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先端技術とその周辺

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増え続ける人工衛星群で天体観測が台無し、解決策はあるか?

2020年10月10日 10時10分22秒 | 日記

 

MIT テック レビューが『増え続ける人工衛星群で天体観測が台無し、解決策はあるか?』という記事を載せていたが、天文の進化は技術革新によるもので、その時代時代に、天体観測を阻害するものがある。①地上に大口径の天体望遠鏡が作られた半世紀前は、街の明かりが天体観測の邪魔になると言われて、その後、高山や人工衛星に光学望遠鏡が移った。②観測が光から電波に広がり電波望遠鏡なるものが4,50年前から作られるようになったが、これも電波の利用が携帯電話までに広がり、これも電波スペクトル技術の進化で対応されようとしている。③人工衛星や宇宙天文台による観測が始まると、今度は膨大な数の人工衛星が観測の邪魔になってきたという。時代が進むとともに、天体観測は、高度技術が使われ始め、ガリレオが小さな望遠鏡で大発見をしたようなことななくなり、観測機械の作成は、国家プロジェクトでないと作れなくなている。それに合わせて、最新の天体観測を阻害するものもその時代の最新技術であるが、その都度、克服されてきている。ただ観測機械だけでなく、阻害する要因対策にも膨大な金がかかるという事だけでは?

 

以下、該記事の引用:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 近年、盛んに打ち上げられている人工衛星群(コンステレーション)が夜空で明るい光を放つため、天文学者による天体観測の著しい妨げになることが懸念されている。米国天文学会は、この問題に関する報告書を発表し、解決策を探ることを提言した。

天文学コミュニティに緊張が走っている。地球低軌道を周回する人工衛星の数が増えたことで、空を明瞭に見ることがほとんど不可能になっているからだ。

メガコンステレーション(巨大人工衛星群)が天文学コミュニティに及ぼす真の脅威はようやく理解され始めたばかりだ。米国天文学会が8月に公開した報告書では、メガコンステレーションが、これから実施される可視域や近赤外域における「天体観測を根本から変えてしまう」と結論づけている。「今後は、太陽の光に照らされた人工衛星が夜空の画像に当たり前に写り込んでくるでしょう」と同報告書の執筆者らは記している。

スペースX(SpaceX)の「スターリンク(Starlink)」人工衛星群の第一弾は、昨年の打ち上げから間もなくはっきりと見えるようになり、いくつかの天文台では夜空の画像撮影の邪魔になっていることが分かっている。スペースXは9月3日に、さらなるスターリンク人工衛星群の打ち上げを実施し、2019年5月以来打ち上げられてきた人工衛星653基にさらに60基が加わった。数年以内にはネットワーク全体の人工衛星の数は1万2000基にのぼるとみられ、4万2000基まで増える可能性もある。ロンドンに本拠を置くワンウェブ(OneWeb)は破産親会社の変更(日本版注:ソフトバンクの出資から、英政府とインドのバーティ・グローバル(Bharti Global)の出資へと変わった)を経たあと、米国連邦通信委員会(FCC)から1280基の衛星打ち上げ許可を得た。これは米国でのブロードバンド・サービス提供に利用されるもので、同社は人工衛星の数を最終的に4万8000基まで増やす計画だ。アマゾンは人工衛星インターネット・サービスである「カイパー計画(Project Kuiper)」の推進に必要な3236基の衛星の打ち上げ許可をようやく取りつけた。これらは始まりに過ぎない。私たちが知っていた天文学は、今後すっかり変わってしまうことだろう。

スターリンクの衛星クラスターがハワイのマウナケア山上空を横切る様子を収めたタイムラプス動画(2019年11月12~13日撮影)。

「スペースXのスターリンク人工衛星がはっきりと見えることで誰もが衝撃を受けました」と語るのは、ミシガン州立大学の天文学者で、米国天文学会元会長でもあるミーガン・ドナヒュー教授だ。晴れた夜空に輝く光の列に多くの人が魅了される一方で、天体望遠鏡で撮影した画像にこれが光の線として残り、観測対象の星や天体をさえぎることを天文学者は知っている。「このようなものが空をうろついているかと思うとぞっとします」とドナヒュー教授は語る。

画像に人工衛星が写り込むことは今に始まったことではない。運用中の人工衛星が2600基も地球の周りを周回していれば避けられないことだ。ローウェル天文台の台長にして、前述の米国天文学会の報告書の共著者および編集者でもあるジェフ・ホール博士によれば、大部分の人工衛星、特に高度の高いものはかすかにしか見えないという。画像に写り込んでも小さな点でしかなく、問題になることは少ない。

しかし、最近の人工衛星群は低軌道に配置されるためはるかに明るく光り、光の長い線として画像に写り込み、画像データの他の部分に影響を及ぼす場合がある。また数も多いため、写り込まないように避けることも絶望的だ。昔は人工衛星が写り込んだことで使い物にならなくなる画像は100枚に1枚というところだった。現在の天文学者は、人工衛星の軌跡が写り込むことで全体のデータの3分の2が損なわれるかもしれないという危機に直面している。

こうした新しい低軌道衛星の影響は、天文学の研究プログラムの種類に応じてさまざまな形で現れる。例えばホール博士の研究では光のスペクトログラフ(光源から放たれる光の周波数成分)を観測し、それぞれの星に特有な変化を測定している。画像に影響が出るのは、人工衛星が望遠鏡の真正面を通り過ぎた場合に限られる。

