心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

潜在的なコンシューマーのニーズにリプライして,嫉妬アゲイン

2006-09-05 16:38:10 | 精神医学・精神病理学
ハーイ! サイパブです! ジュンちゃん!(意味なし)

ま,ともあれ,最近の検索ワードおよびアマゾンのクリック数がダントツで多い書籍があるのですが,それは以前「しっと,ねたみ,もうそう」というエントリで紹介した『病的嫉妬の臨床研究』という本なのですが,どうもその情報を求めて来訪してくださる方たちにサイパブったら有益な情報を提供できていない気が激しくしましたので,正直あまり得意ではないのですが,つとめて,主観を排したブックレヴューをたまにはやってみようじゃないか。君は! ってことで,挑戦してみましたよ。



病的嫉妬の臨床研究病的嫉妬の臨床研究
高橋 俊彦

岩崎学術出版社 2006-06
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まえがきにあるように,フリートマンfriedmann, M.の『嫉妬の心理学』が動機のひとつとなったとおっしゃっております。全体的には,非常に豊富に臨床例が散りばめられていて,オリジナルな内容になっております。

第1章は「嫉妬という現象」として,嫉妬の定義から始まり,クラインやテレンバッハ,フリートマン,ラガーシュ,ムーニー,エーなど多様な視点を提示し,症例を紹介しながら,論を進めております。

また,シェイクスピア『オセロ』,トルストイ『クロイツェル・ソナタ』,シェイクスピア『冬物語』,島尾敏雄『死の棘』など「嫉妬」を主題とした文学作品の解説も行なっております。

第2章は「文献の検討」として,病態や病因等について,主に精神医学の文献を整理されております。

第3章は「嫉妬妄想例の臨床的概観」として,ご自身の20年におよぶ臨床例を記述統計的に分類し,病的嫉妬の特徴について論じます。

第4章は「嫉妬妄想における嫉妬の意味による類型化」として,第3章での類型化に基づいて,症例に基づいて,具体的に詳述しております。

第5章は「統合失調症性とパラノイア性の嫉妬妄想における他者関係の比較」として,病的嫉妬を「統合失調症性」と「パラノイア性」に分け,その特徴を「他者関係」という視点から,比較検討します。

第6章は「青年期の嫉妬妄想例」として,一症例についての詳細な経過をみながら,じっくりと考察をすすめております。

あとがきでは「今後の嫉妬妄想研究について」として,またもや,症例を引きながら,概観します。

ともかく,嫉妬,特に病的嫉妬(嫉妬妄想)について,これほどまでに体系的に網羅したものは日本にこれまでなかったと思われますので,その意味で文献的な価値は大変高かろうと思います。

すなわち,これ一冊読んどけば,病的嫉妬に関する精神医学的な知識はほぼ得られるということでありましょうか。

正直,派手さはあまりないですが,地道でしっかりとした論調で,好感が持てます。これきゅっと絞れば,十分,新書になるよね。


妄想症例の研究妄想症例の研究
高橋 俊彦

金剛出版 1995-04
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ちなみにこういうのも出されておりますね。御興味のある方はどうぞ。


ま,ひとつわかったことは,私には,こういう正統的なレヴューのセンスがあまりない,ということですね。ニーズに応えられてるかどうかわかりませんが,もうこれでイッパイ・イッパイっすわ。


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