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想い事 家族の記録

難病の父と生きる
鬱病
ふたり暮らし

言葉がなくても、伝わった。痛みの夜を、そっと温めてくれた。花が舞ってた。君が飛びこんできた時。君がいたから、僕はひとりじゃなかった。

2025-04-22 10:12:00 | 日記


【梅見地獄】あの梅見は、私の精神を焼いた。

早朝勤務を終え、iPhoneを開くと、オジキからLINEが入っていた。
「休みなら花見でもどうかと」だって?

あの惨劇の後にか!?

オジキ、血を見たいのか?
それとも私の精神の瓦礫の上で踊りたいのか?

もちろん私は返信した。
「悪い、仕事だった」と。
でも心の声はこうだ。
「花見はひとりでしか行かん主義なんだよ」

雑音はシャットアウト。
撮影の邪魔は赦さない。
私は遊びでシャッターを切っていない。
これは任務。命懸けの花弁回収任務。

何故そこまで意固地かって? 
思い出しただけで胃液が出そうな、梅林地獄の記憶があるからだ。


【本当は語りたくなかった、越生梅林の惨劇】

当初はおかーさん(埼玉)とふたり、のんびり優雅な梅見をするはずだった。
だがそこへ義弟君が突如「車で送るよ~」と爆弾発言。

結果、
→ 義弟一家との梅見ツアー、爆誕。

誰も彼も、梅のことなど眼中にない。
義弟君はベンチで即死(※比喩)、
娘たちは「咲いてるね」しか云わない。
嫁は屋台ダッシュで姿を消す。
私は? レンズ越しに梅を見つめながら、心の中で叫んでいたよ。

「ひとりで来たかった!!」


【災厄飯 鮭のおにぎりは呪物だった】

花見の目的がすり替えられていた。

花より団子。

集団行動ゆえに、当然のように「お弁当」持参。

そして渡された、それ。

見た目は普通のおにぎりだった。
ホイルに巻かれていた。
受け取った瞬間、背筋がゾワリとした。
気のせいか、それが動いた気がした。

中身を確認する間もなく、
無意識にかじってしまった。

――舌に、鮭が触れた。

あの香り。あの、生臭さ。
あの、脳を逆なでする塩気。
喉の奥から、「ゴボッ」と何かが上がってくるのを感じた。

これは、ただの鮭じゃない。
これは、鮭の形をした、怨念のかたまりだ。


【記憶の底から蘇る、ハラス】

思い出した。
昨夜、みんなで食べた、鮭のハラス。
あれは確かにおいしかった。
脂がのっていた。
私も笑っていた。

なのに、何故?
何故、冷えた瞬間、こんなにも攻撃的になる?
もはやこれは、鮭ではない。
ただの、呪物だ。

胃が縮んだ。
背筋が凍った。
吐き出したら、負け。
場の空気が崩壊する。
おかーさんが泣く。
私は痙攣しながら耐え抜いた。

そして、「おいしかったよ」っていう顔して、死んだ。

食後の道明寺――味、わかんなかった。
写真――もうどうでもいい。
私――終わってた。

梅見は、終わった。


【そして、私は誓った】

二度と、花見に他人を連れて行かない。
二度と、鮭おにぎりを口にしない。

そしてもし今後――
誰かが「おにぎり握ってきたよ~」と笑顔で近づいてきたら、叫ぶ。

「具は何だ!? 
 
 まずは申告しろ!!!」


【唯一の救い 天使、現る】

帰りの車内。
肉体も精神も液状化していた私に、
9歳児の天使・Y君が、ふわりと枕を差し出した。

「疲れたら寝ていいよ?」

あれ……? 今、天界から声がした……?
その枕に、私は命を預けた。
魂も落ちた。
あの瞬間だけが、現世の救いだった。


【結論】

梅見で学んだ。
私は、群れない。馴染まない。寄らない。
桜も、ネモフィラも紫陽花も、ぜんぶ、ひとりで行く。

オジキ、悪いが私はひとりが安らぐ。
でもな……飲みの誘いは断らんよ。
酒はひとりより、賑やかな方が、旨いからな。


ではここで、梅見裏話。

「Y君視点・天使覚醒回~僕は見た。あの日、梅林で泣いてた人を~」をお届けします。

『ふわふわ枕と、しゃけの呪い』

今日は家族みんなでおでかけだった。
おばあちゃんが云ってた。
「梅が咲いてて、きれいなんだよ」
僕は花とか、あんまり興味ないけど、おまつりの屋台は好きだし、
まあ、悪くない。

でも、梅林についたとき、なんか変だった。
みんな楽しそうにしてるのに、
ひとりだけ、空気のちがう人がいた。

その人はね「すっごく静かに泣いてる感じ」がしたんだ。

変だったのは、おにぎりのあと。

車のなかではちょっと喋ってたのに、
お昼食べたあと、急に無口になった。

あの人が食べてたの、たしか「しゃけ」だった。
しかも、おばあちゃんが「昨日のハラスで握ったのよ~」って自慢げだった。
でも、その人は笑ってなかった。
僕、見たんだ。
口元を押さえて、遠くを見てる顔。
あれは、絶対「おいしくない顔」だった。
けど、むりに笑ってた。

(……あ、この人、「しゃけ」がダメなんだ。)

しゃけは、呪いの武器かもしれない。

家に帰ってから、こっそり検索してみた。
「しゃけ おにぎり トラウマ」
出てこなかった。
でも、あの人の眼は、戦争から帰ってきた兵士のそれだった。

だから、枕を貸した。

帰り道、車の後部座席で、
その人がすごく静かに座ってた。
僕は、勇気を出して云った。

「疲れたら寝ていいよ?」

その人は、ちょっとびっくりしてから、泣きそうな顔で、笑った。

そして、
僕の枕に頭を預けて、寝ちゃった。
なんかすごく、安心した顔してた。

僕は、天使じゃないけど、時々その人は、
僕のことを天使って呼んだ。
あの時だけは、天使になれてたかな。

「しゃけ」は好みが分かれるから、注意。

もしまた、花見に行くことがあったら、
「おにぎりはしゃけ以外でお願いします」って、云ってあげよう。

あと、ひとりで花見に行きたい人は、無理に誘わない。
それが、僕の、小さな決意。

                 おしまい



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