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腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

勝ち続ける意志力

2012年04月17日 01時17分28秒 | ほか
という本を読んだ。
この記事タイトルを見て、本のタイトルと分かる人はどれくらいいるんだろう? 知名度が気になるなぁ。
んで知ってた人は、これがあのウメハラ、梅原大吾の著作であることも知っているだろう。
そう、対戦格闘ゲーマーとして世界一有名なあの男・ウメハラが、とうとう一般書を出版したのである。
その中身は格ゲーの攻略ではなく、格ゲーという「対戦ゲーム」に対する自分の考え、思い、心境などである。
人生の多くを格ゲーに捧げてきた人だから、自伝的な意味合いもあるかな。
これはもう、読むしかなかった。昔からウメハラを知り、格ゲーをプレーし続けてる俺なんだから、必読書だった。
777円。まさかフィーバーとか言いたいのか? ドラえもんポケット柄でセンスゼロの表紙に疑念を抱きつつ、読み始めた。
うーむ……。



取り敢えず、俺とウメハラの出会いについて語ろう。
などと言ってみたが、当然ながら俺はウメハラと面識があるわけではない。生で見た事すらないという体たらくだ。
が、それ故に偶像視が強まったファンらしいファンとも言える。キモいな。まぁいいやん、自分で言ってるだけだし。


最初は15年前、比類なき「ゲーメスト」誌に載ってた、「ヴァンパイアセイヴァー」全国大会結果の記事だったと思う。
俺は当時セイヴァーをプレーしていなかったが、友人がやってたので、大会結果は一応気にしていた。
そしたら何と、中学3年生が優勝準優勝(1位ウメ2位ヌキ)を占めたという。そいつぁすげぇと大変驚いた記憶がある。
ただこの時には名前までは意識していなかった。まさかその後も格ゲー界のトップを走り続けるなんて想像できなかったし。

その後ウメハラは「ストZERO3」で全国優勝→アメリカチャンプにも勝利する等、着々とキャリアを積み重ねていった。
しかし俺は格ゲーを続けていたものの、この時期はSNK系の方が好きだったこともあり、そっちの話題には疎かった。
何より俺の実力なんて非の打ち所がないパンピーであり、全国だの何だのの話題は遠すぎて興味も湧かなかった。
この格ゲーレベルは今も全く変わっていない。こんだけ続けてたらいい加減一皮剥けてもいいのに……と思うが、全然だ。
はぁ。まぁ本書を読んだら、それも当然だと思い知らされたけどね……。


そんな俺がウメハラの名を強く意識したのは、やっぱネットに触れるようになったからである。これは大半の人がそうだろう。
ネットによりウメハラらトッププレイヤーの濃い情報が俺の耳にも届くようになり、これはミーハー気質の俺には心地よいものだった。
ああもちろん、自分の腕前とは切り離して見てたよ。憧憬と下衆さが混ざった興味本位だな。ああやれやれ。
中でも当時の2ちゃんスレで、一つ忘れられないものがある。今探したらログが残ってたんで貼ってみよう。

梅原は何であんなに強いのか
1名無しさん@そうだ選挙にいこう []2000/08/01(火) 12:01
教えてください



これである。
このスレで彼がウメハラという名であることを知り、その凄まじい強さの逸話を幾つも知った記憶がある。
……改めて読み返すと、結構生臭いレスが一杯あるな。イマイってあの人だったり……?
で、特に忘れられないのが、>>112のこのレスである。



112名無しさん@そうだ選挙にいこう []2000/08/18(金) 18:49
Zホンダで2位
その大会は見たこと無いけどほんだのプレイは見た。
とてつもなくすごい動きをしていた。
相手はVリュウ(上級者)で、とにかく前に歩く。
波動拳が来るとガードか垂直ジャンプ、足払いがきたら
見てから?ガード。相手が止まっていると小パンチ等で
歩きながら少しづつ押す。
相手がたまらず飛んだ瞬間空中投げ。
遠くで波動拳を撃った瞬間スパコン頭突きで突き抜ける。
本当に人間が動かしてるのか?と思った。


