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政府、基礎的収支改善を再び目標に←同じ失敗を繰り返してどうする

2010-03-30 20:13:07 | 経済

政府、基礎的収支改善を再び目標に
2010/3/30付 日経新聞朝刊

 政府が6月をめどにまとめる中期財政フレームと財政運営戦略の素案が29日、明らかになった。財政健全化に向けて、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を段階的に改善し、公的債務残高の対国内総生産(GDP)比の安定的な縮減を目指す目標を掲げる。税収や歳出に見合う財源を確保する「ペイアズユーゴー原則」などの財政運営ルールの導入も盛り込んだ。

 プライマリーバランスは、毎年の政策に必要な経費を借金に頼らずに、どれだけ賄えているかを示す指標だ。中期財政フレームは、2011年度から13年度までの歳入見込みや歳出削減など予算の大枠を定める。もう一方の財政運営戦略は中長期の財政規律のあり方を示したものだ。

 『消費税は0%にできる』の内容ともかぶる点もあるがその著者の菊池英博氏の所説をまとめたのが「Economic Expansion Policy (Tokyonotes 東京義塾)」氏のところに掲載されている。
 
 そのRestoration of Japan 2 経済を陥没させた「構造改革」の中でこのように述べている。

 日本は二つの誤った経済政策を取り入れたことで、「10年デフレ」「10年ゼロ成長」を招いた。それは「基礎的財政収支均衡目標(2011年度目標)と「金融庁の三点セットによる金融機関の締め付け(ペイオフ、時価会計・減損会計、自己資本比率規制)」である。そのベースとなったのが、新自由主義・市場原理主義という「伝染病」だ。

 伝染病に罹患した政府与党は「小さい政府」「均衡財政」「消費税引き上げ」という三つのドグマに陥った。結果として現在の日本は、緊縮財政デフレ->経済規模縮小でゼロ成長->雇用減少->税収減->増税(既に定率減税廃止)->消費税増税という「悪魔の縮小均衡」の状態にある。抜本的な政策の変更がなければ「20年デフレ」「20年ゼロ成長」へ向かって一段と深刻になるであろう。

 「ペイアズユーゴー原則」(財源を別の歳出削減か、増税でみつけなければならない)が「量入制出」(税収の範囲内でしか支出しない)に終わればこれまでの自民党と同じである。菊池英博氏の『消費税は0%にできる』では、財政本来の理念は「量出制入」であり、国民の幸福を維持向上するために必要な財政支出(量出)を確保するために、経済政策によって、いかにして財源を創り出していくか(制入)にあるべきである、と説明しておいり、その考えで経済を活性化させ、税制を改正して財政再建との両立に成功したのがクリントン大統領であり、クリントン・モデルとのこと。前車(自民党)の轍を踏んではそれこそ日本は終わったということになる。

 『消費税は0%にできる』にはこのような説明がある。

1981年就任のレーガン大統領は、市場原理主義型の税制(フラット税制)を導入して、法人税と所得税を極端に低くし、一部の富裕層と株主や経営者の所得を最大にする財政政策をとった。その結果、5年後にアメリカを債務国に転落させ、「財政赤字」と「貿易赤字」の拡大によって「双子の赤字」国になってしまった。
 1993年に就任したクリントン大統領(民主党)はレーガン税制を全面的に改正して、所得税も法人税も最高税率を引き上げた。同時に、財政支出を公共投資と投資現在に集中して、民間投資を喚起する政策をとって、5年で財政を黒字に転換させたのである。

 日本の税制は「30年前の間違った考え」(オバマ大統領の議会での発言)のレーガン・モデルを模倣したものであり、「日本のように経済政策で失敗してはならない(オバマ大統領)、「日本のようになってはいけない)(野党の共和党)と言われているとか(『消費税は0%にできる』)。

 大塚副内閣相はこの21日にヨーロッパと比べて日本の法人税は高いので国際競争力を強化するため、法人税率を引き下げる必要があると発言したと伝えられている。が、日本の法人税が高くないことは「ふじふじのフィルター」氏の「『法人税は海外より高い』に、2つのごまかし。民主党政権は、『国民生活が第一』の政策を!」で看破されている。また法人税が高いからといって海外に企業を移したとしても、主要国は原則として「全世界所得課税主義」を採用しているので、日本の企業がどの国で収益を上げても最終的ににほんの法人税率が適用されるので無意味なようである。

 菊池氏も『消費税は0%にできる』で法人税引き下げの経済効果はマイナスと述べている。むしろ法人税と所得税の最高税率は引き上げるべき、と。企業の国際競争力向上にも寄与しないとも。法人税を引き下げても製品コストの低下にはならないし、従業員の賃金に影響することはないとのことである。

 事実、従業員の賃金は上がっていない。このようなデータがある(「非国民通信」氏の「若者に媚びるお笑いダイヤモンド」から拝借)

_________経常利益____従業員給与
1997年:27.8兆円____146.8兆円
1998 年:21.1兆円____146.8兆円
1999年:26.9兆円____146.0兆円
2000年:35.8兆円 ____146.6兆円
2001年:28.2兆円____138.5兆円
2002年:31.0兆円____136.1兆円
2003 年:36.1兆円____133.3兆円
2004年:44.7兆円____139.7兆円
2005年:51.6兆円 ____146.2兆円
2006年:54.3兆円____149.1兆円
2007年:53.4兆円____125.2兆円

 また、労働者の平均所得は1997年には467万円だったのが2007年には437万円と下がり続けている。一方、大企業の役員報酬はこの5年で倍になったとのことである。ゲンダイネットにこのようなデータがある。

【有名企業の役員報酬】
◆新生銀行/29億4200万円
◆日産自動車/25億8100万円
◆大日本印刷/19億2100万円
◆三菱電機/18億4100万円
◆トヨタ自動車/15億8900万円
◆キヤノン/15億8600万円
◆三菱商事/16億6500万円
◆日立製作所/15億4200万円
◆東芝/14億8900万円
◆住友商事/12億5900万円
◆新日鉄/12億5400万円
◆野村証券/12億5300万円
◆住友不動産/12億1900万円
◆ソニー/11億9800万円
◆ホンダ/9億9000万円
◆パナソニック/9億6600万円
◆武田薬品工業/6億8100万円
◆ダイキン工業/7億4800万円
◆シャープ/4億9200万円
◆鹿島/4億7300万円
◆富士通/4億1400万円
◆大正製薬/3億9100万円
◆ヤフー/3億2300万円
◆京セラ/2億7300万円

 菊池氏の『消費税は0%にできる』では、ヨーロッパの見かけの法人税率が低いのは外資を呼び寄せたいからであるが、日本は世界一の債権国(投資資金の潤沢な国)なので外資を呼び寄せる必要がないとのこと。

 所得税の税率の引き上げは検討されているようで結構なのだが、法人税引き下げや基礎的収支の改善を目指すのはかえってマイナスであることは歴史が証明している。菊池氏がいうクリントンモデルを目指すべきである。




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