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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

12月17日・夏目雅子の機知

2021-12-17 | 映画
12月17日は「楽聖」ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが洗礼を受けた日(1770年)だが、この日はまた女優、夏目雅子の誕生日でもある。

夏目雅子は、1957年、東京で生まれた。誕生時の本名は、小達雅子。彼女の家は、徳川将軍家の御典医の家系で、彼女の父親は貿易商で、家は輸入雑貨屋をしていた。彼女は、3人きょうだいのまんなかで、兄と弟にはさまれた紅一点だった。
短大生だった19歳のころ、コマーシャルに出演して、大学を中退。その翌年、カネボウ化粧品のキャンペーンガールとなり、「クッキーフェイス」のコマーシャルに登場。夏目雅子として一躍、日本を代表する美人モデルとなった。
その後、女優業へ進出し、映画「鬼龍院花子の生涯」「時代屋の女房」「瀬戸内少年野球団」に出演した後、1985年9月、白血病のため入院していた東京の病院で没した。27歳だった。美人薄命と騒がれた。

生前、夏目雅子がインタビューで答えていた。
「好きな男性のタイプですか? 憂鬱という漢字をすらすら書けたり、喫茶店のお勘定をすぐに計算できたりする人が好きです」
それを聞き、あわてて「憂鬱」と書けるよう書き取り練習をしだした。
その後、夏目雅子は、「クッキーフェイス」の撮影時に知り合った広告マン伊集院静と不倫の恋愛関係をへた後に結婚した。広告をやめた伊集院は、夏目にはげまされながら小説を書き、直木賞をとった。なんのことはない、好きな男性のタイプではなく、好きな男性の特徴をしゃべっただけだったと知れた。

夏目雅子が、肌の露出の多い「クッキーフェイス」のコマーシャルに出演したとき、10歳年下の弟さんが怒り、彼女は家の階段の上から弟に蹴落とされたことがあると、以前彼女が語っていた。

伊集院静が、雑誌のインタビューで、こういう意味をことを言っていた。
「女優と結婚した男は、ただそれだけの理由で、同性からひどく憎まれる」
夏目雅子の弟の気持ちも、伊集院を憎む男性の気持ちも、とてもよくわかる。
男の嫉妬は醜いものだ。

夏目雅子は俳人の一面をもっていて、彼女の俳句はウィットに富み、素敵である。

 結婚は夢の続きやひな祭り

 水中花何想う水の中

 風鈴よ自分で揺れて踊ってみたまえ

 恋猫やなおやかに泣く間夫の宿

俳句を読んで、はじめて、夏目雅子という人間性に、はじめてすこしだけ触れた気がした。それまで、彼女の容姿だけを見て、阿呆のようにあこがれていた餓鬼だった。彼女にはもっと長生きして、もっといろいろな面を見せてほしかった。
(2021年12月17日)



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