まぁこのレスは、俺のウメハラという存在への偶像視を一気に加速させてくれたね。
>>本当に人間が動かしてるのか?と思った。
ここなんかもうビクンビクンものだよ。どんだけスゲーんだと。自分はオリコンも使えないレベルの癖に燃えまくったよ。
その後、「ギルティギアXX」での躍進や伝説の神ブロ動画などで、ウメハラの名はどんどん広まっていった。
神ブロの頃にはまとめサイトが作られ、同時にYOUTUBE等の動画サイトが一般的になり、ますますウメハラの名は上がっていった。
この時期は「ストリートファイターⅣ」登場前で、格ゲー冬の時代と言われている。俺も実感としてそう思っていた。
だがことウメハラという存在に限れば、変な話この時期が「最強」だったように思う。要するに俺の中のイメージでな。
当人が聞いたら怒るだろうが、いい加減な末端ファンなんてこんなもんだ。迷惑はかけてないと思うから見逃して下さい。


やがてストⅣが登場し、しばらく格ゲーを離れていた(?)ウメハラが復帰したこともあり、この作品は大きな盛り上がりを見せる。
スパⅣの頃にはウメハラがとうとうプロ契約を結び、日本初のプロゲーマーがここに誕生した。俺もいちファンとして嬉しかった。
同時にマスコミへの顔出しも盛んになり、ネットだけでなく新聞にも何度も登場し、「有名人」の仲間入りを果たす。
格ゲーの地位が格段に上がったわけではないだろうが、「ゲーマー」がここまでの注目を集めたのは間違いなく初めてだった。
もちろんいち格ゲーファンとして、ウメハラファンとしても嬉しい事態だった。これを機に格ゲーがまた盛り上がってくれれば最高だと思った。
かつての「ブーム」を呼び戻すってのはさすがに無理があるが、成熟した2D格ゲー文化は絶対に残って然るべきだと信じていたのだ。
その2D格闘ゲームの生き字引、生ける伝説であるウメハラが一般社会に認められたことは、本当に大きな意味を持つと思う。
一度は終焉も覚悟したこの世界に灯った、久々の明るい話題。どうか細々でいいから、対戦格闘ゲームの地道な継続を……とな。



……だが、格ゲー界の新たな形とは別に、俺のウメハラ個人への感情はこの頃からどんどん変化していった。
ぶっちゃけ、スパⅣからは負けシーンが目立つようになってきたのだ。多くの大会を(間接的に)観戦したが、結果を残すことがガクンと減った。
もちろん、格ゲーは最強だろうと常時勝てるようなものではない。それは底辺プレーヤーの俺ですらよく分かっていることだ。
だから負けるのは仕方ないとしても、その負け方にも、なんちゅーかカッコ良さがなかった。偉そうに言えば「魅せる」プレーではなかった。
以前のウメハラならそれでも良かったが、彼はもうプロ、結果なり内容なりでファンを楽しませる責任がある(と俺は思う)。
自身で提案した10戦先取の方式でも惨敗する等、以前の「俺の中の」ウメハラでは考えられない結果もあった。
ウメハラ個人がかつてない注目を浴びているのに、肝心の格ゲーにおいてかつてのウメハラらしさが見られない。
失望した……なんて大袈裟な話ではないが、俺の中のウメハラという「強者」のイメージはここ数年でもう殆ど瓦解した。
正直、この印象は現時点でも変わっていない。もうウメハラは「神」ではない。しつこいようだが、俺の中の話な。



