紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「クラインの壺」岡嶋二人

2005年06月09日 | あ行の作家
えーと、悶えます(笑)。このひと言に尽きるんじゃないでしょうか。

初っぱなから主人公、とても切羽詰まった状態にあります。
私、苦手なんですよね、こういう展開(^^;)。結果(切羽詰まった
状態)が分かっていながら、どうしてそういう状態に陥ったかという
説明が後からついてくるわけですよ。「ああ、そんなことやってるから
切羽詰まるんじゃん」とか思いながら読まなきゃいけない、というのが
とても苦手なのです。だから「ドラえもん」が見られない(笑)。

ま、でもそれは、変な汗をかく、というだけで(笑)、これが
作品の善し悪しに関わるわけではありません(念のため)。

ゲームブックの原作を200万円で謎の企業イプシロン・プロジェクトに
売却した上杉彰彦。その原作をもとに企画されたヴァーチャルリアリティ・
システム「クライン2」の製作に加わることになったのだが…。

いろいろ工夫してみたんですけど、何を書いてもネタバレになりそう(笑)。
ただ、息つくひまなく先へ先へと進んでいかないと、どうにかなりそうです。
だから、悶えちゃうんですよね。「う゛ー」とか「あぅー」とか。
厳密にいうと、ミステリーではないかもしれませんが、楽しめます。
もう、悶える楽しさを知ったら病みつきになりますよね(くすくす)。

本作は、岡嶋二人作品の中でも、とくに井上夢人の色が濃く出た作品、
ということで、こちらが楽しめた方ならは、ぜひとも
井上作品に手を伸ばしていただきたいなあ、と思うのです(^-^)。


クラインの壺」岡嶋二人(講談社文庫)

「時計館の殺人」綾辻行人

2005年06月09日 | あ行の作家
館シリーズ第5弾。シリーズ中でも評価の高い作品で、
それに比例した厚さも魅力(笑)。とはいうものの、
ボリュームを感じず(重さは感じましたが(笑))、
ずいずいと読み進むことができました。

館シリーズの特徴はなんといっても、平面図。
(そうなのか?(笑))
迷路館では、さんざん迷いましたが、時計館は、
平面図を見ながら読み進むと、とてもスムーズに
ストーリーが頭に入ってくるのです。

「十角館」の事件から3年後、雑誌社に勤務する江南くんは、
鎌倉にある「時計屋敷」に少女の亡霊が出る、という噂を
検証すべく、3日間にわたって泊まり込む企画に参加する。
メンバーは、大学のミステリー(超常現象)研究会の面々、
編集長、カメラマン、霊能者と江南くん。メンバーたちは、
食料などを持ち込み、振り子時計を模した旧館へ閉じこもる。

江南くんといえば、「十角館の殺人」。あの衝撃は忘れられませんね。
今思い出しただけでも鳥肌立ちます。そこから続くこのシリーズ。
今回、島田潔と江南くんが、ひょんなことから再会を果たした
ことによって、よりシリーズとしての“強さ”を感じました。
(この場合の強さは、奥深さとか、趣深さとか、魅力、でしょうか)
以前から私はこのシリーズには、“雰囲気”をとても大切にしている
ところがある、というようなことを言ってきた気がしますが、
それがここにきて全開ですよ。中村青司という“怪物”は、
これらの建物たちに、一体何を仕掛けたんでしょうね。
そういうシリーズを通して鬱積してきた“何か”が、この「時計館」で
ある意味、姿を表したのではないかと、そんな風に思ってみたり。

トリックについて言及するのは得意ではないのですが、
何重にも張り巡らされたトリックが、最後の最後まで
読者を安心させてくれません。1つの衝撃的なトリックが
解明されても、まだまだその“衝撃”は続くのです。
個人的には「十角館の殺人館」にはかないませんでしたが、
そんなことはどうでもいいって思えるくらい、どっぷり
ハマりました。このシリーズはとても相性がよく、
中でもこの作品が、読んでいても体にしっくりくる感じ。
あー。ホント、楽しかったなあ(^-^)。


時計館の殺人」綾辻行人(講談社文庫)