4月4日は、ロシアの映画監督・アンドレイ・タルコフスキーが生まれた日(1932年)だが、仏詩人・ロートレアモン伯爵の誕生日でもある。
ロートレアモン伯爵こと、イジドール・リュシアン・デュカスは、1846年、南米ウルグアイのモンテビデオで生まれた。父親は当時、現地のフランス領事館の書記官だった。母親はイジドールを出産後、ほどなくして没した。
イジドールはウルグアイで少年時代を過ごし、13歳でフランスへ渡り、リセ(中等教育機関)で学生生活を過ごした。
彼は22歳のとき詩『マルドロールの歌・第一歌』を書き、出版。翌年、続きを書き加えた決定稿を自費出版しようとしたが、その過激さに印刷屋に断られた。
24歳のとき、本名で『ポエジー』を出版し、その直後に没した。死因は自殺説、暗殺説、栄養失調説、疫病説など諸説ある。
六歌から成る散文詩集『マルドロールの歌』は結局、作者の没後だいぶたって刊行された。
「マルドロール」は、この散文詩集の主人公の名で、悪の化身という意味が込められている(mal(悪)、douleur(苦痛)を組み合わせた造語)。
『マルドロールの歌』『ポエジー』を残し、無名のまま夭逝した詩人「ロートレアモン」は、死んだ後になって発掘、評価されだし、アルチュール・ランボーと並び、シュルレアリスムの先駆として尊敬の念を集めるようになった。ロックスターのデヴィッド・ボウイも愛読し、発想のヒントを得ていたらしい。
「ロートレアモン」の名は仏ゴシック作家ウジェーヌ・シュー作の『ラトレオーモン』からとったもので、「ラトレオーモン伯爵」と名乗ろうとしたのが、印刷会社の誤植により「ロートレアモン伯爵」となったと言われているが、諸説がある。
また、イジドール・リュシアン・デュカスは伯爵の家系ではなく、ペンネームとして勝手に伯爵を名乗ったものである。
「こいねがわくは、人間の尊厳が、おまえの尊厳の反映を具現化するものに他ならないことを。だいそれた願いだが、この真摯な望みこそ、おまえにとっての栄光となるのだ。無限なるものの写像たるおまえの精神的な偉大さ、それは哲学者の省察のように、女の恋のように、鳥の天上的な美にように、詩人の瞑想のように、広大無辺だ。おまえは夜よりさらに美しい。答えてくれ、大わだつみよ、わがわが兄弟となってくれないか。身を揺すれ、激烈に…… もっと…… もっとだ。」(コント・ド・ロートレアモン作、入沢康夫訳「マルドロールの歌(抄)」『フランス名詩選』岩波文庫)
フランスには、若くして命を燃やしつくす夭逝の天才が時々現れる。数学者のエヴァリスト・ガロア、小説家のレーモン・ラディゲ、そして詩人のロートレアモンなどである。
(2021年4月4日)
●おすすめの電子書籍!
『世界大詩人物語』(原鏡介)
詩人たちの生と詩情。詩神に愛された人々、鋭い感性をもつ詩人たちの生き様とその詩情を読み解く詩の人物読本。ゲーテ、バイロン、ハイネ、ランボー、ヘッセ、白秋、朔太郎、賢治、民喜、中也、隆一ほか。彼らの個性、感受性は、われわれに何を示すか?
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ロートレアモン伯爵こと、イジドール・リュシアン・デュカスは、1846年、南米ウルグアイのモンテビデオで生まれた。父親は当時、現地のフランス領事館の書記官だった。母親はイジドールを出産後、ほどなくして没した。
イジドールはウルグアイで少年時代を過ごし、13歳でフランスへ渡り、リセ(中等教育機関)で学生生活を過ごした。
彼は22歳のとき詩『マルドロールの歌・第一歌』を書き、出版。翌年、続きを書き加えた決定稿を自費出版しようとしたが、その過激さに印刷屋に断られた。
24歳のとき、本名で『ポエジー』を出版し、その直後に没した。死因は自殺説、暗殺説、栄養失調説、疫病説など諸説ある。
六歌から成る散文詩集『マルドロールの歌』は結局、作者の没後だいぶたって刊行された。
「マルドロール」は、この散文詩集の主人公の名で、悪の化身という意味が込められている(mal(悪)、douleur(苦痛)を組み合わせた造語)。
『マルドロールの歌』『ポエジー』を残し、無名のまま夭逝した詩人「ロートレアモン」は、死んだ後になって発掘、評価されだし、アルチュール・ランボーと並び、シュルレアリスムの先駆として尊敬の念を集めるようになった。ロックスターのデヴィッド・ボウイも愛読し、発想のヒントを得ていたらしい。
「ロートレアモン」の名は仏ゴシック作家ウジェーヌ・シュー作の『ラトレオーモン』からとったもので、「ラトレオーモン伯爵」と名乗ろうとしたのが、印刷会社の誤植により「ロートレアモン伯爵」となったと言われているが、諸説がある。
また、イジドール・リュシアン・デュカスは伯爵の家系ではなく、ペンネームとして勝手に伯爵を名乗ったものである。
「こいねがわくは、人間の尊厳が、おまえの尊厳の反映を具現化するものに他ならないことを。だいそれた願いだが、この真摯な望みこそ、おまえにとっての栄光となるのだ。無限なるものの写像たるおまえの精神的な偉大さ、それは哲学者の省察のように、女の恋のように、鳥の天上的な美にように、詩人の瞑想のように、広大無辺だ。おまえは夜よりさらに美しい。答えてくれ、大わだつみよ、わがわが兄弟となってくれないか。身を揺すれ、激烈に…… もっと…… もっとだ。」(コント・ド・ロートレアモン作、入沢康夫訳「マルドロールの歌(抄)」『フランス名詩選』岩波文庫)
フランスには、若くして命を燃やしつくす夭逝の天才が時々現れる。数学者のエヴァリスト・ガロア、小説家のレーモン・ラディゲ、そして詩人のロートレアモンなどである。
(2021年4月4日)
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