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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

11月11日・ヴォネガットの功

2018-11-11 | 文学
11月11日は、ポッキーの日とも言われるが、米作家カート・ヴォネガットの誕生日である。

カート・ヴォネガット・ジュニアは1922年、米国インディアナ州のインディアナポリスで生まれた。ドイツ系移民の4世で、父親は建築技師だった。カート・ジュニアは3人きょうだいの一番下で、上に兄と姉がいた。
カート・ジュニアは18歳の年にコーネル大学に入り、生化学を学んだ。
大学在学中に陸軍に徴集され、軍からの命令により、彼はカーネギー工科大学やテネシー大学で機械工学を学んだ。
第二次世界大戦が勃発すると、ヴォネガットは22歳でヨーロッパ戦線へ送られ、斥候の任務についた。この報を聞いて、彼の母親は睡眠薬を飲んで自殺した。
ヴォネガットは戦線に出ると間もなく敵ドイツ軍に捕まり、捕虜となり、その町並みの美しさで有名なドレスデンの捕虜収容所「スローターハウス5」に入れられた。
翌年、連合軍側によるドレスデン大爆撃があり、美観を誇ったドレスデンは廃墟と化したが、ヴォネガットは奇跡的に生き残った。
戦後、除隊したヴォネガットは、シカゴ大学大学院で人類学を学んだ後、25歳のとき、にューヨーク州スケネクタディのゼネラル・エレクトリック社の広報部で働きながら、SF小説を書きはじめた。
雑誌に短編を発表した後、30歳のとき、処女長編『プレイヤー・ピアノ』を発表。
以後『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』『タイムクエイク』などを書き、アイオワ大学で小説家の講義をするなどした後、2007年4月、自宅の階段から落ちて頭部を強打したのが原因で、ニューヨークで没した。84歳だった。

カート・ヴォネガットの影響は強大で、『ガープの世界』を書いたジョン・アーヴィングはアイオワ大学でのヴォネガットの教え子だし、日本の村上春樹や高橋源一郎は彼から圧倒的な影響を受けている。漫才コンビ「爆笑問題」の太田光がヴォネガットの愛読者なのは有名で、彼が所属する事務所の名「タイタン」はヴォネガットの小説に由来する。

ヴォネガットの作品『タイムクエイク』は、拙著『名作英語の名文句2』でもとり上げた。彼の『スローターハウス5』や『タイムクエイク』などは、ユーモアと深刻さを兼ね備えたみごとな傑作で、伝統的な小説とはかけ離れた、みごとに人を食った書き方の作品である。ヴォネガットは、『トリストラム・シャンディ』など18世紀の小説には見られたけれど、19世紀以降の小説では忘れられてしまった、人を食ったユーモアの文体を復活させ、新しい文学を提示して見せた小説の名人である。

ヴォネガットは言っている。
「われわれは、われわれがそういうふりをしているところのものである。だから、われわれは何のふりをするか注意しなくてはならない。(We are what we pretend to be, so we must be careful about what we pretend to be.)」(Goodreads Inc: http://www.goodreads.com/)
(2018年11月11日)



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