七本目 ハウスリーフ ダイビングサービス ライトサイド
カメラのセッティング。今回は105mmマイクロレンズ。
105mmのマイクロレンズは全長が長い。そのままではハウジングには収まらない。
レンズポートを外してドローチューブをハウジングとの間にねじ込む。
マクロにはハウジングに連結させるアパチュアギアを取り付けていないので露光はプログラムモードで行うことにする。
九時五十分。エントリー。
まずニシキヤッコにブルーフェイスのご登場。しかし105mmでは部分しか写せない。
ノコギリダイの群れ(見出し画像)
ヨスジの群れがまた現れた。M美が「撮って、撮って」と騒いでいる。
もっとも水中故に声は聞こえないが・・・・・・。
UWフィルム入りのニコノスをBCから取り出した。
ヨスジの群れをバックに三人を撮った。
E君が近寄って来た。ニコノスを指差して「渡せ」とサイン。私を撮るつもりだ。
E君にニコノスを委ねた。E君が私向けてにそれを構えた。
ニコノスのピント合わせは目測式だ。いつものように自分から距離を取った。
E君の常用カメラはコンパクトAFだ。ニコノスの知識が無いE君はファインダーを覗いたまま目まぐるしく距離を変える。
フレーミングに没頭しているのだ。ピンボケを承知で一枚切らせた。
手招きをして呼んだ。水中でフォーカスノブを廻して距離を合わせることをどうにか伝えた。
朧げな影が近づいてくる。かなり大きい。
『・・・・・・鮫!』
背びれの先端が黒い。ツマグロ(ブラックチップ)だ。
何度も視ていると恐怖感は殆ど生じない。むしろ撮影の為にもう少し寄って欲しいと思うようになる。
※ブラックチップ(和名ツマグロ)太平洋やインド洋のサンゴ礁の浅瀬で最もよく観察できるサメの一種です。
ヒレの先端が黒くなっていることから名前がつけられました。
外洋を広く泳ぎ回る他のサメと違い、浅瀬やサンゴ礁の周辺など一定の場所からあまり動き回ることがなく、行動域が比較的狭いサメとして知られています。
体長1メートルほどで成熟し、成長すると1.6mほどになることが分かっています。胎生で体長40cmほどの子どもを2~5個体産みます。
南太平洋では水深数十センチの砂浜で若い個体の群れを容易に観察できます。
止まることなく常に泳ぎ回り、背びれを水面から出して泳ぐこともあるサメらしいサメとして観光客やダイバーに人気があります。
臆病なサメとして知られ、水中で遭遇しても自ら近づいてくることはあまりありません。
しかし南洋のリゾート地などでは生息数が多く人間と出会う機会も少なくないため、砂浜で観光客のくるぶしやふくらはぎなどにかみついた報告もあります。
サメとの距離約3m。E君がニコノスを構えた。ちょっと距離がありすぎる。ニコノスは水中専用28mmレンズ。
私の手にしているネクサスは105mm。
水中での鮫の姿はまことに美しい。躍動する筋肉美。鍛え抜かれたアスリートのようである。
サメは我々を一瞥して再び深淵に姿を隠した。
普段のE君は余裕たっぷりで周囲に気を配りバディに対する配慮も充分なのだが視野がファインダー枠に限定されるとその余裕も消えて少々危なっかしい。
今回のダイビングで水中写真に興味を覚えたようだが(帰国後カメラを物色し始めた)それなりの訓練が必要である。
いつの間にかオレンジスポッテッドエンペラーが私に纏わりついていた。
スピードフラッシュの閃光を認識したに違いない。
茹で卵の味が忘れられないものと想える。
Y子がBCから茹で卵を取り出した。
水中で数十センチ投げ上げてオレンジの黄を引いている。
大きな目玉がジッーと視ている。だが一定の距離をおいて喰おうとはしない。
Y子が私に茹で卵を寄越した。
Y子と同様に何回か数十センチ投げ上げた。最後に少々高く投げ上げて1mほど退いた。
オレンジが卵を目指した。大きく口を開けた。鋭い歯が並んでいる。やはり一呑みだ。
鰓蓋が動いて黄色のもやもや。卵黄だ。殻は吐き出さない。
この日、この魚は計三個の茹で卵を呑み込んだ。
「コレステロールが溜まっても知らないぞ」紅海のナポレオンはそれが理由で当時餌付けは禁止されていた。
E & M が先にエキジットすると伝えてきた。
潜水時間三十分。戻る時間を加えれば約四十分。手頃の時間だろう。
私も残りのフィルムを消化しながらゆっくりと後を追う。
ニシキヤッコ。Y子お気に入りの魚だ。撮影。
ブルーフェイス。かなり大きい。驚かさないようにゆっくりと近づく。撮影。
岩の隙間。覗き込んだ。・・・・・・長い髭!。奥の方を凝視。ゴシキエビが身を隠していた。
髭の長さ約1m。体長は50cmを越えている。
Y子を手招き。確認させた。OKサイン。
ネクサスを安全な場所に置いた。岩の隙間に手を突っ込み髭を掴んだ。
引きずり出そうとしたがゴシキエビは激しく抵抗。水が濁った。
巨大ゴシキエビと記念写真を撮ろうとしたが諦めた。
オレンジがまだ後を追いかけて来る。無表情だが何故か愛嬌を覚えた。
エキジット。
M美がタンクを波打ち際まで運んで行く。
「何をするのだ?」
「写真を撮るの」
ゲイジュツしている。でもその為にはもう少しスキルアップが必要。
「Yちゃんと撮って」
「いいよ」
「女子大生の卒業旅行!」はしゃぎながら例によってVサイン。
「若いふりをしても目尻の小皺は隠せないぞ」
M美が熱心にログブックにスタンプを押している。これがラストダイブで午後は潜らないつもりらしい。
つ づ く