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Maldives Bandos island 1993年 その12

2021-07-25 12:42:31 | 写真 海

        夕食

 レストランから音楽が流れ出ていた。
 「ほら生バンドの演奏があるって言ってたじゃない」
 「そうだったっけ?。だが困ったな財布を持ってきてない。ここまで来て部屋までもどるのか」
 島の中ではサイン一つで殆どが済む。二日目からは財布を持ち歩くのをやめていた。
 「どうしてお金がいるの?」
 「たぶんテーブルを廻って来るぞ」
 「持ってきてますよ」とE君。
 「では大丈夫だ。安心して飯を喰おう」

 いつもの席に座した。
 レストランの奥で四人がギターを手に歌っていた。
 バンドのいでたちはどう見てもスペイン風。
 モルディブのラブソングをはじめとして数曲を奏でてから席を廻りだした。
 暫くして我々の席に来た。
 「リクエスト・・・?」
 「何が出来るの」
 「ワカレテモスキナヒト・・・スバル」
 新婚旅行の人気国で『別れても』は無いだろう。
 「最近は『別れたら次の人』って言うんだ」と私。
 「・・・・・・?」
 「じゃあ昴を」とM美。
 外国へ来て日本の歌謡曲でも無いだろうと思ったがまあいいだろう。
 彼らの歌声は渋い低温で趣があった。歌い終わってからE君がチップを握らせた。

 ラシードが、翌日の午後より休暇だと言い出した。
 マーレ(モルディブの首都、空港の隣の島)の家族の元に帰ると言う。
 「奥さんはいるの?」とM美。
 ラシードが胸のポケットから写真を取り出した。
 「わー。子供もいるんだ。いくつ?」女二人が写真を視ながらはしゃいでいる。
 だが、私はウェィターの家族構成なんぞには関心は無い。

 我々四人の一行は奇妙に映るのだろう。
 「歳はいくつとか?」「なんの仕事をしているのか?」と、いろいろ訊ねて来る。
 E君とY子はそれぞれ正確な年齢を告げている。
 M美は五つ以上も若く答えている。『私は本当の歳を知っているぞ』
 「ナインティーン」私は済ましていった。
 私があまり英語を喋らないので間違えていると思ったのだろう。(だが三人よりは英語力は高い)
 「サーティン ナイン?」と聞き返された。当たらずとも遠からずと言うところだ。
 「ノー  ナインティーン 成人式前だ。出席しなかっただけだが」・・・(正確には十九歳と二百数十ヶ月)

  
 「さーて、何に見える?」
 「******」聴き取れない。
 「ライターかアーティストだと言ってるよ」
 「やはりサラリーマンには見えないよナ・・・Professor・・・mathematician 」
 「・・・・・・?」

 「数学の教授と言ったつもりだが伝わらなかった」
 「モルディブに大学無いんじゃ」
 「ユニバーシティ ティチャー」とE君。
 「オー!、マトマティクステイチャー」
 本当と受け取ったかどうかは不明だが私は数学の教授と言うことになった。

 ラシードが他のテーブルに呼ばれて移動した。
 「・・・つまりだ。モルディブのレストランでは最終日にチップを渡すのが慣例だ。だから彼としては・・・分かるだろう」
 「そう言うわけか!」

 我々のテーブルは他と比べるといつも賑やかなようだ。
 その所為かラシードとチャンピオン以外のウェィターもいろいろ話しかけてくる。
 若いウェィターが「ワタシ マジシャン」と話しかけてきた。
 「・・・・・・!」
 私に「同じことをしろ」と言うように自分の両掌を下に向けて開いた。
 どうせ子供だましのそれであると思っていたので相手にしない。
 次のターゲットはY子だった。同じことを始めた。
 Y子が掌を下に向けて広げた。マジシャンはその手を掴んで揃えさせた。拳を握らせて二段重ねに。
 ウェイターの指がテーブルの上の灰皿に伸びた。
 「フッ !」私は思わず鼻で笑った。初歩の手品だ。
 灰を指につけY子の重なっている手の甲にそれを付けた。

 ナプキンを被せそれで手の甲を拭いた。ナプキンを取り除き手の甲に灰が無くなったことを確認させた。
 掌を開かせた。下にあった掌に煙草の灰。


 ※ エキストラがおりませんのでグローブを使って説明させていただきます。
   白がY子 黒がマジシャン
   ① 掌を下にして両手を広げる。
   ② 手の間隔を狭めさせられる。  
   ③ 拳をつくり二段重ねに
   ④ 煙草の灰(10円玉で代用)を手の甲に 
   ⑤ ナプキンで灰を落とす
   ⑥ 両手を広げて掌を上に

 「わぁー凄い」三人が驚いている。
 私は含み笑い。
 「種が分かるの?」 
 「初歩の手品だよ。ここでバラしたら可哀そうだからコテージに戻ったら教えてやる」
 マジシャンが私の方を視て何か言った。よく聴き取れなかったが
 「本当に分かるのなら同じことをしてみろ」と言っているようだ。
 「いいのか?ここでバラして・・・他も視てるぞ」近場の他の客もこちらを視ている。
 大人げないとは思ったが挑戦されたのであとへは引けない。立ち上がった。
 隣のテーブルを視る。すでに片付けられていて灰皿は無い。種を仕込むところを見せない方が盛り上がるかと思ったがまあよい。
 自分のテーブルの灰皿を取り上げた。隣のテーブルに置く。指先に灰を付ける。
 Y子の掌を広げさせその手を掴んだ。人差し指で灰をY子の掌に付ける。 ②参照
 マジシャンは小さく両手を挙げた。
 「分かればどうってことは無いけど最初はびっくりした」
 「相手が私でなければ彼もマジシャンでいられたのにネ」
 席を立った。残された日が少なくなってきたので土産を物色することにした。
 ロビーへ。どうもワインに酔ったらしい。額に冷たい汗が流れた。
 酒の量は僅かである。原因は疲労と睡眠不足だ。ソファに座って少々休憩。
 ・・・・・・
 どうやらアルコールが醒めた。
 Tシャツ屋を除く。一枚6$。土産には手ごろか。
 Tシャツ屋のオヤジは中国系のようだ。日本語はバンドス一達者のようだ。
 「まとめて買ったら安くなるのか?」
 「十枚買ッタラ一枚サービス」
 「分かった。では十枚買おう」
 「どれにする?」
 絵柄はいろいろある。マンタをはじめとするモルディブの魚。ダイバーの絵。モルディブの風景。迷っていると・・・」
 「全部オーダー。一枚ダメ。二枚ズツネ」
 マンタ・インディアングラント・パウダーブルー・モンガラカワハギ・サメを抱えたダイバーの五種をサイズを変えて発注。
 「サービスは?」
 「十枚買ッタラネ」サービス品は選択できないようだ。
 「アサッテノ今頃トリニクルネ」
 「アサッテノ朝帰るのだが」
 「オーダータクサン チョットムリネ」
 「じゃあしょうがない・・・・・・空港で何か買おう」
 「チョットマツ ヨロシイ」 
 「なに?」
 「アシタノイマゴロ キテミル ヨロシイ」
 「分かった。では九時半頃に」

 絵葉書が残っていた。日高(次のパラオ編に登場いたします)宛に二枚目を書いた。
 『ワレ ツイニ マンタ ト ソウグウセリ 
  ソノスガタ マコトニ ユウダイ カンゲキ ヒトシオナリ
  ドウダ ウラヤマシイダロウ!』
 余白にマンタのスケッチを根性入れて描いた。
 「二枚一緒に着いたりするんだよな。でもいいか」

 

 つ づ く


 



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