のお約束でしょうよ。ねえ(誰か同意してくれ)。
確か男子高だし。作者は『トーマの心臓』のようなものを描きたかった、
ということだし。実際、その辺のエピソードも出てきたりしますが。
でも、そっち方面の話ではなく、非常に楽しくて苦しくて、いいかげんで、
でも重くて…やっぱり青臭い。その辺が、彼ら自身が悲惨である、
という辺りに繋がるのですが(伝わるでしょうか^^;)。

クリスマス、お正月と、家族で過ごすはずのイベントを、彼らは
寂しくて寒い寮で4人だけで過ごします。たった1週間だけれども、
そういったイベントを挟んで、普段からは考えられないほど“密接”して
過ごすうち、それぞれが背負っていたり、背負わされていたりするモノ、
普段は気付かなかったり、気付いていないフリをして済ませているモノに
対して、彼らなりにいろいろと考えることができるわけなのですね。
1人だったら絶対にできなかったこと。4人だからできたこと。
そんな“青臭さ”とともに、何が「ネバーランド」なのかということも
含めて、堪能していただけたらいいな、と思います。
木曜組曲』『夜のピクニック』が面白かった方はぜひ。


ネバーランド』恩田陸(集英社文庫)

『ルパン対ホームズ 怪盗ルパン3』ルブラン原作・南洋一郎文

2005年06月20日 | ら行の作家
ルパンは盛んに「ホームズは好敵手である」とは言ってますが、扱いは
そんなによろしくない(笑)。消えた宝くじの謎、老将軍の殺害、盗まれた
青ダイヤの謎を解くために、イギリスからホームズが招かれますが、
フランス国民は、大泥棒のルパンの応援をしてしまいます。フランスの
国民性が垣間見られる作品なのです(笑)。しかも、ホームズはルパンに
やられて失敗ばかりしてますし。しかし、その後に続く作品『奇巌城』で
ホームズはルパンに一矢報います。そのための前フリだと思えば、、、。
いや、思えないな(^^;)。ホームズとしては考えられない失敗だらけだもんねえ。

でも、ルパンも今回、ワトソンに大きなケガを負わせてしまうのですよ。
ルパンは決して人は殺さない、という“お約束”があって、そのため、
相手にケガをさせることもないだろうと信じていたのですね、私。
だから、ワトソンがケガをさせられたときは、ちょっとショックでした。
なんて純粋なんでしょう(笑)。
(なんだか感想になっているんだかいないんだか(^^;))


ルパン対ホームズ 怪盗ルパン3』ルブラン原作・南洋一郎文(ポプラ社)

『蠱猫 人工憑霊蠱猫01』化野燐

2005年06月20日 | あ行の作家
これはもしかしたら、全部読んでから感想を書いた方が
いいのかもしれません。続きモノなのです。

両親と決別したはずの美袋小夜子は、司書として学園に戻ってくる。
そこでの彼女の仕事は、まるで蔵そのものの書庫の整理。
祖父の遺した蔵書をひも解いていくうち、奇妙な“事件”が起こり…。

化野燐といえば、在野の妖怪研究家(ホントか?)として
有名な方ですが、“満を持して”発表されたこの作品。
私の感触からいいますと、まだまだ、全然本領発揮、とまでは
いきませんね。だから、余計に物語の壮大さを予感させるというもの。
京極夏彦がいろいろと協力しているようで(呪符のようなものを描いたり)、
そっちでも興味がそそられようというもの。

ただね。まだまだなんにも見えてこないのですよ(^^;)。
実は、主人公すらハッキリしてない感じ。たぶん、小夜子なんだろうけど、
後半から視点が変わって、それまでの話とつながりの見えない物語が
始まったりして、結局、何がなんだか分からないまま終わってしまったのです。
なので、2巻目『白澤』に期待…したいのだが、まだまだ続くで
あろうことを考えると、次作で何かが見えてくるかどうかも疑問なのですが。
それでも、妖怪好きにはたまらないお話だと思います。
や。“妖怪好き”とひとくくりにしちゃいましたが(笑)、
ある種ファンタジーですし、冒険小説ですし、なんならハードボイルドにも
できないことはない(無責任)。とりあえず、いろんな可能性を秘めている
作品には違いない。…あとは好みの問題かな(笑)。


蠱猫 人工憑霊蠱猫01』化野燐(講談社ノベルス)