ぽせいどんの今日の一枚

写真とかCGとかを気ままに + DIY

パラオ共和国(ベラウ共和国) 1993年  その4

2021-08-04 12:51:58 | 写真 海

   二本目 ジャーマンチャンネル

 セッティングはスタッフの手で既に終えていた。
 「何か質問は?」ハルがブリーフィングを終えて訊いた。
 「今回も一本目と同様なペースですか?」
 「・・・・・・?」
 「移動距離は少なくてもいいですからもう少し余裕を持って周囲を鑑賞したいのですが。
  でも他の方々がそのままのペースの方が良いと言うなら私は大勢に従いますけれど」
 我々はファンダイブに来たのであって講習を受けに来たのではない。体育会系の水中訓練もどきは願い下げだった。
 ましてこのパーティは初心者と体力の乏しい?女性が大部分である。
 他の者も声に出しこそはしなかったが同意見のようだった。
 皆、我が意を得たりと言うように無言で肯いた。
 ハルもそれで漸く気づいたようだ。
 「皆さんがそう言うなら僕はどっちでも構いませんよ」と言った。
 どうもこいつはサービスとは何たるかを理解していない。
 予定のコースをさっさと一周すれば、それで自分の仕事は終わりとでも思っているのだろう。

 ギア装着。
 「空気が抜けているみたい」丸ポチャが声を上げた。ジャイアンがバウから飛んで来た。
 「大丈夫みたいですね」一通りチェックしてそう言った。 
 「抜けているのは本人だけだったりして」と私。
 「いい、ツッコミですね」とジャイアン。爆笑。丸ポチャも一緒に笑った。
 ピンクとSASが早々とバックロールでエントリー。
 「やってみます」とそれを見ながらフィジーがきっぱりと言った。
 丸ポチャは既に乾舷に腰掛けてスタンバイしていた。暗黙のうちに彼女が見本を見せることとなった。

 丸ポチャはゲージとオクトパスをさばいてマスクを抑えた。
 次の瞬間いきなりバックロール。
 私とジャイアンは唖然とした。思わず顔を見合わせた。
 『レギュレターはどうしたんだ。レギは!?』
 いよいよ覚悟を決めたフィジーのバックロールエントリー。アドバイスは適切にした。
 水音。飛沫。多少ぎこちなかったが無事水中へ。

 ポイントが異なれば棲息する魚の類も異なる。
 ここは所謂大物には縁がない。



 その代わりに艶やかなコーラルフィッシュが群生していた。
 チョウチョウウオの類は未撮影の種が次々に顔を出す。



 ガイドのハルもゆっくりとしたペースで進んで行く。
 私は一本目の遅れを取り戻すかのように次々とシャッターを切った。
 ピンクも今回はカメラを持ち込んでいた。


 イエローボディ。SEA&SEAのMX-10だ。
 固定焦点故に非常にイージー。記念写真を撮る程度ならばいいカメラだろう。

 辰也のキックが変わっていた。左右の脚に多少のばらつきがあるもののどうにかこなしていた。

 エキジット。午後一時半。陽はまだ充分に高い。だが艇は早々と帰路についた。
 再び150馬力ツインがうなる。
 私はいたって元気だった。次々に目の前を通り過ぎる大小さまざまの島影をF4を取り出せないことを悔やみながら眺めていた。
 フィジーは膝を抱えるようにして蹲っている。妹(実は私よりも先にCカードを取得)ほどではないもののこの娘も重症である。
 他の三人は心配する必要は無さそうだった。周囲の風景を眺める余裕もある。
 ピンクが船を漕ぎだした。(後の話によると朝便で到着。そのまま乗船したとのこと)
 頭部が微妙に傾き一定角度まで下がると跳ね上がるように元へと戻る。その姿を微笑ましく思う私はやはり立派なオジサンか。
 ※船を漕ぐ。 居眠りをする。そのさまが、船をこぐのに似ているところからいう。 最近はこの種の比喩が通じないことが多くなったので敢えて説明を。

 「綺麗ですね」SASが話しかけてきた。
 「ええ」と曖昧に応えた。嫌いなタイプではないのだが私の洒落に乗ってこない女性には適当な言葉が見つからなかた。
 ※今だったら・・・「ええ」の後に「しかし、あなたの美しさの前ではこの風景も色褪せて視えます」くらいは言うだろうな。

 PPRでカップルを降ろした。艇の上では会話が無かったが桟橋を歩いて行く二人が手を振った。
 残された四人の美女?も一心に手を振る。
 私は会釈でそれに応えた。

 接岸。出航してから六時間が経っていた。潮は底だった。朝は岸壁と乾舷が同じ高さにあったが今は岸壁が頭上にある。
 しかしここはよくできていた。岸壁を抉るように階段が設けられていた。接岸しても艇は傷つきにくい。
 
