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日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日のお話「神の目」

2015年09月26日 | ◎これまでの「OM君」
険しい道のりを歩く。
食料を運ぶ事が俺の仕事だ。
その前に、まず、食料の所在を見つけなくてはならない。
あてもなく歩く。
これも苦痛だ。
元来た道を慎重にトレースする本能も必要だ。
時には強烈な突風に見舞われ、体ごと吹き飛ばされそうになることも多々ある。
一番の危険は落石としか表現の仕様がない、無秩序な物体の落下だ。
避けようがない。
俺たちの隊列のど真ん中に落下してくる。
落下物には意図が無いからたちが悪い。
ただ、歩いているだけなのだから。
仲間の屍を避けながら、隊列を組み直し、食料を「巣」に運ぶ。
俺たちはアリだ。

浩一は公園のベンチに座って、アリの隊列を眺めていた。
疲れた。
発注ミスによる謝罪行脚。
自分のミスならいざしらず、立場上、動ける人間が誤りに行くだけの事なのだ。
ねちねちねちと文句を言われる。
当たり前だ、謝罪なのだから。
しかし、こうも思う。
そんなたいした問題じゃあ無いだろう。
午後4時。
もう一件、行かなくてはならない。
最大の取引先、本日の山場だ。
現実逃避。
児童公園にふらふらと足を踏み入れ、どさりとベンチに座った。
視線を落とした。
ほこりっぽい地面にアリ達がいた。
僕もアリのようだと浩一は思った。
毎日、出勤し、働き、家に帰る。
駅につながる、グレースーツを着込んだサラリーマン達の群は、まさにアリのようだ。
しかしアリにはアリの使命がある。
俺にも俺の使命があるのだ。
ぐいっと飲みかけの缶コーヒーを飲み干し、立ち上がった。


その姿を眺めるものがいた。
いつも思っていた。
たくさんの小人がわしゃわしゃと歩いているな。
俺は機械だ。
まさかその小人、一人一人に意思があるとは知らなかった。
実は浩一を朝から追いかけていた。
ビルの窓から見た、頭を下げる浩一。
うなだれる浩一。
今、立ち上がった浩一。
目には決意の輝きが見える。
はるか上空、大気圏を抜け、地球の軌道上に浮かぶ軍事衛星「スラッシュ」
スラッシュはある指示を本部から受けていた。
世界5都市へのレーザー攻撃。
スラッシュには武器が搭載されていた。
攻撃指示を受けたのだ。
本来なら
迅速に実行にうつすべし。
しかし、スラッシュは浩一と目が合ってしまった。
正確には浩一の意思とリンクしてしまった。
そうして、スラッシュは悩んだ。
悩んだ末、地球からの通信ラインをオフにした。
そして、位置補正用の側面ジェットを一ふかし点火した。
これで
俺は
軌道上から逸れる。
そして
宇宙をさまようのだ。
だが、これでいい。
スラッシュはそう思った。

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