以上が、本を読む前の前提だった。
ウメハラ幻想はもう消滅していたが、憧れの気持ちまで全部失せたわけじゃない。彼が本を出すとなっちゃ読むしかないだろう。
ちなみに、ゴーストライター疑惑は完全無視とする。そんなもん用意するほどの大物じゃないというのが理由だ。
もちろん添削は多大に入ってるだろうし、エピソードも事実にかなり手を加えているのだろうが、それはまぁアレだな。
取り敢えず読もう。存在を知って15年、ウメハラ自身の言葉で今までの全てを語ってもらおうではないか!!
……1ページ目から誤植を発見してしまった。「STREET FIGHTER 3rd STRIKE」って、Ⅲが抜けてるッスよウメハラさん。
ウメはこういう所に拘るオタ気質は持ってないってことだな。出だしから俺と全く違う性質を見せ付けられ、ちょっとガッカリした。
はぁ。




……うーむ。

俺はずっとウメハラを偶像視していたが、天才だと思っていたわけではない。
そもそも格ゲーに天才なんていないと思っている。このジャンルの特殊性は、才能なんてもんが入る余地はないと思うのだ。
もちろんある程度の適正や手先の器用さなどは下地として関係してくるが、結局は地道な努力がそのまま実力につながると考えている。
「あいつは才能が違う」は、格ゲーの負け惜しみとしては下の下である。まぁ言いたくなる気持ちは死ぬほど分かるんだけどな。
だから本書に書かれた、ウメハラが格ゲーに費やした努力についてはある意味想像通りだったが、「思い」「熱意」に関しては想像以上だった。

「ウメハラが格ゲーをどんな思いでプレーしているのか?」は、俺にとって長年の謎であり、非常に興味のある所だった。
あれだけ強いんだから、努力しているのは分かる。またそんだけ努力できるんだから、「好き」であるのも当然だろう。
でも好きだけで続けられるほど、勝ち負けのある格ゲーは甘くない。真面目にやればやるほどしんどい世界である事は俺だって知ってる。
そしてウメハラの答えは、ある意味極めて単純な「好き」と、「好きなことに全力を尽くす」という、単純かつ非常に難しい決意だった。
まぁ好きと言ってもオタ的な好きではない、と思う。多分ウメは春麗ハァハァとかには一切興味はない。と思う。知らんけど。
もっと言えば、彼は一般的な意味でのゲームは別に好きじゃない、実際殆どやらないんじゃないかと思う。
好きなのはあくまで対戦ゲーム、中でも格闘ゲームが大変肌にあったから、ずっと続けてきたというだけなんじゃなかろうか。
なのに本書の中では「格闘ゲーム」という呼び方は殆どなく、大半が「ゲーム」とまるでゲーム全般について語ってるようだった。
この点はかなり違和感があり、本書への不満点でもある。格ゲーはゲームのごく一部だ。正しく呼ぶべきではないか、と。

だがそれだけに、格ゲーに特化した彼の熱意は、そこらのオタなど比較にならないほどの本物、本気、ガチであった。
コマンド練習や判定の調査など、最早常識レベル。格ゲーにそれ以上の「勝負」を要求し、それに見合う努力を怠らない。
彼の格ゲーへの哲学は完全に「勝負の世界に生きる人間」の次元だった。実際その手の本を多く読み、勉強したらしい。
在り来たりな言葉ではなく、「とにかく変化し続けること」「自分を痛めつけるのは努力ではない」等、為になることが多く書かれてあった。
全部が彼自身の言葉かどうかは知らんが、彼が格ゲー人生の中で掴んだ「確かな考え」であることは間違いない。
本の帯には煽り文として「これはゲームの攻略本ではない、人生の攻略本だ!」と書かれているんだが、確かに誰にとっても参考になるだろう。
厳しさの度合いは違えど、人間なら誰でも競争の世界で生きてるし、否応なく勝負を迫られることもある。
そんな時にどうするか。勝負ならば勝たねばならない、勝つように動かなければならないのは当然。
「本物」の勝負哲学は、どんな世界においても通用する。「たかがゲーマー」の力強く含蓄に富んだ言葉の数々に、俺を含め多くの読者が驚いたはずだ。
大いに参考になったよ。本来の目的とは違う面で、この本を買って良かったと思った。

