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PHP総研ブログ『番町Cafe』

HPでは公開しきれない活動をドドーンと紹介!!

大橋良介編『京都学派の思想』(人文書院)

2009-09-29 11:26:04 | 金子将史
 職業柄、研究プロジェクトや執筆に関係する文献を渉猟することは当然ですが、私の場合、ちょっと発想が行き詰まった時には、思想や歴史の本を読むことにしています。人間誰しも自分が属する場所や時間にしばられていますが、思想や歴史の良書はそうした固定概念をゆらがせてくれる力を持っているからです。

 最近読んだこの本も、色々な気付きを与えてくれる本でした。戦後、戦争に協力したとして、宗教哲学など除けば、十分評価されてこなかった京都学派ですが、本書は、科学、技術、美学、教育、言語、歴史、宗教といった幅広い分野をとりあげ、その潜在力を探っています。様々な著者による論文集ですが、京都学派の人々自身の論考をもっと読みたい気にさせてくれる点で、編者の狙いは成功していると思います。

 例えば、近年の日本では、外交における主体性のあり方がテーマになっています。実は、それは「世界史の哲学」に取り組んだ京都学派の人たちにとっての哲学的課題でもあったわけですが、興味深いことに、彼らの師匠である西田幾多郎は、日本を主体化することに懐疑的でした。両者の違いは、現代の視点から見ても興味深いものがあるように思います。他にも、技術や科学をめぐる思考にも、現代的な意義がありそうです。

 以前、岡崎久彦氏が、「宗教家に外交をさせてはいけない」と述べていたと記憶しています。情勢を正しく判断し、プラグマティックに行動すべき外交に特定の先入観やイデオロギーを持ち込むことをいさめる主旨だったように思います。それはその通りなのですが、曇りない目で情勢をみているつもりで、知らず知らずのうちにある種の思考体系にとらわれていることや、新しいことを言っているつもりで、以前語られていたことを反復しているだけのことは、よくあることです。それを知るためにも、優れた思想家たちによる世界のとらえ方に接する意味があるのではないでしょうか。


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鳩山論文騒動について

2009-09-03 18:27:41 | 金子将史
 次期首相の座を勝ち取った鳩山氏の論文がニューヨークタイムズ紙に掲載され、話題を呼んでいます。グローバリズム批判や東アジア共通通貨構想など、米国を刺激するような内容で、米国には鳩山氏を反米的ととらえる向きも出てきています。

 この鳩山論文は、PHPグループのオピニオン誌『Voice』9月号に掲載された以下の論文の一部の英訳です。
 http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=197 

 鳩山氏は、ニューヨークタイムズに寄稿した事実はないと発言しており、一部報道では、英字紙への掲載が『Voice』主導であるかのようにも読めるものがありましたが、そのような事実はないようです。

 寄稿をめぐる事実関係はともかく、鳩山氏が英語で自らの考え方を発信しようとしたなら、それ自体はよいことです。しかし、意図が上手く伝わらなかったのだとしたら、論旨がゆがめられているなどといった逃げの姿勢ではなく、あらためて真意を伝えていく努力が必要ということでしょう。

 今回の政権交代は、日本に対する海外の関心を久々に高めています。民主党政権中に、日本のGDPは中国に抜かれることになりそうですが、次期総理大臣には、日本の存在感を高める見識ある政治を行なっていただきたいものです。

 そういえば、ニューヨークタイムズ紙には弊社の永久の発言も...
 http://www.nytimes.com/2009/09/01/world/asia/01japan.html?_r=1&hp

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