超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

中国でスパイと名指された外務省高官の「正体」

2008-08-05 15:03:51 | 週刊誌から
<次の中国課長にスパイの疑い>
 七月十四日、中国の大衆紙「環球時報」が穏やかならぬ大見出しで、日本外務省の次期課長人事を問題視した。“間諜課長”と名指しされたのは、垂秀夫・南東アジア第一課長だった。

 同紙は、垂氏が八月一日に中国・モンゴル課の課長に就任する可能性が高いとし、「スパイを採用することはとても奇怪」であり、「外務省は検討を重ねて最後の決断を下してもらいたい」と締めくくっている。
 この記事は瞬く間に中国のネット新聞に転載されたが、「スパイ」と名指ししたきっかけは、今年三月十一日付の読売新聞が一面トップで報じた事件だった。
 〇五年春、北京市内の中国人マッサージ業者が中国の情報機関、国家安全当局に拘束された。翌〇六年、この男性は非公開裁判でスパイ罪に問われ、無期懲役が確定。男性は中国共産党の指導者用電話帳を知人から入手してコピーし、日本の「現外務省幹部と書記官」に渡していたとされる。この二人の外交官を、裁判所は「日本のスパイ要員」と断定したというのだ。
「読売記事の中の“幹部”とは垂のことだと、省内で噂になりました。ただ、二年前の非公開裁判が今になって報道されたのは、中国側が揺さぶりをかけるために情報を流したからだと言われています。五月の胡錦濤訪日前に、諜報機関が仕掛けた情報戦だ、という見方が省内では広まっていました」(外務省担当記者)
 中国が「スパイ」と断じ、次期中国・モンゴル課長として「不適切」という垂氏とは、一体いかなる人物なのか。
 京大法学部の故・高坂正尭ゼミで、垂氏の後輩に当たる前原誠司・前民主党代表はこう語る。
「垂さんは、中国寄りと言われがちな外務省のチャイナスクールにあって、チャイナスクールではない。人物、見識、知識、すべて立派な方で、日本の外交を進める上で大事な人です」
 実は、垂氏は北京の対日担当者の間では名の知れた外交官である。在北京の日本大使館で一等書記官を務めた後、香港総領事館領事、台湾の交流協会で総務部長などを歴任し、現職に就いた。
「香港時代も北京に飛んで情報機関と接触していた。危険な橋を渡ることがあるのか、チェーンファックスといって延々とファックスを送り続けられる妨害工作に遭ったこともある。後輩たちからは『すごい人だ』と尊敬されていました。本人は、『俺みたいな人生を目指すべきではない』と笑ってはぐらかしていましたが」(外務省関係者)
 台湾政界の関係者も、
「当時の与党の民進党に積極的に食い込んでいた。口数は多くないが、キレ者だった」と口を揃える。
「垂さんが離任するとき、台湾政界・官界から大勢の人が集まり、盛大なパーティーが開かれました。総務部長のお別れ会としては異例のことです」(在台湾記者)
 外務省でも、オフィスにいるより外で活動することが多く、相手が先輩だろうと「その情報は違う」と平然と言ってのける、官僚には珍しいタイプ。情報の確度から外務省幹部の信頼は厚く、また、中国側とも深い関係を築き上げ、日中双方のバランスの上で動いていたという。
 なぜ垂氏は非情にも「スパイ」と名指しされたのか。起訴休職外務事務官の佐藤優氏は、「中国側の脅し」と指摘する。
「私も垂氏の外交能力の高さをよく知っていますが、だからこそ、中国側は警戒するのです。外務省の課長が戦略を握っていることを、中国は知っている。今の秋葉剛男課長はタフネゴシエイターで、戦略的互恵関係を打ち出して成功していますが、次の課長は弱腰の方が中国にとってやりやすい。中国の手の内を知った課長ではやりにくいからクレームをつけるのです」
 人事を巡っては、今も省内に、中国に対して気を遣う声があるという。だが、毛沢東もこう言っているではないか。
「敵に反対されるのは良いことだ」と。

週刊文春08年7月31日
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居酒屋タクシーだけじゃない 霞が関官僚 コンビニも一割引

2008-08-05 15:03:06 | 週刊誌から
「役所のコンビニには割引制度があります。特に財務省内の店は値引率がいいので、何かと買いに行きますね」(内閣府の女性職員)
 コンビニといえばどの店舗も値段は同じ、と思ったら大間違い。“居酒屋タクシー”がバレたばかりの霞が関官僚だが、庁舎内のコンビニでもおいしい思いをしていたのだ。

 財務省地下一階にあるエーエム・ピーエム。品揃えは街で見かける店と全く変わらない。ただし利用できるのは、職員や入館チェックをパスした来訪者だけ。店内を見回すと、缶コーヒー百二十円、ボールペン百五円など、値札は外のコンビニと変わらない。
 ところが、レジを通すとレシートに違う値段が打ち出された。缶コーヒー百八円、ボールペン九十四円。なんと一一%引きである。弁当や化粧品も割り引くのだから、昼時に長蛇の列となるのは当然だ。
 あるコンビニエンス・ストア幹部が首を傾げる。
「基本的に、キャンペーン商品も含めて本部推奨価格をつけるもの。店独自に割り引くことは珍しいですよ」
 同じエーエム・ピーエムでも総務省内は弁当、ジュースに限って二十円引き、厚労省内は七%引き。外務省のファミリーマートは五%引き。経済産業省のセブン‐イレブンや農水省のローソンのように割引のない店舗もある。
 こんなのあり? と問い合わせると、財務省は、「値引きの理由は事業者の判断で、営業努力などによるもの」(会計課)。エーエム・ピーエム・ジャパンは「省庁との取組みのため、お答えしかねます」(広報)という。でも、営業努力ならどこの店舗でも同じだろう。
 疑惑を追及する長妻昭衆院議員が解説する。
「職員の福利厚生を理由に、共済組合が庁舎の一部を無料で借り受け、それをコンビニにタダで提供しているのです。だから割引がある。本来なら、テナント料をきっちり取って国庫に入れるべきで、私は二〇〇三年度にこの点を指摘しましたが、その時点で、全国の国の施設に入る店舗の半分以上がテナント料を払わずに入店していました。
 翌年に財務省の通達が改正され、テナント料を取るようになったはずですが、いまだに割引があるとは驚きました」
 ところがどっこい、テナント料は取るようになったものの、いまだに格安で提供されているのだ。
 財務省は昨年公募を行い、エーエム・ピーエムが年間四百八十万円のテナント料を払って入店するようになった。だが、これは相場の三分の一以下。他省も同様に安い賃料で提供しているので疑問をぶつけると、各省とも「通達に基づき、コンサルタントと相談して決めている」と胸を張った。
「福利厚生をやめろ、とは言わないが、国民感情を考えれば、相場の賃料を取って国民に還元すべきです」(長妻氏)
 霞が関を歩くと、割引店が続々見つかった。国交省や経産省に置かれる自動販売機は、五百ミリリットルのお茶(百五十円)が百円に、缶コーヒー(百円)が八十円。文房具店も、総務省は「全品一割引。合計三千百五十円以上なら二割引」、厚労省は「全品三〇%引き」。農水省の売店では「リーガルシューズ二〇%オフ」などなど。
 いっそのこと、官僚の給料も三割値引きで――。

週刊文春08年7月31日
コメント (1)
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