 私は流石に慣れていた。艇の上から軽やかに(本人はその心算)跳躍。そのまま階段を上がる。
 悲鳴!。私の後に続いたSASが滑って転んでいた。
 海育ちの私は無意識のうちに凹凸のある場所を選んで脚を運ぶ。
 が、彼女はフラットな面にいきなり踏み込んだようだ。
 こんな場所は海苔の類が繁茂していて脚を取られやすい。充分注意することに越したことは無い。
 スタッフが客に注意を促してもしかるべきなのにそれは無かった。
 悲鳴!。『またか、今度は誰だ?』
 下を視ると同行した女性スタッフだった。同僚に冷やかされている。スタッフがこのていたらくだ。 



  海水に漬かる部分は海藻が生えている場合が殆ど。うっかり踏みこむと滑って転倒することが多々ある。
   緑の部分。階段の縁に土踏まずを掛けると滑らない。
   港の船曳場などは劣化して凹凸があるところを歩く方が無難です。

 スーツを脱ぎ捨てて送迎バスに乗り込んだ。同行した美女?四人とその他三名がすでに乗り込んでいた。
 丸ポチャがログブックを取り出していた。
 「最初のポイント名、分かりますか?」と訊いてみた。
 「何とかコーラルガーデンとか言った気がしますがよく聞こえませんでした」
 「訊いて来ましょう」バスを降りてジャイアンを捜した。
  
 「分かったぞ」バスのステップを昇りながら言った。
 「教えてください」フィジーが振り返った。
 「やだ」フィジーは信じられないような顔をした。
 「あとで 肩を揉みますから」
 「本当だな、では415号室だから・・・」
 「じゃ、隣だ。朝口笛を吹いてませんでしたか?」先刻から黙っていた丸ポチャが突然顔を輝かせて訊いた。
 「口笛?。吹いたかもしれない」
 「そうでしょう。私達ウルトラマンタロウの口笛で目が覚めたんですよ」
 「キャハハハ」後席から笑い声があがった。昨夜ホテルで私の先を歩いていた若い女性だ。
 「ウルトラマンタロウは吹いた憶えは無いな。レパートリーの中には無いよ」
 ※私が観たウルトラマンは初代・セブン・帰って来たウルトラマンまで。

 ホテルに到着。バスルームに直行。汗と塩を落とした。辰也の入浴中に珈琲を淹れる。カフェインが細胞の隅々まで行き渡る。
 空腹だった。ホテルを出て近くのレストランへ。クローズ。午後四時では開いている店は無かった。
 ホテルの向かいの高島屋へ。食品売り場を覗いた。
 サンドイッチ・アップルパイ・

 なんだかよく分からないが中心部が怪しい赤の菓子のごときもの。
 生ハム・ビール・やはり怪しい雰囲気のソフトドリンク・ミネラルウォーター。
 いろいろ買い込んで15$。
 アイスクリーム。これはなかなかいけた。一箱六個入だったのでお隣さん(フィジー・丸ポチャ)にお裾分け。
 怪しいドリンクは味まで怪しい。だが腹をこわすことは無いだろう。
 サンドイッチはチーズの塩味がややきついがこれはこれで旨かった。
 アップルパイは辰也はいたく気に入ったようだが私の評価はいまひとつ。
 ふだんは飲まないビールもたまにはいい。

 レストランの開く時間になった、しかしあれこれ食していたら満腹になっていた
 本日の夕食は・・・もういいだろう。
 「このサンドイッチ旨いですね。明日の朝食に買っておきましょうよ」
 辰也の提案に土産物を物色がてら再び高島屋へと。

 まずはお決まりのTシャツ屋。サイズが大きい物ばかり。自分用には良いが小柄な者への土産にはちょっとごうか。
 木彫りのマンタ。この辺が手ごろか。
 辰也はポルノチックな製品を視て喜んでいる。『はなれろ!』
 絵葉書を数枚購入。
 二階も一廻り。規模は大きいが品物は代り映えしない。ざっと見て廻り早々に引きあげた。
 階段を降りたところでお隣さんに遭遇。
 「もう部屋に帰るんですか?」とフィジー。
 「その心算ですけど」
 「じゃあこれ」ポテトチップスを丸ポチャが取り出した。
 「アイスクリームのお返しです」
 丁重にご辞退。
 

 突き当りの417号室の前に女が膝を抱えていた。
 バスの中で大笑いした女だ。(後にトシエと言う名と知る)
 「こんばんは」向こうから話しかけて来た。
 「どうしたの?・・・部屋に入れて貰えないの?」
 「開けてくんない」
 「それは、嫌われているのだ。お前性格悪いだろう」
 「そんなことなーい」

 ダイビング関係の友人に葉書を書き始めた。私の文はあっさりしている。
 「PALAUで水中写真を撮ってます。どうだ、うらやましいだろう」
 ア**(ダイビング器材メーカー)の白井宛てには二人で書いた。
 辰也はナポレオンを見たぞ。と誇らしげに書き始めた。
 「アホ。ナポレオンなんてのは特別珍しい魚ではないのだ。白井は何度も視ているはずだ」
 
