映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「マリー・アントワネット」

2007年01月22日 | 映画~ま~
ソフィア・コッポラ最新作の『マリー・アントワネット』です。映画のトレーラーのソフィアならではの色彩や、音楽の使い方、そして何より彼女の監督2作目の『ロスト・イン・トランスレーション』が大好きなので期待大で見に行ってきました。

全体の印象は、ちょっとがっかり…。常にポップな音楽が大音響で流れていて、長いミュージックビデオを見ているような錯覚に陥りました。また、ソフィアが得意とする淡くかわいらしい色使いも、あれだけ洪水のように使われると目が麻痺というか退屈してきて、最終的にぼやけた印象に。それでもやはり彼女にしか出せない色使いは独特の世界観をかもし出していましたが。

実在した人物の伝記なので、盛り込まなくてはならないエピソードが盛りだくさん。でもひとつの「物語」を描くとすると必要のないシーンも。それが伝記映画の難しさなのかもしれません。

主演のキルステン・ダンストの起用は大正解だと思わされます。オーストリアからフランスへ嫁ぎ、新しい環境に馴染む前あたりまではテンポもよく面白いです。ソフィアは心のひだのほんのわずかな「揺れ」を描くのが本当にうまいなぁ、と感心させられます。映画上14歳という設定ですが、まぁ見た目は無理があるとしても、表情やしぐさ、新しい環境に適応しようとする姿勢を見事にキルステンが演じきっているように思います。当時の14歳と現代の14歳を同じ線上で比べることは出来ないので、「もし自分だったら…」という思考をめぐらすことは到底無理ですが、歴史の残酷さをこのガールズムービーのなかに見ることができます。もうちょっと歴史を知りたくなる映画です。

途中はやや中だるみ感あり。

子供が生まれ自分のプライベート空間を与えられた時間は、それまでが色の洪水だったのがよい意味で質素になり目にも新鮮です。「パンがないならケーキを食べればいいじゃない」と言ったとか言わないとか、と歴史の時間に教えられたマリー・アントワネットはその空間にはおらず、非常に素敵な1人の女性がいます。そう考えると、ソフィアの使った色の洪水はベルサイユでのありえない日常の異常さを伝えるうえで役立っているのかも。

最後は尻切れトンボな終わり方で、「えっっ!?」と思った時にはエンドロールが流れます。これでもかっ、と出てくるケーキも、たぶん日本のケーキ職人に作らせたほうがはるかに美しいものが出来ると思います。正直、内容はあまり頭に残りません。色の洪水と鳴り止まない音楽が押し寄せる、怒涛のガールズムービーです。


お薦め度:★☆


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