1月16日は、トップモデル、ケイト・モスが生まれた日(1974年)だが、事業家アンドレ・ミシュランの誕生日でもある。レストランガイドで有名なミシュランの創業者である。
アンドレ・ジュール・ミシュランは、1853年、フランスのオーベルニュ地方クレルモン・フェランで生まれた。彼はパリに出て建築学を学んだ後、政府の役所で地図を作り、鉄骨メーカーを創業をし、技術者として成功を収めていたが、33歳のとき、急きょキャリアを捨てて故郷へもどった。故郷で祖父が亡くなり、祖父が興した農機具会社が大きく傾き、そのたて直しを計るためだった。
アンドレは、パリで画家の修行中だった弟エドワールをに呼び寄せて会社の社長に据えた。彼らは会社の名前を「ミシュラン社」とし、新規巻き返しをはかったが、業績回復の妙案があるわけでもなかった。
ミシュラン社では当時、農具や作業用機械、また、機械部品であるベルトや弁、菅といったゴム製品を扱っていたが、アンドレが36歳のとき、近くの農夫がパンクした自転車を持ち込んできた。ゴムを扱う機械屋だから、直せないか、というわけだった。
当時、自転車のタイヤはゴムのかたまりで、ひじょうに乗り心地が悪いものだったが、農夫がもちこんだ自転車は、英国のジョン・ダンロップが開発したばかりの空気入りタイヤを装着していた。最新式の空気入りタイヤは、車輪のリムにのりづけされていて、パンクすると修理に数時間かかった。弟のエドワールはこのタイヤに興味をもち、もっと脱着とパンク修理がかんたんなタイヤができないものかと研究をはじめた。
2年後、特許をとったばかりの脱着が容易なチューブ式タイヤをつけた自転車で、ミシュラン兄弟はパリ=ブレスト間自転車レースに挑戦した。このレースは、フランスの首都パリを出発し、フランスの最西端、大西洋に突きでたブルターニュ半島の先端の町ブレストまで行って帰ってくる往復1200キロメートルの自転車レースで、レースのいちばんのポイントは、パンク回避とパンク修理のスピードにかかっていた。
結果、ミシュラン兄弟のタイヤを着けた自転車は、2位に約9時間という大差をつけて優勝し、ミシュラン・タイヤの名は一躍世界にとどろいた。
彼ら兄弟のミシュラン社はその後、辻馬車用の空気入りタイヤ、自動車用の空気入りタイヤを開発し、世界的なタイヤ・メーカーとなった。
1900年、パリ万博があった年には、地図、ガソリンスタンドやホテルのリスト、自動車の整備方法などを載せたドライバー用ガイドブック「ミシュランガイド」を発行し、この本はその後、レストラン・ガイドとして有名になっていった。兄のアンドレ・ミシュランは、会社の広報面に活躍した後、1931年4月、パリで没した。78歳だった。
ミシュランのタイヤには長年お世話になっている。以前、クルマのタイヤを交換してミシュランを新旧交代させたとき、換えて驚いた。ホイールバランスもあるのだろうけれど、走行がすごくスムーズで、驚くほど振動がすくない。
それにしても、策に詰まったところへ、たまたま持ち込まれたパンク修理からヒントを得て大成功を収めたというのは、なかなか示唆に富んだ話だである。困って助けを求めてきた人こそが大切ににすべき「福の神」である。
(2021年1月16日)
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アンドレ・ジュール・ミシュランは、1853年、フランスのオーベルニュ地方クレルモン・フェランで生まれた。彼はパリに出て建築学を学んだ後、政府の役所で地図を作り、鉄骨メーカーを創業をし、技術者として成功を収めていたが、33歳のとき、急きょキャリアを捨てて故郷へもどった。故郷で祖父が亡くなり、祖父が興した農機具会社が大きく傾き、そのたて直しを計るためだった。
アンドレは、パリで画家の修行中だった弟エドワールをに呼び寄せて会社の社長に据えた。彼らは会社の名前を「ミシュラン社」とし、新規巻き返しをはかったが、業績回復の妙案があるわけでもなかった。
ミシュラン社では当時、農具や作業用機械、また、機械部品であるベルトや弁、菅といったゴム製品を扱っていたが、アンドレが36歳のとき、近くの農夫がパンクした自転車を持ち込んできた。ゴムを扱う機械屋だから、直せないか、というわけだった。
当時、自転車のタイヤはゴムのかたまりで、ひじょうに乗り心地が悪いものだったが、農夫がもちこんだ自転車は、英国のジョン・ダンロップが開発したばかりの空気入りタイヤを装着していた。最新式の空気入りタイヤは、車輪のリムにのりづけされていて、パンクすると修理に数時間かかった。弟のエドワールはこのタイヤに興味をもち、もっと脱着とパンク修理がかんたんなタイヤができないものかと研究をはじめた。
2年後、特許をとったばかりの脱着が容易なチューブ式タイヤをつけた自転車で、ミシュラン兄弟はパリ=ブレスト間自転車レースに挑戦した。このレースは、フランスの首都パリを出発し、フランスの最西端、大西洋に突きでたブルターニュ半島の先端の町ブレストまで行って帰ってくる往復1200キロメートルの自転車レースで、レースのいちばんのポイントは、パンク回避とパンク修理のスピードにかかっていた。
結果、ミシュラン兄弟のタイヤを着けた自転車は、2位に約9時間という大差をつけて優勝し、ミシュラン・タイヤの名は一躍世界にとどろいた。
彼ら兄弟のミシュラン社はその後、辻馬車用の空気入りタイヤ、自動車用の空気入りタイヤを開発し、世界的なタイヤ・メーカーとなった。
1900年、パリ万博があった年には、地図、ガソリンスタンドやホテルのリスト、自動車の整備方法などを載せたドライバー用ガイドブック「ミシュランガイド」を発行し、この本はその後、レストラン・ガイドとして有名になっていった。兄のアンドレ・ミシュランは、会社の広報面に活躍した後、1931年4月、パリで没した。78歳だった。
ミシュランのタイヤには長年お世話になっている。以前、クルマのタイヤを交換してミシュランを新旧交代させたとき、換えて驚いた。ホイールバランスもあるのだろうけれど、走行がすごくスムーズで、驚くほど振動がすくない。
それにしても、策に詰まったところへ、たまたま持ち込まれたパンク修理からヒントを得て大成功を収めたというのは、なかなか示唆に富んだ話だである。困って助けを求めてきた人こそが大切ににすべき「福の神」である。
(2021年1月16日)
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