意識に対するこのようなアビダンマの考え方により、存在の究極的な構成要素を分類するための新しい根本的な図式が作り出された。この仕組みは、後期のアビダンマ文献では、集合体(蘊)、感覚基盤(根)、根元的要素(界)といったスッタから引き継いだ図式より優先されるようになった。スッタのカテゴリーがアビダンマ・ピタカの中でも重要な地位を占めていることは間違いないが、意識とその付随物が瞬間的に発生したものが心であるという見方を取ることにより、四つの存在を中心にした体系的な分類方法が作り出された。すなわち、現実世界を、意識(citta:心)、心的成分(cetasika:心所)、物質的現象(rupa:色)、ニッバーナ(nibbana:涅槃)の四つの究極的存在(paramattha)から構成されたものとし、最初の三つを条件付けられた存在、最後の一つを無条件の存在とする体系である。
アビダンマの方法論に顕著な特徴として本書で最後に採り上げるのは、二十四の条件的関係性(因縁)のセットである。この特徴は、アビダンマ・ピタカの最後の巻であるPatthānaにおいて見られるものであり、その目的は究極的存在がどのように結合して秩序立ったプロセスになっていくかを示すことである。このような条件の構造化は、アビダンマの初期の巻で主に使われていた分析的手法を補完するという役目を果たす。分析的手法では、見かけの全体を部分に分解していき、自我や本質と形容されるような見えない中核部分が存在せず空虚であることを暴き出す。統合的な方法では、分析によって得られたありのままの現象の条件的関係性をプロットすることで、これらが独立した自律的ユニット(単位)ではなく、相互に関連し相互に依存した広大な多層的な蜘蛛の巣の中のノード(結節)であることを示す。アビダンマ・ピタカの初期理論における分析的方法とPatthānaの統合的方法を結合させることで、自我はない、すなわち無我(anattā)と、物事は条件付けられて起きる、すなわち因縁(paticca samuppāda)という仏教哲学の二大原理が根本的に結合する。このようにして、アビダンマ方法論の基盤は、ダンマ全体の中核にある考え方と完全に調和した形となる。