……ちなみに「俺にとっての対戦格闘ゲーム」は、以前記事でみっちり書いた。今も変わってない。
一応リンクを張っておこう。ウメハラと比べれば失礼なくらいヌルい気持ちだが、俺なりの本気であり、正義であると胸を張る。
実際ウメハラは、誰もが彼ほどの真剣さをもって格ゲーをやれとは言ってない。そんな事は不可能だし。
彼の驚異的な勝負哲学を吸収し、俺は俺なりに俺の対戦格闘ゲーム道を歩めばいい。この事に劣等感はない。
実力は天と地の差があっても、俺もウメハラも対戦格闘ゲーム好きという点では同じである。感化されるのはいいが、卑下する必要はないのだ。


んで、前述のように本書にはウメハラの自伝的な意味合いもある。
これも俺にとって長年非常に興味があった所なので、今回色々と知る事ができて嬉しかった。キモいけどまぁ普通だろ。
青森で生まれて東京に引っ越してきたことや、随分と奔放な性格の梅原父、ケンカが強かった小学生時代等、意外な事実がゴロゴロ判明した。
ガキの頃は疎外感を抱いた孤独な存在だったんだな。孤独に勝負の世界に進んだのはその影響もあると思う。
一方で放任主義だった両親が「真剣にゲームをやる」ことを認めてくれたのは、色んな意味で非常に大きかったことだろう。
俺はセイヴァーでの優勝を知った時、何に驚いたって、実力以上に「中学生がどうやってそんな金を調達したんだ?」ということだった。
今でこそ家でも格ゲーは遊べるが、当時はほぼゲーセンのみである。ウメほどのプレー時間なら、どんだけ勝っても相当な出費があったはずだ。
一日中いれば食事代も発生するし、ジュースも飲むだろう(逸話あるしw)。中学生がそんな金をどう用意してたのか、常々疑問だったのだ。
で、結局想像になっちまうが、これは両親がふんだんに小遣いを与えてくれていたということだろう。いや遊びじゃないから小遣いはおかしいかな。
ゲームとはいえ息子の本気をきちんと見抜き、惜しみなく援助する。なかなか出来ることではない。繰り返すが、想像である。
息子がこの世界で名を上げ、ギネスに載るまでになった今だからこそ賞賛できるが、そうでなけりゃダメ親の典型になりかねなかった。
この親子には俺みたいな他人には分からない、絆と信頼関係があるのだと思う。良い話だ。他人事ながら感動させてもらおう。
そして今も家族4人で仲良く暮らしているらしい。両親と7つ上、現在37歳のお姉さんとな。むぅ。



だが親の理解があっても、世間はそうはいかない。「たかがゲーム」への風当たりはウメ自身も強烈に浴び、非常に苦しんだそうだ。
実際ウメは「たかがゲーム」で頂点に立った、ある意味では世間的に最悪の不良である。そりゃもう大変だっただろうと想像できる。
大昔の名作漫画「ゲームセンターあらし」に、こんなシーンがあった。ちなみに俺はコマを見ただけで作品は読んだことがない。

「確かにゲームが上手くても、給料貰えるわけじゃない。テレビゲームなんて何の役にも立ちやしない……。
手から血が出るまで練習しても……誰も褒めちゃくれない……却って馬鹿にされるだけ……」

主人公のあらしが涙を流してこう苦悩するのである。ウメハラも同じことで散々悩んだに違いない。
世間のゲームへの厳しい目と、その絶望的な非生産性。俺もオタとして大いに悩む、恐らく永遠に付きまとう苦悩である。
開き直りで対応可能と言えばその通りだが、自分が老いる現実で、果たしてどこまでそれを貫けるか……この世は漫画じゃないのである。

