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チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「こけら落とし(杮=kokeと柿=kaki)の語源/歌舞伎座新開場にあたって」

2013年04月02日 14時54分26秒 | 語彙の歴史観・ロック、ゴウゴウ
今日、平成25年(2013年)4月2日は、
新たになった歌舞伎座が開場となる。ところで、
新築なった劇場での初日公演を
「杮葺落」「こけら落とし」などという。
巷ではこの「杮」と「柿(かき)」の字の違いをあげつらって、
「柿(カキの字)落とし」では間違いである、と鬼の首を取ったような
物言いをしてるむきが少なくない。すなわち
……「こけら」とは木の大鋸屑(おがくず)のことであり、
工事の締めくくりに屋根の馳のオガクズを払い落としたことから、
そのように言うようになった……のだと。
たしかに、そのとおりなのだ。が……。

室町時代の書院造の代表である
いわゆる金閣寺や銀閣寺の屋根は
「杮葺(こけらぶき)」になってる。すなわち、
椹(さわら。ヒノキ科)を2、3mmという薄さの板にしてそれを段階的に、
魚の鱗のように重ねて葺いてるのである。が、
ヒノキの板で葺く檜皮葺(ひわだぶき)がさらに高級である。たとえば、
もっと古い建造物である東寺や知恩院方丈や
下鴨神社などの各殿の屋根などである。ともあれ、
檜皮色は柿渋色と混同されたのである。いずれにしても、
そうした板葺きには薄く剥いだ板を使うのである、いっぽう、
柿の木の樹皮もまた薄く剥げやすい。
(柿の実を採ろうとして)柿の木に登ってはいけない、
と昭和までの子供がオトナから注意されたのは、
そうした柿の木の脆弱性によるものである。

さて、
「3というキリスト教の奇妙な数字とLady Gaga」
(http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/e44e23858aa6a9171b903731bfe6440f)
「カガの千代女の結婚生活とトンボの交尾(=愛あるハート型)/菟田のかがり火(06)」
(http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/fcb50b80614396e774b99fdf1a4a6b04)
「巳年の年頭に、メンデルスゾーン 交響曲第5番第4楽章/ルター作曲 神は我が櫓」
(http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/6683cb3cf9ceae4a0a73652820da1e2c)
などで折にふれ言いおよんでるが、大和言葉で
「カガ」とは「曲がったさま」を表すのである。
ローマ字で表せば、「kaga」。元は「kaka」である。

動詞の「kaku」は「書く(描く)」「欠く」「掻く」「駆く」などがある。
何かを引っ掻くと、そこは剥がれ、抉られた痕が残り、
「kaki」kizuとなる。
その抉り取られた痕はたいてい丸くなってる。だから、
「kaka」というのは「クルっとなったさま」を表すのである。
馬を駆ると蹄の痕が地に「窪んで」残る。
芝(ターフ)を駆ければ蹄が抉った芝が剥げる。したがって、
「剥げ落ちやすいもの」「はがれやすいもの」も
「kaka」という語から派生する。それが、
「苔」「鱗」などの「koke」である。また、
仏教用語とされる「虚仮(こけ)」も、
見かけだおしなことであるから、その
虚勢は「はげやすい」のである。それに関連して、
関西のほうで使われてたが最近は吉本芸人の影響で
東京とその周辺でも中年世代以下を中心に用いられてる
「コケる」という言葉がある。
「転がる」「躓く」ことである。これは、バケノカワ=
「虚仮」が剥がされることからの比喩である。また、
殻を剥いで開けるので「牡蠣(kaki)」である。そして、
前述のとおり、
「柿」の樹皮は「剥がれやすい」ので「kaki」なのである。
コケ(ラ)とカキには混同されてもいたしかたない関係があるのである。

江戸時代、
「大鋸(おが=大きいノコギリ)」で木を挽いて製材する職人が
多く住んでたことから呼ばれたのが
「木挽町(こびきちょう)」である。
現在の歌舞伎座はその旧木挽町に建ってるのである。
これから「第三部」を観にいってくる。
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