大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

幻の「スマイル」を聴く

2011-12-03 | 洋楽


我が家にもやってきた67年ビーチボーイズの幻の名盤「スマイル」デラックス・エディション。聴いてみました。

この作品初めにことわりが必要らしくて、67年に構想され約1年以上もの時間が断続的にレコーディングに費やされたものの、遂に完成をしなかったということ。そして約35年の時を経て、企画者であるブライアン・ウイルソンがようやくその構想を完成させ、02年からツアーで演奏し04年に彼の個人名義で「スマイル」がリリースされます。そして今回のアルバムは、その04年版「スマイル」を66~67年当時の音源で組み上げたものであるということ。これらが本作を聴く前の大前提として知っておくべきことのようです。

具体的には、マッシュアップと言うデジタル加工技術(ビートルズの「LOVE」という作品で一躍有名になった手法です)を使っていろいろな当時の音源の組み合わせによって作り上げられたもので、ボーカル部分の収録に至っていなかったものは、インストナンバーとして収録されています。それにしても、めくるめく万華鏡のようなアレンジの世界であり、この作品にも収録されている66年発表の「グッド・バイブレーション」の世界を発展させて1枚のアルバムにした、あの時代においてはとんでもない作品であるのです。

そもそもブライアンは、ビートルズの「ラバー・ソウル」(ビートルズがアルバム・アーティストとして変貌を遂げた最初の作品)に刺激を受けて、ビーチボーイズの「ペット・サウンド」をリリース(当時アメリカでは酷評、イギリスでは絶賛されました)。今度はビートルズがそれに刺激を受けて「リボルバー」をリリース。ここでは、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」のテープ逆回転等の斬新なアイデアが披露されました。そして、ブライアンは、「グッド・バイブレーション」と「スマイル」の制作にとりかかる訳です。大西洋を挟んで、英米の天才ミュージシャンがしのぎを削っていた、そんな状況下「スマイル」は新時代の決定版的作品としてリリースされる“予定”だったのです。

しかし、当時としては前衛と位置付けられた作品の制作姿勢に対する周囲からの猛反発は次第にブライアンをドラッグ依存へと陥れ、作品は遂に完成をみることなく静かに眠らされてしまったのでした。もしあの時に「スマイル」がリリースされていたなら、ビートルズの「サージェント・ペパー」以降は大きく流れが変わっていたかもしれませんし、ビーチ・ボーイズと言うバンド自体の音楽シーンにおける立ち位置も、後世からの評価も変わっていたことでしょう。当時の音源で構成されたこの作品を2011年に改めて聴くことで、そんな思いが確信めいて迫って来るのです。

「グッド・バイブレーション」は本当にすごい曲です。66~67年当時の作品としては、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と並ぶ革命的な音楽であると言っていいでしょう。トッド・ラングレンも70年代に自身のアルバムでこの両曲を完全コピー(カバーではなく)していましたから、70年代以降の音楽シーンを作ったアーティストたちに与えた影響は計り知れないのです。本作には未発表コーラスを付け初出のエンディングに改編されたロング・バージョンが収められています。他の収録曲としては、「スマイル」とん挫後に別の形で発表された「英雄と悪漢」「サーフズ・アップ」が特に白眉ですが、アルバム全体を包む当時の理想のアメリカを少々サイケな味付けを加えながら、トータルでひとつの作品として捉えるべき素晴らしいアルバムです。洋楽ファンは「これを聴かずして、60~70年代を語るなかれ」と言った感じでしょうか。

余談ですが、デラックス・エディションはオリジナルのCDサイズBOX入り紙ジャケ2枚組で、このデザインにマッチした仕様が実に愛らしい!米盤は箱の出来がイマイチとのことで、やはり紙ジャケで圧倒的な技術を魅せるメイド・イン・ジャパンでの購入を絶対的におススメします。よほどのビーチボーイズマニア以外は5枚組コレクターズBOXは不要と思いますが、1枚ものCDではあまりに寂しい。CD2にコレクターズBOXのダイジェストを収録したデラックス・エディションを基準盤としておススメします。こんなすごい代物が出てくる時代になったので、次はいよいよザ・フーの幻の1作「ライフ・ハウス」のマッシュアップ版登場を期待して待ちたいところです。

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