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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

11月6日・ネイスミスの発明

2019-11-06 | スポーツ
11月6日は、『特性のない男』を書いた作家、ローベルト・ムージルが生まれた日(1880年)だが、体育教育者ジェームズ・ネイスミスの誕生日でもある。

ジェームズ・ネイスミスは、1861年、カナダのオンタリオ州で生まれた。両親はスコットランドからの移民で、父親は木材をのこぎりでひく職人だった。
農場で育ったネイスミスは、子どものころ、キャッチボールやかくれんぼ、「ダック・オン・ア・ロック(duck on a rock)」をして遊んだ。「ダック・オン・ア・ロック」というゲームは、敵と味方に分かれてたたかい、たがいに敵の陣地にある大きな石を目標とし、それに小さな石をぶつけると得点になるというものだった。味方チームと敵チームは、たがいに敵の攻撃から自分の大きな石を守ろうとするが、この遊びをよくやっているうちに、ネイスミスは、小石を直線的に投げつけるよりも、ふんわりとロビングを上げて大石の上に落とすほうが効果的であることに気がついたという。
21歳のとき、モントリオールの大学に入ったネイスミスは、スポーツ万能の学生として、カナディアン・フットボール、ラクロス、ラグビー、サッカーなどの球技や体操で活躍し、たくさんのメダルを獲得した。
大学卒業後は、米国マサチューセッツ州のスプリングフィールドにあるYMCA国際トサーニング・センターの体育教師となった。
寒さのきびしい冬季期間、センターでは屋内で運動をおこなったが、荒っぽい連中が屋内に集まると、衝突が起こりやすく、ネイスミスは頭を痛めていた。そんなとき、体育教育科のトップから、屋内用のゲームをなにか考案するようにとの課題が与えられた。そこでネイスミスは、それほど広いスペースを必要とせず、場所を荒らさず、誰もが公平にチャンスをもつことのできる、荒っぽくないゲームを、と、案を練った。
それで、ボールをもって走ってはならない、相手のからだに触れてはならないというルールをもち、ゴールに殺到して選手同士がぶつかり合わないようゴールが高い位置に設置されたバスケットボールが考案された。ここに子ども時代の遊びの経験が生かされた。
史上最初のバスケットボールのゲームがおこなわれたのは、1891年の12月、ネイスミスが30歳のときだった。対戦するチームは9人対9人で、サッカーボールを用い、ゴールには、桃の収穫用のかごが利用された。
こうして、バスケットボールが発明された。
ネイスミスはその後、カンザス大学の教授となり、同大学のバスケットボールクラブの監督などを務めた後、1939年11月、脳出血のため、カンザス州ローレンスの自宅で没した。78歳だった。

近年、「スラムダンク」「黒子のバスケ」などのバスケットボール・マンガが人気で、米国のプロ・バスケットボール・リーグ、NBAにはスター・プレイヤーたちがひしめき、彼らはオリッピックでも活躍してよく話題にのぼる。スター選手たちの年収は軒並み高額で、なかには6000万ドル(約60億円)以上の年棒をとる選手もいるというからすごいけれど、こうしたバスケットボールの隆盛も、この人がいなかったらすべてなかったことを思えば、ネイスミスの遺産の大きさにあらためて驚かされる。
(2019年11月6日)


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さまざまなジャンルのスポーツ選手たちの達成、生き様を検証する人物評伝。嘉納治五郎、ネイスミス、チルデン、ボビー・ジョーンズ、ルー・テーズ、アベベ、長嶋茂雄、モハメド・アリ、山下泰裕、マッケンロー、本田圭佑などなど、アスリートたちの生から人生の陰影をかみしめる「行動する人生論」。


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