母さ～ん

カリカリカリ・・・・
メモを書いている途中で、シャープペンシルの芯が無くなりました。
おっとぉ。

下を向いたまんま、声をかけました。
『母さ～ん、芯が無くなったけど、どこにしまったっけ？』

室内は、ストーブの運転音と金魚の水槽のポンプの稼動音以外、何も聞こえない。

もう一度、母さん、と言い掛けて、はた、と気づく。

もう、居ないんだっけや。
高校生みたいなこと、言っちまったわぁ。
やれやれ、と、首をふってみる。



いかんなぁ。
深夜にぼんやりしてると、つい忘れそうになるよ、居ないのを。


少し前に、パパさんが一枚の写真をもらってきた。
どしたの？と尋ねたら、写真屋さんの前を通りかかったら、中から店員さんが出てきて
『これ、あげる。』
と、くれたのだ、という。

父さんと母さんの、並んで写した記念写真。生真面目な顔、してる。
町の、何かの行事で出たときに、ついでに写真館で撮ってたっけ、そういえば。
覚えてるよ、この薄紫の着物。母さんのお気に入りだった。
死んだら、あんたにあげるから、ちゃんと着るんだよ、って。
帯の締め方とか、着付けのやり方とか、子供の頃から何回も何回も習ったっけね、母さん、厳しいんだもん。

そんなのを手元に飾ってるから、だな。
けっして、いまだに甘えん坊、なのではありませんよ。
単なる、勘違い、です。
そうなのです。




たまには、会いにきてくれてもいいですよ。
最近、夢に出てきてくれませんよね。
ちょこっと、ほんのちょこっとだけ、・・・・うーん、さみしい、のとも違うけど。
懐かしいよ。
ま、毎日、母さんのこと、話しているけど、ね。
それはそうだけど。