
十月二十二日
昨日と同じダイビングボート。本日も大勢である。
我々のグループだけでもガイドのKAZU、私、妹グループ三名、もう一名が三十代半ばの男。
他店もほぼ同様である。
妹はすでに酔い止めを服用していた。あとは海が穏やかであることを祈るだけだった。
港湾を出た。波は昨日よりも高さを落としていた。フライブリッジに昇ってもスプレーを浴びることは無かった。
船長も本日の操船はここで行っていた。
嘉比島 ブツブツ珊瑚
嘉比島に到着。KAZUのブリーフィング。バディの組み合わせ。
妹達は三人一組。私と三十代半ばの男。まあ順当な組み合わせだろう。
「体調が悪いから浅瀬にいますから」とバディ。
「そうですか。私もカメラがありますから・・・その辺は適当にやりますか」
妹の背に廻ってタンクを背負わせた。次は妹曰く、最も手間の掛かるYK。そしてH島である。二人にもタンクを背負わせた。
いざ、エントリー。
「あっ、待って」とH島が叫んだ。彼女はフィットスーツの上に3mmウェットの二枚重ね。
立ち上がった彼女の腰からネオプレーンの腕が千手観音のように伸びていた。爆笑。
三人が次々にエントリー。
KAZU、妹グループ。バディは早々と水深20mの海底へ。
相変わらず耳の抜けが悪く一奮闘。
これ以外は私は本当に手の掛からないダイバーなのだが。
KAZUのすぐ後について三人がゆっくりとフィンワーク。
私はその後をやや遅れて追尾。バディは数メートル上で後ろ手を組んで中性浮力を保っている。
イソギンチャク。KAZUが止まった。三人が寄る。トウアカクマノミか?。
ハマクマノミでした。
トゲチョウチョウウオ。 『被写体!』チョウチョウウオを全種撮ることが当面の目標。
追いかけた。時々後ろを振り返り我がグループの位置を確認。
28mmレンズ。近くの大物を撮るには画角が狭すぎて、チョウチョウウオを撮るには広すぎる。
なんとか1mまで近寄った。が、魚の向きが・・・。
グループに合流。クマノミを撮影。ついでに妹達をスナップ。
妹
千手観音 H島
もっとも手のかかる YK
残圧三十。潜行時間四十分。残圧停止。エキジット。本日の一本目終了。
乗艇。タンク交換。ウェットスーツを脱ぎ棄てたところで妹が上って来た。
マスク、フィンを受け取りタンクを降ろさせた。
「コマセ捲いちゃったよ」船長の声に振り向いた。
妹がステップの上から嘔吐。私何も言えずに苦笑い。
阿嘉島。入港。本日の昼食は揺れの無い防波堤の上。
カッツカレー・・・船酔いを懸念したらけっして薦められない。妹、殆ど食欲無し。YKも同様。
おかげで私の肥満に拍車がかかった。
佐久原の鼻
二本目。阿嘉島の「南端にある小島の傍ら。通称、佐久原(サクバル)の鼻。
ブリーフィング。多少流れがキツイ。戦時中の機関砲の残骸が沈んでいる。その他棲息してる魚の種類。
やはり三人を送り出してからの最終エントリー。クレバスの間で全員が伏せていた。
潜行。今回はあまり苦労をせずに耳が抜けた。水深15m。合流。
確かにKAZUの言うように流れがキツイ。キック力の劣る女性軍には少々辛いものがあるだろう。
撮影。絶好調。魚以外にはシャコ貝。甲殻類のシャコ。大ナマコ等が登場。
私の移動距離は他よりもかなり多い。推定二~三倍。
残圧計チェック。ついでに妹の残圧もチェック。私よりもかなり多く残っている。
危ないと言われているYKもチェック。まあまあだ。
移動。妹と並走。(並泳と言うべきか?)
私の目の前に妹のオクトパス(予備のレギュレター)が揺れている。
『そう言えば講習ではバディブリージングは経験した。が、オクトパスブリージングはやらなかった』と思い。
『エアも少なくなったことだしこの際だから』と手を伸ばして妹のオクトを掴んだ。
自分のレギを離し妹のオクトを咥えた。数回呼吸すると気づかれた。妹がこちらを振り返った。
別に慌てることもなく平然としている。流石は我が妹。
エキジット後。「自分の呼吸音と異なる音が聞こえるから変だと思った」と語る。
珊瑚の陰を黄と黒の横縞が横切った。ツノダシだ。ニコノスを構えた。
※ツノダシ 英名:ムーリッシュ・アイドル(ムーア人の偶像)
ツノダシ科ツノダシ属ツノダシ種。世界中で一科一属一種の魚である。
分布の範囲は南アフリカからインド洋、西太平洋からハワイまで、北限は中部日本とされている。(しかし、私は房総の海で確認している)
背鰭の第三棘が体調の二倍もの長さに伸びた美しい魚である。
体型が似ていることから初めて目にしたものはしばしばエンゼルフィッシュと思い込む。
しかし、これは明らかな間違いである。エンゼルフィッシュは淡水魚である。
※ 海水魚にもエンジェルフィッシュと称されるものがいるがこの和名は**ヤッコと言いツノダシとは似ていない。
またハタタテダイと混同している者がいるがこれはチョウチョウウオ科である。
なお、横縞と記したが動物の紋様は見た目で判断してはならない。頭部を上、尾部を下に視た状態で判断する。
ラガージャージは横縞である。だがこれを着た者が横たわったからと言って縦縞に変わるわけではない。
ツノダシは泳いでいる姿からは縦縞であるが生物学の見地からは横縞なのである。
左:ハタテダイ 右:エンゼルフィッシュ
エキジット。早めに上がるとデッキも広々としていて行動が非常に楽である。
BCよりタンクを外し自分の器材を早々とメッシュバッグの中に。
着替えを済ませ烏龍茶で喉を潤す。ロングピース。
エンジン始動。妹グループは早々とバウバースにもぐりこんだ。船酔い対策だ。
しかし私に言わせれば揺れの激しいバウバースは決して安住の地とはなり得ない。
船が動き始めた。往路は比較的穏やかだった。が帰路までは・・・それは続かなかった。
昨日と同様に激しいピッチングの連続であった。
バースを取りそこなった者はメインキャビンで膝を抱えるようにして耐えている。
船長も無口だった。
昨日は波を乗り越えるたびに「ジェットコースター!」なんぞと叫んでいたが今日は揶揄の対象となる若い女子がコクピット付近に一人もいないからだろう。
船速が落ちて来た。十分もすれば接岸だ。バウバースを除いた。
妹がうつぶせになって蒼い顔をしている。H島が介抱していた。
臭気。『やはり嘔吐したか』実はH島も嘔吐していた。
接岸。三人を促して早々に上陸させた。
妹はベンチでぐったりとしている。
H島とYKに委ねて四人分の器材を撤収。楽ではない。
ダイビングサービスには寄らずにホテルへ直行。
三人はぐったりとしてベッドイン。
いったい私は何をして時を過ごせばよいのだろうか?。
学生四人が帰って来たのは九時を廻ってからだった。
とりあえず全員合格。『私のおかげだ。感謝しろよ』
妹達もだいぶ回復していた。
国際通り。夕食。
つ づ く
※掲載順位がランダムなのでダイビング記事の目次を作りました。
年代順となってます。
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