goo blog サービス終了のお知らせ 

PHP総研ブログ『番町Cafe』

HPでは公開しきれない活動をドドーンと紹介!!

日本政府内の核戦略研究

2010-03-26 10:52:48 | 金子将史
 オバマ政権の核戦略見直しが大詰めの段階に来ています。この中で、大きな争点になっているのが、核兵器の役割をどうするかです。「核兵器なき世界」を主張するオバマ大統領の下、米国の核兵器使用は核兵器攻撃に対する報復だけに限定すべし、という議論が勢いを得ている一方、現在のように、大量破壊兵器の使用や大規模な通常兵器攻撃に対しても使用する選択肢を残すべきだという議論も有力です。

 核兵器の役割をできるだけ限定しない方がいいとする人の多くが、日本のような同盟国が不安になり、核兵器を持とうとしないようにするため、との理由をあげています。こうした議論に対抗するように、先ごろ「憂慮する科学者同盟」から、日本の非核方針はホンモノで、懸念には及ばない、という報告書が出されました。

http://www.ucsusa.org/nuclear_weapons_and_global_security/nuclear_weapons/policy_issues/japan-america-nuclear-posture.html

 注目されるのは、参考資料として、1968年と1995年に日本政府内で行われた核戦略研究が公開されていることです。これらの研究の背景には、当時の中国や北朝鮮の核兵器保有への動きがありますが、2つの報告書は、日本の核武装の選択肢を含めて検討した上で、非核政策を肯定する結論を出しています。

 これらの報告書は、これまでにも関係者やジャーナリストには知られており、私の手許にもありますが、一般の目に触れやすい形にはなっていなかったのではないかと思います。

 2つの報告書は、政府としての公的な検討というより、私的な検討という位置づけのものと思われます。米国の核戦略が転換期を迎え、核密約が白日の下にさらされている中、本来であれば、こうした検討を政府内で行うことが今こそ必要と思われます。ただし、それは多くの部分非公開で行われるべきものであり、現政権の下で行うにはあまりにリスクが大きすぎるかも知れません。


総研ブログ『番町Cafe』を応援する
↑♭押してクリクリック♪↑

「新・保守党か新・ホシュ党か」

2010-03-24 10:07:49 | 金子将史

 日本外交にはビジョンがない、哲学がない、とはしばしば説かれるところですが、日本における外交論議を思想的観点できちんと分析した論稿はあまり多くないように思われます。そうした中で、『近代日本の国際秩序論』といった酒井哲哉東大教授の一連の仕事は例外的といえます。

 その酒井氏が2010年3月22日の読売新聞に「保守がホシュになるとき」という興味深い文章を寄せています。言うまでもなく、この表現は磯田光一氏の『左翼がサヨクになるとき』のもじりです。その中で酒井氏は、保守という自意識が戦後的なものであることを指摘しつつ、現在の保守主義は、保守が備えているべき懐疑精神を喪失したホシュに変じていると論じています。保守を名乗る人々が、皇統の根拠をDNAで説いてみたり、皇太子ご夫妻を公然と論難したりするという光景は、「ホシュ化」のなせるわざということになるでしょうか。

 おりしも、保守を標榜する人々による新党結成の動きが目立つようになっています。こうした動きの先にあるのが保守党の再生なのか、ホシュ党の登場なのか、自民党再生の動向とあわせて注目されるところです。

人気ブログランキングへ
総研ブログ『番町Cafe』を応援する
↑♭押してクリクリック♪↑


米国テロ未遂事件と「インテリジェンスの失敗」

2010-01-08 07:48:38 | 金子将史
昨年末のクリスマスの時期に発生した米国航空機爆破テロ未遂事件について、ホワイト・ハウスのレビューが発表されました。その中で、情報機関が点と点を結びつけることに失敗した(failure to "connect the dots")と指摘されています。

"connect the dots"の重要性は、9.11テロ後も強調され、情報機関の大幅な再編の指針となりましたが、今回は、9.11テロの時のような情報共有の失敗というよりも、つかんでいたテロ関連情報を分析することに失敗したことに問題がある、とレビューは指摘しています。

対テロ・インテリジェンスにおける分析の重要性については、北岡元氏の『インテリジェンスの歴史(慶應義塾出版会)』でも指摘されています。また、日本におけるインテリジェンスの課題についてのより一般的な議論は、2006年に北岡氏らとの共同作業で発表した「日本のインテリジェンス体制-変革へのロードマップ」、拙稿「日本におけるテロ対策の展開」若田部昌澄編『日本の危機管理力』を参照ください。

http://research.php.co.jp/research/foreign_policy/policy/post_14.php

http://research.php.co.jp/research/risk_management/policy/post_5.php

鳩山政権発足後、インテリジェンス強化は全く話題にならなくなりましたが、重要課題として取り上げるよう促したいところです。

人気ブログランキングへ
総研ブログ『番町Cafe』を応援する
↑ワンクリックをお願いします。↑

オバマ大統領訪日

2009-11-13 12:00:00 | 金子将史
オバマ米大統領が本日初来日します。
オバマ氏は日本で対アジア政策についてのまとまったスピーチをする予定です。また、「核のない世界」についての共同文書や資金援助を中心とした日本のアフガン支援策など、日米首脳会談の体裁も一応整えられるようです。
しかし、普天間基地移設問題など、同盟の本質にかかわる問題は先送りになりそうです。

はじめて政権を担う民主党政権に助走期間は必要ですが、これを「米側の圧力をはねのけたのは対等への第一歩」などと誤認することがないよう切に望みます。

関連して、今月発売の『Voice』12月号に拙文「日米同盟の生命力」が掲載されていますので、ご高覧いただければ幸いです。
http://research.php.co.jp/voice/

拙文では、鳩山政権が日米協力の非軍事的側面を強化することは良いにしても、それは同盟の本質たる軍事的側面を代替するものではないと指摘しています。

日米同盟には軍事面、非軍事面を包含する新しいビジョンが必要です。これについては、昨年、松下政経塾政経研究所から提言が発表されていますので、ぜひそちらをご覧下さい。

「日米同盟試練の時-『広範でバランスのとれた同盟』への進化が急務-」
http://www.mskj.or.jp/lab/index.html



人気ブログランキングへ
総研ブログ『番町Cafe』を応援する
↑ワンクリックをお願いします。↑

『日本の危機管理力』

2009-10-07 11:20:08 | 金子将史
 3年前に発足した「国家のリスク・マネージメント研究会」(座長:若田部昌澄早大教授)の成果物、『日本の危機管理力』(PHP研究所)が発刊されました。

http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-77382-7

 経済危機、テロ、災害、パンデミックと国家が直面する様々なリスクや危機を包括的にとりあげています。

 一流の先生方に混じって、私も一章分を書いています。
 なかなかおしゃれな装丁に仕上がっています。皆さん、手に取ってみてください!



人気ブログランキングへ
総研ブログ『番町Cafe』を応援する
↑ワンクリックをお願いします。↑