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『ねむりの町』ほか

6月23日・筑紫哲也・試論

2018-06-23 | ビジネス
6月23日は、『かもめのジョナサン』の作家、リチャード・バックが生まれた日(1936年)だが、ジャーナリスト、筑紫哲也の誕生日でもある。

筑紫哲也は、1935年、大分の日田で生まれた。東京の高校、早稲田大学の政治経済学部を卒業し、朝日新聞社に入社。政治部記者、海外特派員、編集委員などをへて49歳のとき、雑誌「朝日ジャーナル」の編集長に就任。
54歳で朝日新聞を辞め、テレビのニュース番組「筑紫哲也 NEWS23」のキャスターに就任。「ニュースステーション」の久米宏と並ぶ「ニュース番組の顔」として君臨した。
72歳のとき肺ガンであることを番組中で告白。ニュースキャスターを休業。
2008年11月、入院中だった東京都内の病院で没した。73歳だった。

右翼系、民族主義の人たちからは、筑紫哲也はずいぶん批判された。筑紫哲也の発言はしごくまっとうなものだった。冷静な頭は、熱くなった頭の反感を買いやすい。

ライバル番組の「ニュースステーション」(大枠ニュース番組の先駆け)で絶大な人気を博していた久米宏が、当時こういう意味をことを言っていた。
「自分などは、おもしろい番組をと思ってやっているだけだけれど、筑紫哲也さんはちがう。あの人は、日本のため、日本国民のためにやっている」

おそらく筑紫哲也は単純な左寄りではなくて、もっとハイレベルな日本人を望んでいたのだろう。たとえば、日本の国益だとか、日本人の損得だとか、そういう物差しを使ってものを測って考え、判断を下すようなら、それは中国人でも欧米人でも変わらない。それだけの国民なら、日本人である必要はない。
損になるばかりで一文の徳にもならないけれど、諸外国の人たちから見ればバカに見えるかもしれないけれど、それでも「恥」というものを知っているために、世界のなかで唯一「礼儀」を重んじ、あえて損するバカを平気でやる国民、そういう国民で日本人にはいてほしい、それが筑紫哲也の願いだったのではないか。
どこの民族でも民族主義者は、わがほうの得になればそれでよしとして動くけれど、この「恥を知る民族」という考え方は、そんなものではない。いまだにベトナムに謝罪しない米国や、アヘン戦争についてひと言も謝罪しないで香港を去った英国や、アフリカ諸国に謝罪しない英仏など欧州列強のような恥知らずなまねはしないし、できない。そうしたほかの民族のまねをして損得に走るような日本人なら、存在意義はない。そういう立ち位置で、これはその辺の右翼や民族主義者よりも、さらに強烈な選民主義である。

筑紫哲也はその美男、マイルドな語り口や物腰、明晰な頭脳など、ジャーナリズムの表舞台に立つ者に向く長所をたくさんもっていたけれど、彼のもっともえらいところは「日本人は特別であってほしい」という彼の望蜀である。
(2018年6月23日)


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