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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

11月3日・さいとうたかをの才能

2023-11-03 | マンガ
11月3日は「文化の日」。この日は「マンガの神さま」手塚治虫が生まれた日(1928年)だが、「ゴルゴ13」のマンガ家、さいとうたかをの誕生日でもある。

さいとうたかをは、1936年、和歌山県で生まれた。本名は斎藤隆夫で、彼は5人きょうだいの末っ子だった。一家は隆夫が小さいときに大阪の堺へ引っ越し、彼は堺で育った。家は理髪店をやっていたが、父親が家出し、母親が理髪店を切り盛りして女手ひとつで5人の子どもを育てた。
小さいころから絵が上手だった隆夫は、勉強、とくに数学をまったく学習せず、中学卒業後の14歳のころから家の理髪店で働いた。
米国のマンガや、手塚治虫のマンガを読んで感化され、マンガを描きだした。18歳のころ、ストーリーマンガを描いて出版社に持ち込み、採用され、貸本屋向けのマンガ作家としてデビューした。
その後、マンガ雑誌に描くようになり、23歳のころから、マンガの製作を分業化して、組織で作品を作り上げていく体制「劇画工房」を結成し、これが解散した後、24歳の年に「さいとう・プロダクション」を設立。完全分業制の雇用条件もしっかりした製作体制を固めた。
従来のマンガからギャグやコミカルな要素を省き、リアルで迫力のある画面構成の新しいマンガを「劇画」と名付け、イアン・フレミングの「007シリーズ」の劇画版、時代ものの「無用ノ介」シリーズ、池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズの劇画版などを量産し、32歳のとき、マンガ誌に連載を開始した「ゴルゴ13」シリーズで圧倒的な人気を博し、組織的な製作システムにより安定したクオリティーの作品を発表しつづけた。
2021年9月24日、さいとうたかをは膵臓がんにより没した。84歳だった。

JR高円寺駅前には、リイド社という「ゴルゴ13」シリーズのコミックスを出している出版社の立派なビルが建っていて、ずっと昔、友人の打ち合わせについていって、応接室に入ったことがある。そのとき、となりの席で打ち合わせていたのが、そこの社長で、さいとうたかをのお兄さんだった。
友人にそのビルが建った経緯を聞いた。それによると、はじめ大手出版社の雑誌に「ゴルゴ13」が掲載された際、さいとうプロ側が、この作品を単行本化する際には、自分たちで出したい旨の了解を求めたそうで、大手出版社の担当者は、どうせ人気が出ないだろうとOKを出し、契約書も作って判子を押した。掲載された作品は大反響で雑誌連載が決まり、「ゴルゴ13」のコミックス(単行本)は作者さいとうの兄が立ち上げたリイド社から発売された。シリーズは大ヒットし、すぐにリイド社はビルを建てた、という話だった。それで大手出版社側は雑誌の形で「ゴルゴ13」は出せるが、単行本としては出せず、何十億円(もっとかも)のビジネスチャンスを失ったのだった。契約書を作った大手出版社の社員はクビになったと聞いた。

さいとうたかをは算数の九九も知らないそうだ。そういう人が、あの国際的な経済情勢や軍事情勢、最先端科学などがつねにからんでくる国際テロリスト「ゴルゴ13」の話を作っているというのはおもしろい。組織を統率するオーガナイザー的な才能をもった創作者。現代のアレクサンドル・デュマ。革新のアイディアと強烈な魅力をもった個性だった。
(2023年11月3日)



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