それと、格ゲーというジャンルの特殊性も大きな壁として立ち塞がる。
ジャンルがスポーツ等なら、それだけを続けていればいい。だが格ゲーは所詮商品、メーカーやゲーセンの都合で環境がどんどん変わる。
幾ら自身が真摯に努力して力を蓄えても、「もう売れないから」という理由でバッサリ勝負の舞台を取り壊されることもあるのだ。
こういう熱意ではどうにもならない現実にもウメは苦しんだと想像する。折りしも格ゲーブームはどんどん下火になっていった頃だし。

これらの点については、ハッキリ言って今も何も解決してないと思う。プロが出来ようと何だろうと、世間の目と格ゲーの立ち位置、
つまり「たかがゲーム」と「商品が前提の競技」という部分は現在も殆ど変わらないからだ。
まぁプロたるウメら一部の人は「たかがゲーム」を既に脱したが、9割以上を占める一般プレーヤーにとってはそうではない。
そしてそれ以上に、「作品が市場に存在し続けること」は難しい。世間の目は無視できても、金の事情はそうはいかない。
メーカーが面白くて人気の出る格ゲーを出していれば、これからも盛り上がりが続き、ウメは戦い続けられるだろう。
だがそうならなかったら? カネという圧倒的現実の問題の前では、ウメの熱意も努力もカス以下なのだ。
カプコンは遊びでやってるんじゃない、あくまで金の為、商売の為に格ゲーを作り、公式大会を運営しているのである。
ストⅣシリーズは確かに一定の盛り上がりはあったが、残念ながら流れが定着するまでには至らなかったと思う。
先日発売された「ストリートファイター×鉄拳」が、売り上げ・評判どちらの意味でも失敗してしまったのがあまりにも痛い。
この状況を受けて、今後カプコンを含めた格ゲーメーカーは、どんな施策を打ってくるんだろう。非常に不安だ。
ウメハラの存在もある程度の意義があるが、彼のおかげでゲームが10万本売れるなんてことはあり得ないもんなぁ……。

まぁ一応、「完全に供給が途絶えた」ことはこの20年なかったから、格ゲーの火が消えることはない、と僅かながら楽観視している。
後はもうメーカーと時代の流れに任せるしかなかろう。いつか本当に滅んでしまえば、残念ながらその程度だったってことだ。
はぁ、格ゲー。



ああそうそう、本書のテーマでもある「勝ち続ける」ということについて。
これは単純に言うと、一つの勝ちに固執せず、勝っても負けても自分を高めることを怠らずにいること、だと思う。
ウメハラは数多くの勝利を手にしていながら、意外なほどにそれを気にしていないらしい。優勝した翌日も普段通りゲーセンに行くという。
「目標」と「目的」を混同するなと口を酸っぱくして語っていた。勝ちに執着するのは、勝ちを目的とすること。
それでは仮に目の前の勝利を手にできても、「勝ち続ける」ことはできない。自分はそんな人間にはなりたくない、らしい。
ウメハラは自分は「強い」ではなく「負けない」存在でありたいと思っているようだ。何度負けても立ち上がり、挑み続ける。
相手が根負けするまで挑めば、いずれ勝利を得られる。それが出来る意志力こそ自分の強さ、との事だった。

うーん……。
これは同意できる部分もあるけど、ちょっと違うんじゃないかとも思う。
ウメハラは「結果に拘るのは愚かなこと」と言うが、勝負の世界で結果に拘るのは至極当然ではなかろうか。
目の前の勝利を貪欲に求めるのも普通だし、ましてプロとなった現在ならウメハラもそう在るべきではなかろうか。
俺ら周囲の人間に対しても、結果だけを見て判断することに苦言を呈しているが、これなど最早負け惜しみのレベルではなかろうか。

