京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「昭和の時間」

2016-04-29 09:25:35 | 時計修理

4月29日大型連休の初日「昭和の日」
震災の影響なのかちょっと静かなスタートの京都。世界遺産を通るバスもまばらの乗客にびっくりしました。

今日は「昭和の日」です。
昭和は国産時計盛衰の歴史でもある。
昭和44年(1969年)年末のクリスマス。大阪万博直前にセイコー社からクオーツ時計の発表があった。
この日が日本の時計産業技術のピークを迎える。
東京オリンピックから売上は右肩上がりでクオーツ時計に繋がる。時計技術者は一番誇らしい日でした。
その後10年間はセイコーが世界チャンピヨンの王座に座っていられた懐かしい時代です。過去の栄光に浸っている間にどん底に落ちてしまった。
今やプレミアム市場では敗退し生産を安い労働力の中国に頼るしか方法がない。
ソーラー電波にしがみつくしかない暗黒の平成時代に生きています。

安い労働力でコストを切り下げて出来たものが安物使い捨て電波ソーラー。この時計にしがみついている落ちぶれた産業だ。
プレミアム時計はすべてヨーロッパに席巻された。国内市場売上の70%超がヨーロッパの時計に占有されてしまうまでボンクラ経営者は何の手も打てなくてゴルフ自慢に浸る毎日だ。
ゴルフ場にゴルフボールを打ち込むと時計屋に当たる時代があった。
昭和の栄光にしがみついている思考停止状態がまだ今でも続いているのが現状でしょう。

最近さらに時計離れが起きているようです。
「このカルティエ、しばらく使わないから電池だけ抜いてください!」と依頼されるお客さんが増えた。
工房では時計が止まったまま放置されてしまうとその電池からの液漏れ故障が起きる。
これを防ぐために「電池抜き取り無料サービス」をやっています。
ところが近年カルティエ、エルメス、ブルガリなど人気の高額時計の抜き取り依頼が増えた。これは30歳代の女性が多い。
当初、価格が30万円以上の時計を使わない経済感覚を理解できませんでした。
「買ってみたけど結局使わなかった!電池から液漏れすると修理費用が高くつくので誰かに売り渡すまで置いとくのよ~ん!」聴いてみるとこんな理由でした。
この世代から時計を着ける習慣がないのだ。
目覚まし時計、掛時計が部屋から消えて最後は腕時計まで市場から消えていく時代が来ている。未来で残るのはキッチンタイマーだけだ。

まもなく百貨店や量販店の時計売り場から中国人が消える時が来るでしょう。想像しただけで恐ろしいが地方の時計売り場はすでに無人化状態が始まっているようです。
「一日売り場に立っていて時計の客が一人も来ない!」
人件費が持たないので販売員はすべて派遣さんばかりの売り場になる。人間の名前が消えてセイコーさん!カシオさん!と派遣元のメーカー名に変った。
働く人から名前が消えた。プロも消えた!こんな時代が来た!

「昭和の時計師」と呼ばれる昭和30年生まれの私だ。
写真のような懐中時計にアームをつけて腕時計として使う時代もありました。
キャリバーとケース、バンドが別売りの時代もあった。
その後、手巻きから自動巻き時計にかわりクオーツ時計時代。そこからプツンと時計文化が消える。

近未来、観光客が京都・上賀茂神社周辺を散策していると時計修理のカンバンを見つける!
「はて~時計って修理するものなの?どうして!壊れたら捨てればいいのに!おかしな店だね。」
「今日は昭和の日だよ~ん」
この日だけ工房を開けて過去の懐かしい日本の栄光を伝える日が来そうです。その日に備えてしっかり覚悟と仕事をしましょうね~。



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