 午後九時。何もすることが無い。ベッドに寝転んでロングピースに点火。辰也はログブックをつけている。
 まだダイブテーブルを充分に理解できていない。私のログを盗み視ている。
 『そんなことではランクアップは夢のまた夢だぞ』

 「おい、マッサージでも呼ぶか?」
 「フロントに行って頼んで来ましょうか?」どうも分かっていない。
 「肩なんて凝ってないよ。それにここはパラオだぜ、日本のホテルのように簡単にマッサージなんて呼べるか」
 「・・・・・・?」
 「隣のマッサージ嬢だよ」

 お隣さんがポテトチップスを抱えてやってきた。
 「凄いカメラ!」部屋に入るなりベッドの上に転がっている三台を見てフィジーが叫んだ。
 「まあこちらに掛けてください」椅子をすすめた。
 「あっー、これ私とおんなじ」今度はダイビング雑誌のコピーを見つけて叫んだ。
 「・・・・・・・」
 「私もこの本を視てパラオに決めたんです」フィジーは何ページかを剥ぐって持って来たらしい」
 
 まずは簡単な自己紹介。
 丸ポチャは江戸っ子・23歳・名前は***。
 フィジーは浪速っ子・25歳。***と名乗った。
 昨秋サイパンで講習時に一緒になり以後親交を深めて今回のパラオとなった次第。
 「サイパンへはいつ行ったの?」
 「十一月です」
 「私は十月だったな。ラウラウビーチとグロットに潜った」
 「ヘェー、いいな。私もグロットには潜ってみたかった」
 「フィジーの帽子被っていたね。行ったの?」
 「はい。良かったですよ」
 「妹が行ってるんだよね。私も昨年行こうかどうしようか迷っているうちに取れなくなってサイパンになっちゃった」
 「他には何処に行きました?」
 「海に限って言えば・・・沖縄本島・慶良間・小笠原・奄美・大島・・・フィリピン・・・」
 「フィリピンの何処ですか?」
 「ボラカイ島」
 「エエッー。ボラカイへ行ったのですか?」
 「うん、だが、ボラカイを御存じとは・・・」
 「行きたかったんですよね」
 「何にも無いところですよ」
 「それがいいんじゃないですか」気があいそうだ。
 「でも女の子には薦められないな」
 「どうしてですか?」
 「日本人は俺だけだった。他は白人の男とフィリピン系の女の子のカップル。女屋さんで調達したのだろうな」
 「そんな島なんだぁ・・・」
 「そんな島なんですよ。そして通称ドラッグアイランド」
 「・・・・・・?!」
  ※1993年の会話です。ボラカイに行ったのは1991年。



 「いい写真撮れました?」
 「一本目は期待できないな」
 「あれはひどかった。何にも見られなくて・・・でもファンダイブは初めてだったから『こんなものか?』とも思ったけど」
 「違うね。ファンダイブとは FUN(楽しむ)の文字通り楽しむものであって訓練とは別物だよ。ガイドは客の安全管理をしながら楽しませねば。
  今日のガイドはコースを巡るだけでちょっと問題ありだな。サービスの教育がなってない。でも私が要求したから二本目はなんとか楽しめただろう」
 「はい、よく言ってくれたと心の中で拍手をしてました」

 「慶良間はどうでしたか?」と丸ポチャ。
 「凄くいいところですよ。何しろ世界三大美海のひとつですからね」辰也が私に代わって得意そうに答えた。
 ※講習最終日、海洋実習で二本潜っただけ。
 しかし、ここは辰也に任せよう。何しろ他の海は話題にしたくても出来ないのだから。
 『あっ!。御宿は出来るか』
 だが、この語り部は慶良間のすばらしさを充分に伝えることが出来なかった。三大美海から先が出てこない。ついつい口を挟んでしまった。

 二人は沖縄は未経験。
 「また秋に大勢で行くかもしれない」と言ったら参加表明。
 今年の秋のツアーは昨年以上に盛大になりそうだ。

 アルコールも手伝ってかだいぶ打ち解けて来た。
 一本目に視た亀が話題になった。
 「エントリーしてすぐでしたよ」と丸ポチャ。
 「私はラストエントリーだったからな・・・残念だった」
 しかし、亀の話ならばとっておきのネタがあった。
 「本で読んだのだが・・・発情期のパートナに恵まれなかった雄亀はダイバーを見つけると背中にしがみついて来るそうだ」
 「本当?」
 「本当らしい。雌の亀と間違えるんだろうね」
 「・・・・・・?」
 「ウェットスーツのお尻が破かれるそうだ」
 「エッー・・・!」
 「だから、その時期にはダイバーはウェットスーツの下に貞操帯をつけて潜るんだよ」
 「うそー」
 この話は官能を刺激したのでもないだろうが丸ポチャにはいたく気にいられた。
 「亀、亀、・・・亀」と暫くの間はしゃいでいた。

 夜もだいぶ更けて来た。他の部屋は昼間の疲れでかひっそりしている。
 しかしダイビングの話が途切れればヨットの話。そして夏のおんじゅくの話。
 海の話はいっこうに尽きることが無かった。

 つ づ く


 



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