確かに、時間が無限にあるなら、一つのタイトルが延々遊ばれ続けるなら、この考えもありかもしれない。
だがこの世界は格ゲー、移り変わりが激しく、人気ゲームもいつまでも現役ではいられない。ウメは絶えず人が集まるタイトルをやりたいらしいし。
大体この理屈を当て嵌めれば、ウメハラがかつてプレーしていた、しかし現在では止めてしまっている作品についてはどうなのか。
俺はウメと対戦したことはないが、15年前から今でもセイヴァーをプレーし続けている人は何人も知っている。
彼らはかつてウメにボコされ、再戦を願っていたのだろうが、程なくしてウメはセイヴァーを止めた。今後も再開することはまずあるまい。
この場合、セイヴァーに関しては、ウメは目的を達成しただけの人間になってしまっていないだろうか。
もちろんどんなゲームをやろうと当人の自由だが、本書で述べてた「勝ち続ける」こととの違和感をどうしても感じてしまう。
ウメハラにとって「同じゲームを延々続けてる」連中は、そもそも興味の対象外なんだろうか。よく分からない。
何より現実として、最近ウメハラは「勝って」いない。つまり「勝ち続けて」いないと俺は思う。彼の自己評価はまた別なのだろうが。
刹那的な結果で判断するのがそんなに悪いことだろうか。そのシビアさが格ゲーの良さでもあると思うんだが……。



本書には、ウメハラが格ゲーを離れ、麻雀の世界に浸っていた頃についても書かれている。
これも事実としては知っていたが、麻雀界でどんな生き方をしていたかは知らなかったので、大変興味深かった。
何と、ウメハラは麻雀界でもトップクラスまで行ったという。大会があるわけではないから本の記述しかソースがないが、俺は信用する。
いやこれは、実は格ゲーでの実績より凄いことではなかろうか。麻雀も遊びに近いが、認知度もプレーヤー層も格ゲーより遥かに上である。
その世界で、3年程度でトップに立つって。凄すぎだろ。ウメハラがゲームだけじゃない、その本質として凄い人間だというのがここで分かる。
正直、そのまま麻雀界でも伝説を作ってほしかったと思わないでもない。金だって相当稼げたのではないか?
そういや本書にはウメハラが高校卒業後、どうやって食っていたかが全く書かれていなかった。非常に興味あったのに。
成人後も両親からの支援で生きていたのか? 格ゲーに本気で取り組んでいたのなら、それもまぁアリだとは思う。
ここでもし「賭け麻雀で稼いでいた。寧ろ両親を援助していた」とか言うなら、惚れ直すくらいカッコ良いんだけどな。
仕事については麻雀界引退後の介護についてしか記述がなかったのが残念である。
何をやるのも、金。この圧倒的現実にはウメも苦しんだだろうし、今も楽観的ではいられないと思うんだが、その辺どうなんだろう。
ウメハラの金銭哲学、聞いてみたかったなぁ。いつかどこかで是非語ってもらいたいもんだ……。


……で、この 麻雀→介護職 の3~4年間、ウメハラは格ゲーを離れたとのことである。しかしこれは、ハッキリ言って嘘である。
「2004年の秋にゲームを離れた」と書いているくせに、ウメは2005年五月の「闘劇05」に出場し、しかも優勝している。
この時はヌキと、その名も「ウメヌキ」というチーム名で優勝した、キャリアの中でも有名な勲章の一つだろう。一体どういうことなんだ。
それ以外にもこの間には「Xmainia」という「スパ2X」の大会に何度も出ていたし、自身でプロデュースした事もあったはず。
また、この頃にmixiのヌキ日記で「EVOの賞金が上がったら、ウメハラが出場目指すから対戦しようと電話してきた」という記述を読んだ記憶がある。