しかし非常に感度が高いか、空を広く見渡せる広視野の次世代型望遠鏡では、スターリンクなどの人工衛星群が壊滅的な問題をもたらすだろう。ハワイ大学の全天観測望遠鏡・高速反応システム「パンスターズ(Pan-STARRS:Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System)」のように近傍の天体を観測する天文台では、すでにスターリンクの人工衛星の動きによって画像が台無しになった事例がある。地球に衝突するコース上に小惑星があった場合にも、データが使い物にならなければ、早期に発見して適切な対応策を立案することができなくなる可能性がある。

最も顕著な事例はおそらく、「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST:Large Synoptic Survey Telescope)」で知られるチリのベラ・ルービン天文台だろう。同望遠鏡は、非常にかすかな光学信号や赤外線信号を検出するため10億ドルを投じて建造中であり、遠方の小さな天体の地図作成や、ダークマターやダークエネルギーの調査に利用される予定だ。シミュレーションによれば、スターリンク人工衛星群が全て打ち上げられた場合、ベラ・ルービン天文台が撮影した画像の実に30%にスターリンクの人工衛星の軌跡が最低1つ写り込んでしまう。同天文台のデータを利用する学術的調査の多くが中断されるかもしれず、成されるはずの発見が何世代も遅れてしまうことも考えられる。

ドナヒュー教授によれば、理想的な着地点はこれらの人工衛星の明るさを数百分の1というレベルまで抑えることだという。そのため米国天文学会は、天文学者にも人工衛星運用事業者にとっても現実的だと考えられる解決策の概略を複数作成している。天文学者に人工衛星の予想通過時間と場所を知らせる新型ソフトウェアはその一例だ。通過時間になれば人工衛星の放つ光を遮蔽するなどの対応策を取ることができるし、画像処理でデータそのものから人工衛星の軌跡を削除するためにも使える。

人工衛星運用事業者が解決策を探す際には、ビジネス上の目標も考慮する必要がある。結局、一番手っ取り早くて効果的な解決法は人工衛星群の打ち上げを止めることであるが、これは望むべくもない。

光を反射しにくい人工衛星を作るのはひとつの手だ。スペースXは1月、スターリンク人工衛星用の試作型塗料「ダークサット(DarkSat)」の試験をしたが、明るさを著しく落とすことはできなかった。スペースXは現在、「バイザーサット(VisorSat)」と呼ばれる展開・格納が可能な太陽光遮蔽板を、今後打ち上げる人工衛星全てに搭載するとしているが、科学者の間では本当に有効な対策かどうか意見が分かれている。

ホール博士によれば、有望なアプローチのひとつとして、反射面が地上に向かないよう宇宙空間の人工衛星の向きを調節して、地上の天文台に届く光を最小化することがある。「姿勢を調節したスペースXの人工衛星を個人的に観測しました。通り過ぎるのが見えはしますが、ごくかすかにです。ほとんど光は見えません」(ホール博士)。

人工衛星運用事業者が直面する最大の課題のひとつに人工衛星群の高度がある。ワンウェブの創業者であるグレッグ・ワイラーの主張では、ワンウェブの人工衛星群は1200キロメートルという高高度を周回するおかげで、人工衛星どうしの衝突の可能性は低いという。スターリンクなどは地球に近い距離に多数の人工衛星を展開しようとしているが、高高度を周回する人工衛星は通信可能エリアが大きい。これはつまり、1基ごとに地表をより広くカバーできるということで、人工衛星の数を減らせる可能性がある。

ただし残念ながら、米国天文学会の報告書でも強調されているように、人工衛星の高度が高ければそれだけ視界に入る時間も長くなる。明るさを少し抑えたとしても天体観測の事実上の妨げになるわけで、しかも夜通し見え続ける可能性もある。報告書では、企業は高度600キロメートル以上に人工衛星を配置するべきではないという旨の提言がなされている。

幸いなことに、人工衛星運用事業者は全て、解決策を探るのに協力的だ。米国天文学会の報告書には、スペースXとワンウェブから寄せられた意見が記載されている。「私たちは彼らが素晴らしいことをしていると考えていますし、彼らもまた、私たちが素晴らしいことをしていると考えています。ですから、お互い共存を試みているわけです」とホール博士は語る。

天文学者は人工衛星運用事業者側の善意に頼る立場だ。人工衛星運用事業者が、多くの天文学研究プログラムが進行不能になるほど明るく輝く人工衛星群を打ち上げるにあたって、技術的にも法的にも障壁は何もない。

ホール博士らは、来春開始される次期ワークショップでこの法律の穴埋めに取り組み、提言を作成する予定だ。さらにスペースXをはじめとする企業に、この点でも協力してもらうことを期待している。世界の人工衛星運用事業者には、好き勝手に打ち上げた結果起こる深刻な混沌状態を回避したいというインセンティブが存在する。

「国連に提案するべき政策提言です。これは国際的な問題ですから、国際的な取り組みをもって解決しなければなりません」とホール博士は語る。ただし、国連とその加盟国がこうしたルールを採用し、実施するのがいつになるのかは全く別の問題だ。


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