八王子神社（和束町）

　六所神社でかなり遅めの初詣を済ました後，帰路の途中で和束町の八王子神社にも立ち寄ることにした．この神社は，腰越峠の中腹にあって，その入り口の存在にすら気付かない人も多いと思う．峠のタイトコーナー，茶畑の脇に細い道がある．



　オートバイを停めて，道を下って行くと，すぐに八王子神社の鳥居が現れる．鳥居の先は，急こう配の階段が続いている．階段を上りきった後に下を見ると，少し怖いくらいの傾斜になっている．



　階段を上った先は，すぐに境内で，八王子神社がひっそりと佇んでいる．当然，ここで誰かと出会うことはない．時折，峠を行き交う車両の排気音が聞こえてくるだけで，それ以外は音のない世界だ．



　ここの神社には，お社が二つあって，少し奥まったところに鳥居があって，お稲荷さんが祀られている．たしか，前に訪れたのは２０２０年の年末だったと思う．お稲荷さんの置物があったので，妙に記憶に残っている．



　新年が明けて間もないので，お社は榊の葉が青々としており，盛り塩まできれいに配置されてあった．前回とおなじで，四つあるお社のうち一つだけに，お稲荷さんの置物が祀られていた．



　それにしても，お稲荷さんのいろいろな置物があるので，見ているだけでけっこう面白い．よくよく見ると，どれも口に何かを咥えていることに気付く．調べてみると，稲束や鍵，巻物，宝珠など咥えているもので，五穀豊饒や諸願成就など祈願の内容が異なるらしい．



　お稲荷さんに手を合わせ，参拝もしかっりと済ませたので，そろそろ帰ることにしよう．一日の間で，六所神社に続いて八王子神社でも参拝したので，ご利益については申し分ないだろう．



　寒い日がまだ当分のあいだ続きそうだが，峠から見える和束町の風景は，春に向けて緑が息を吹き返しているように感じた．

＊　＊　＊