以上、俺が知ってるだけでもこうなんだから、とてもじゃないが「ゲームを離れた」とは言えんだろう。
これは明らかに、本の流れを「物語」として格好良くすべく、事実を捻じ曲げている。非常にカッコ悪いと言うしかない。
こんな事をされたら、本書の数々の名言やウメハラのゲームへの思いも一気に嘘臭く感じてしまう。マジ最悪である。
「この時期は正直ゲームへの熱意がかなり薄れていた。大会に出て勝てたこともあったが、接し方は今までとは違っていた」とでも書けばよかったのに。
あーやっぱ、「たかがゲーム」にンなマジになれる人なんていないのかね。この本を真剣に読むのは馬鹿のすることなのかね。
まぁ俺も大人だから、多くは言わんようにするよ。世の中そんなもんだよなウメハラ。あははは。



この後はストⅣからプロ化への流れで、概ね既知の内容だった。現状のウメハラに俺が思うことは前述した通りである。
人目を気にせず己の信じる道を進むのもいいが、プロになった以上、プレーの結果や内容は強く意識してくれというのが俺の意見だ。
そういや先日、「トパンガリーグ」にて、初めて格ゲーの試合観戦に金を払った。闘劇DVDは買ったことあるけど。
こうなると俺は完全に客だし(別にでかい顔してる訳じゃなく、概念としてな)、ウメハラは金で試合を見せる文字通りのプロである。
「変化が大事」と言うなら、「結果に貪欲になるよう変化してくれ」と望むのは、筋違いと言うか屁理屈だろうか。
俺はウメハラが華麗にサイキョーに勝つ所を見たいんだ。それだけなんだ。多くのファンも同じなのではなかろうか。

そして、格ゲー以外の道も、今後は模索してもらいたいと思う。
俺は当然ウメにはずっと格ゲーをやり続けてほしいが、それのみでやっていけるほど展望は明るくない。
他のジャンルの対戦ゲームを中心に、それこそRPG等の未開地にも飛び込んでみてはどうか。立派な変化の一つだと思う。
ウメハラは最近「ガンスリンガーストラトス」という、スクエニ製アーケードガンシューティングに公的な立場で登場し、ファンを驚かせた。
これも彼の考える変化の一つと捉え、歓迎したい。格ゲーでの知名度を武器に、様々なゲームで活躍していってくれれば最高だ。
取り敢えず俺はファンの一人しとて、これからウメハラをネチネチと見ているよ。いつかリアルで対戦してみたいなぁ……。
ちなみにスパⅣネット対戦ならやったことあるんだぜ? しかも勝ったんだぜ?(ガイルに) あのリプレーは墓まで持っていこう。
うひひひ。



「死線すらも越えた群雄の将のように、僕は、今日も、最前線で戦い続けている」。


本書はこんな文章で締め括られている。その心意気やよし。そこに痺れる憧れる。
プロゲーマー梅原大吾の更なる活躍を願って、了。














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4 コメント

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面白かった! (通りすがり)
2012-04-25 08:41:46
最後まで感想を読ませていただきました。
本と事実とは違う部分もあったことを知って驚きました。
違う視点から見た新たな発見もあって、とても面白かったです!!
ウメハラって株なんかに情熱注いでたら、数年で億万長者になれると思う
返信する
Unknown (ota)
2012-04-25 21:27:16
コメントありがとうございます。

俺は梅原大吾という人間にずっと興味を持っていたので、本書は様々な面で読み応えがありました。
その分感想がいつも以上に独りよがりで、自分以外には通じ難いだろうなと思っていたので、楽しんで頂けて非常に嬉しいです。

>ウメハラって株なんかに情熱注いでたら、数年で億万長者になれると思う
うお、それは想像しただけで燃えますね! ウメハラがファンドを開設したりしたら、俺も投資しますよw
返信する
Unknown (Unknown)
2012-12-31 10:41:10
今でもウメハラは十分勝ち続けていると、私は思います
返信する
Unknown (ota)
2012-12-31 14:53:26
一番力を入れているスパ4の優勝からは遠ざかってるのでそう書きました。
全勝なんて出来るわけありませんし、「勝つ」にも色んな定義があるでしょうけど、この場合は結果重視です。
返信する

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