「終戦直前、日本兵が米兵の捕虜を処刑した『油山事件』。福岡市・油山の寺院で続く慰霊法要をきっかけに、殺害された米兵の遺族と実行役の日本兵の家族が、お互いを知ろうと交流」されているそうです。
『油山事件』についての解説も紹介されています。
「米兵の遺族は、米国在住のヘザー・ブキャナンさん(53)」。
「元日本兵の家族とは東京在住の左田野(さたの)渉さん(63)。21歳で西部軍管区司令部に配属されたばかりの父修さん(89年死去)は、上官の命令で米兵1人を殺害。戦後指名手配され、3年半の逃亡生活の末、重労働5年の判決を受けた。」「自宅に残されていた大量の手記には、命令とはいえ処刑に対する後悔や、逃亡中に感じた絞首刑になるかもしれないことへの恐怖がしるされていた。左田野さんは昨年、初めて参加した法要で父のこうした葛藤や苦悩に触れ、処刑された米兵に対して『父に代わっておわび申し上げたい』と述べた」そうです。そのスピーチを知ったヘザーさんから「もしあなたの父親が私の祖父を殺したのなら、私はそれを許すことを知ってほしい」とメールが届き交流が始まったようです。
左田野さんは「『まさか米国の遺族とコミュニケーションを取る日が来るなんて思いもしなかった。父も浮かばれると思う』と話」され、「手記を英訳し、ヘザーさんら遺族に読んでもらいたいと思って」いらっしゃるそうです。「お互いを知ることこそ、亡くなった人の供養につながり、戦争について深く考えるきっかけになるーそう信じている」とのことです。
「オンライン取材に応じたヘザーさんは『日米双方の視点を知ることで一方的な善悪はないことが分かった。平和の重要性を理解するためにも、次の世代に過去の戦争と向き合う大切さを伝えたい』と話」されたそうです。「ヘザーさんは現在、祖父の物語を執筆されている」そうで、「良き家庭人だった姿を記録するだけでなく、処刑に関わった左田野さんの父親ら日本兵の苦悩にも触れるつもり」とのことです。
(下:2022年8月2日 西日本新聞〈戦後77年〉欄-久知邦「日米遺族 憎しみ越え交流 『油山事件』慰霊法要機に 日本兵の息子『お互いを知り供養に』米兵の孫 処刑の過去『私は許す』」より)