2月9日は、サッカー元日本代表のラモス瑠偉が生まれた日(1957年)だが、作家、伊集院静(いじゅういんしずか)の誕生日でもある。
伊集院静は、1950年、山口の防府で生まれた。父親は挑戦半島からの移民で、伊集院は在日韓国人の2世になる。本名は、チョ・チュンレで、帰化して西山忠来となった。
野球少年だった彼は、長嶋茂雄の出身大学である立教大学に入学し、日本文学を修めた。卒業後は広告代理店に入社し、コマーシャル・ディレクター、音楽イベントの演出などをした。
31歳のとき、小説雑誌に『皐月』を発表し、小説家としてデビュー。
42歳のとき、『受け月』で直木賞を受賞した。
小説に『乳房』『機関車先生』『海峡』などがある。また、作詞家としての作品に、近藤真彦が歌ったヒット曲『愚か者』『ギンギラギンにさりげなく』などがある。
私生活では、20代の会社員時代に結婚した最初の夫人と30歳で離婚し、34歳のときに夏目雅子と再婚。翌年、死別し、42歳のとき、篠ひろ子と再婚した。
70歳になる年にくも膜下出血で倒れたが復活。ギャンブラーの無頼派作家として人気を博したが、がんのため2023年11月に没した。73歳だった。
認識の順番がおかしいのかもしれないけれど、伊集院静を、まず女優の夏目雅子と結婚したモテモテの広告マンとして知り、次に女優の篠ひろ子と結婚したモテモテのバクチ打ちとして認識し、その後で彼が小説家だとようやく知った。
伊集院静は麻雀や競輪の旅打ちをするバクチ打ちで、元広告マン、さらに小説家だというのだから、彼の言うことはおよそ信じられそうもないのだけれど、ずっと以前、彼が週刊誌のエッセイのなかで、こんなことを書いていた。
結婚して間もないころ、彼はふと駅前までタバコを買いに出て、知り合いに麻雀に誘われ、そのまま三日帰らなかったことがある、と。
世の中にはすごい人がいる。
伊集院静は以前、週刊誌の対談で、こういう意味の発言をしていた。
「女優と結婚すると、ただそれだけで男たちから憎まれる」
憎む男たちの気持ちがよくわかる。でも、新婚時代のたばこ買い三日話を聞き、むしろ、夏目、篠の両女優の度量の大きさに感心するようになった。
ひじょうに屈折した言い方になるけれど、そういう意味で、伊集院静は、伴侶になった女房の株を上げる、夫の鑑(かがみ)かもしれない。
(2024年2月9日)
●おすすめの電子書籍!
『小説家という生き方(村上春樹から夏目漱石へ)』(金原義明)
人はいかにして小説家になるか、をさぐる画期的な作家論。村上龍、村上春樹から、団鬼六、三島由紀夫、川上宗薫、江戸川乱歩らをへて、鏡花、漱石、鴎外などの文豪まで。新しい角度から大作家たちの生き様、作品を検討。読書体験を次の次元へと誘う文芸評論。
●電子書籍は明鏡舎。
https://www.meikyosha.jp
伊集院静は、1950年、山口の防府で生まれた。父親は挑戦半島からの移民で、伊集院は在日韓国人の2世になる。本名は、チョ・チュンレで、帰化して西山忠来となった。
野球少年だった彼は、長嶋茂雄の出身大学である立教大学に入学し、日本文学を修めた。卒業後は広告代理店に入社し、コマーシャル・ディレクター、音楽イベントの演出などをした。
31歳のとき、小説雑誌に『皐月』を発表し、小説家としてデビュー。
42歳のとき、『受け月』で直木賞を受賞した。
小説に『乳房』『機関車先生』『海峡』などがある。また、作詞家としての作品に、近藤真彦が歌ったヒット曲『愚か者』『ギンギラギンにさりげなく』などがある。
私生活では、20代の会社員時代に結婚した最初の夫人と30歳で離婚し、34歳のときに夏目雅子と再婚。翌年、死別し、42歳のとき、篠ひろ子と再婚した。
70歳になる年にくも膜下出血で倒れたが復活。ギャンブラーの無頼派作家として人気を博したが、がんのため2023年11月に没した。73歳だった。
認識の順番がおかしいのかもしれないけれど、伊集院静を、まず女優の夏目雅子と結婚したモテモテの広告マンとして知り、次に女優の篠ひろ子と結婚したモテモテのバクチ打ちとして認識し、その後で彼が小説家だとようやく知った。
伊集院静は麻雀や競輪の旅打ちをするバクチ打ちで、元広告マン、さらに小説家だというのだから、彼の言うことはおよそ信じられそうもないのだけれど、ずっと以前、彼が週刊誌のエッセイのなかで、こんなことを書いていた。
結婚して間もないころ、彼はふと駅前までタバコを買いに出て、知り合いに麻雀に誘われ、そのまま三日帰らなかったことがある、と。
世の中にはすごい人がいる。
伊集院静は以前、週刊誌の対談で、こういう意味の発言をしていた。
「女優と結婚すると、ただそれだけで男たちから憎まれる」
憎む男たちの気持ちがよくわかる。でも、新婚時代のたばこ買い三日話を聞き、むしろ、夏目、篠の両女優の度量の大きさに感心するようになった。
ひじょうに屈折した言い方になるけれど、そういう意味で、伊集院静は、伴侶になった女房の株を上げる、夫の鑑(かがみ)かもしれない。
(2024年2月9日)
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人はいかにして小説家になるか、をさぐる画期的な作家論。村上龍、村上春樹から、団鬼六、三島由紀夫、川上宗薫、江戸川乱歩らをへて、鏡花、漱石、鴎外などの文豪まで。新しい角度から大作家たちの生き様、作品を検討。読書体験を次の次元へと誘う文芸評論。
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