土佐のくじら

土佐の高知から、日本と世界の歴史と未来を語ろう。

鎌倉幕府崩壊は、御成敗式目が原因。

2013-09-17 18:33:18 | 歴史のミステリー

土佐のくじらです。

今回の記事は歴史編、鎌倉時代です。

北条氏は、仏教を擁護し守り立てました。
時の権力者が仏教を守り立てた時、日本はとても国運が上がります。

また北条氏は、他の国家運営も上々だったのでしょう。
源氏時代までは幕府の支配の及ばなかった、西国地方にも幕府の守護・地頭が置かれるようになりました。
結局このことが、後の元寇(元・高麗連合軍来襲)を防ぎえた、大きな大きな要因だったのですね。

時のカリスマ執権、第8代北条時宗の果敢な防衛戦力により、2度の元寇、文永の役(ぶんえいのえき・1274年)、弘安の役(こうあんのえき・1281年)とも、日本の武士団が一致団結し、九州を戦場に守りきったのは、敵の弱いところを攻める戦法を使う、侵略者の中の侵略者である元(および高麗)を防ぐ、唯一の手段でした。

つまり、攻撃はできても占領できない体制に、日本はあったのです。
占領できなければ、攻撃しても割が合わないので、侵略者(戦争=ビジネス論国家)は、攻撃すらしてこないのですね。
博多で攻撃を封じられた彼らは、その後はもう、日本を攻めることはありませんでした。

とにかく、北条氏のリーダーシップなしでは、成し得ない大戦でした。
これは今でも通じる、大変な歴史の教訓だと思います。

さて、何とか無事に元寇を乗り切った日本でしたが、その後、鎌倉幕府への不満が、急激に全国に広がります。

よく言われる定説では、「元寇への対応への恩賞が少なかったから。」となっていますね。

しかし、それはおかしいです。
なぜなら、鎌倉幕府には恩賞システムは、初めからありません。

先祖伝来の土地とか、新たに開発した土地の、子孫への継続使用を認める・・・というのが、鎌倉幕府のスタイルなのですね。
つまり武士の、土地の所有の許認可を与えるのが幕府であったのです。

幕府は全国の御家人に、九州の護衛を命令しただけですから、幕府の持ち出しも、それほどではありません。

先祖伝来の土地の使用を認める代わりに、戦となれば戦う。
これが武士の戦い方ですし、これは明治まで基本的に変わりません。

不思議ですね。
定説が確かなら、なぜ御家人は、恩賞を欲しがったのでしょうか?
その、恩賞を欲しがった動機こそが、ミステリーなのです。

それは、元寇に先立ち、幕府が定めた武士に対して定めた、一つの法律が原因だと私は思います。

有名な”御成敗式目(ごせいばいしきもく)”というものですが、3代執権北条泰時によって、貞永元年(1232年)8月、編纂されました。
日本で始めての、武士に対する法律です。

関東以外に御家人が行くことによって、様々なトラブルが発生したために、生活面から精神面にいたるまでの、色々な決め事をまとめたものです。

その後の日本の、武士道精神の元になったと言われる、立派な内容を多く含んだ、武士用の法典なのですね。
しかしこれには、大変困ったことが書いてありました。

それは、土地の相続に関することです。
御成敗式目は、きっと理想主義的なんでしょうね。

相続は、女子を含む子供へ、完全に平等に分け与えるべし・・・。
御成敗式目には、こういうことが記載されているのですね。

当時は、完全な”土地本位制社会”です。
相続制度がこれでは、子孫が多ければ多いほど、将来の手持ち資産は、目減りしていくのですね。

子供が2人いれば半分に。
その子供が子供2人作れば、半分の半分に。
個人の資産は、年代を追うごとに、激減していきます。

つまり御成敗式目の理想主義的な相続制度によって、元寇の頃の武士(=農家)は、もう手持ちの所領だけでは、食べていけない状況に陥ってしまっていたのです。

元寇との戦いは完全な防衛戦ですから、新たな所領はもちろんありません。

これで食っていけなくなった御家人、武士たちは、鎌倉幕府への不満を募らせた・・・というわけです。
結局この御成敗式目の、子孫均等相続制度が、鎌倉幕府体制を終焉へと向かわせてしまうのですね。

つまり、鉄の軍団と言われた北条執権幕府ですが、土地の相続という一つの問題だけで倒幕され、後の室町幕府が興ってしまったのですね。
後の室町幕府発足の動機は、この御成敗式目からの解放という、一種の相続をめぐる規制緩和運動だったのですね。

これが、鎌倉幕府崩壊から学ぶ智恵なのです。

現代日本は、戦後から鎌倉期と同じ、子孫平等相続税度となっています。
その上当時にはなかった、相続税もあります。
日本人個人の資産は、年度ごとに目減りして行きます。

この、一見理想的に見える相続制度は、長いスパンではありますが、着実に国民生活を蝕んでいきます。
戦後既に、70年が経過しようとしています。

もうそろそろ、日本国民は選択を迫られる時期に差しかかろうとしていると思います。


                                              (続く)


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