Doll of Deserting

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偽善との共鳴:碌(藍桃)

2005-07-22 16:00:30 | 偽善との共鳴(過去作品連載)
碌:センサリーガーデン
 桃は、五番隊舎の外にある庭にいた。美しい花々がそこいら中に散乱していて目に麗しい。しかし桃は、ある一点で目を止めた。この庭の花達は枯れることがない。一年中時期に関わらず同じ花が咲き乱れている。その中で同じように咲き続けていた花が、ある日突然枯れた。それは牡丹と、矢車菊だった。それが何を象徴するものなのか、桃はあえて気が付いていない振りをしていたが、それももうする必要はない。
 牡丹は、あの人の花。あの美しい銀髪の、ああいうのを現世では何て言うんだっけ。アルビノ、そう、確かアルビノと言っていた。桃は思う。結局藍染隊長は彼のことを忘れてはいないのだ。藍染隊長は、決してあの男性に恋愛感情を抱いていたわけではないけれど、誰よりも信頼していたことは確かなのだもの。そう、あたしなんかよりもずっと。桃は考えながら、ふと自嘲的な笑みを浮かべた。
 そしてこの矢車菊と牡丹は、彼が三番隊の隊長となるべく五番隊を離れると同時に枯れていった。矢車菊は、三番隊の隊花だ。ここには十三隊の隊花が全て植えられている。ギンが五番隊を離れたのは桃がまだ真央霊術院を卒業する前だったので、桃はこの花が開いていたところを見たことがない。枯れた理由だけ、古株の隊員に聞かされたのだ。
「またここにいたのかい、雛森君。」
 背後から、穏やかな声が聞こえた。それはここにいたことを咎めるような口調ではなかったが、なぜか桃は僅かに震えを覚えた。
「…ここは、あなたの心と同じですから。何かに迷うと、ここに来るんです。」
「僕の、心か。」
 藍染は優しい目をして桃の方を見つめた。出会った頃から少しも変わらずに、ともすれば男よりも強いかもしれない意志を持っている。そんな彼女がふと弱さを見せるのが、自分の心に投影したこの庭なのかと思うと、自然に笑みが零れる。
「でも、今ここの花が全て咲いていないところを見ると、隊長は満たされていないんですね。」
「…うん、まあ…。随分昔の話だけどね。」
 信頼していた。それこそ背中を預けられるほどに、彼は、ギンは強かった。しかし新たに配属されてきた副官は、幼さの残る少女だった。そのことに、不信感を覚えなかったと言えば嘘になる。
「私じゃ、駄目ですか隊長。誰よりも信用する副官には、なれませんか。」
 女として見られるよりも、むしろそんな存在になりたかった。恋人でもなく、ただの上司と部下でもなく、友人でもない。そんな存在になれば、いつまでも型にはまった理由で別れたりはせずに済むと。
「何を言っているんだい、雛森君。後ろを見てごらん。」
 それを見れば、今の僕の心なんて分かるはずじゃないのかい、と藍染はうそぶく。桃が後ろを見ると、大きな桃の木に、これ以上ないほど桃の花が満開になっている。桃は、何を言っていいのか分からず、そっと頬を紅くしてうつむいた。この庭に、この上ない癒しを感じながら。


 何じゃこりゃあああ!!恥ずかしい。藍ギンとかではありません。藍染隊長を頑張って白く白く書こうとしたら、無駄に甘い話になりました。庭は捏造です。思いっきり。ただこういう庭があったら面白いのではないかなあ、と。三番隊の隊花が合っていますように…!(・Д・*)ガクガクブルブル牡丹が一番ギンに似合うと勝手に思っているのですが。(痛)

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