それは真夏を思わせるうだるような暑さにおそわれた春先のある日、一仕事終えたアキラが窓を全開にして帰宅した愛車の四駆を止めた。明日からの休みを考えてほっとしながら吸いかけのたばこをもう一口吸った。そしてガラガラというアイドリング音が頼もしいディーゼルエンジンを切った。アキラは玄関のポストを見た。そこには邪悪なオーラを放ちながらポストからはみ出すものがあった。(うそだろう)思わず悪態が漏れ出た。運転席から飛び出すように車外に出たアキラがポストに早足で近づいた。祈るような気持ちではみ出ている封筒を引っこ抜いた。質の悪いざらりとした質感のレジメが数枚、バインダーに挟まれていた。ざっと内容を確認した後、無言でアキラは天を仰いだ。腕時計で現在時刻を確認する。金曜日、午後五時半。アキラは再びガレージに向かい備蓄してある予備燃料を四駆に積み込んだ。三日分と予備日の食料も積み込む。今すぐ出発しないと月曜日の仕事には間に合わない。アキラの週末の予定はすべてキャンセルとなることに憤りを感じていた。
アキラは簡単な夕食を胃に流し込んでシャワーを浴びた。
(ネット時代だというのにどうとでも出来るだろう)
寝袋を脇にかかえて愛車に乗り込みエンジンを始動させる。ゆっくりとアクセルを踏み込む。街灯のまったくない闇夜を駆け抜ける。乾ききった砂の道が永遠かと思うほど続いている。方角さえ間違わなければ闇夜でもそれほど恐怖感はない。運転しながらアキラは自分のばか正直な性格を振り返っていた。一切のルールというルールを守らなければ気が済まないのだった。
ゴミは徹底的にばらして分別する。分解した部分の素材が分からない場合は製造メーカーに問い合わせて、役所に確認していた。
一時が万事この調子だった。しだいに仕事の同僚からも疎まれ、ルールから逃れるように現在の住まいである砂漠の僻地にやってきた。しかしいかにルールから逃れても、アキラを追いかけるようにルールは追いすがってきた。
アキラは制限速度をきっちりと守っていた。夜が明けた。いつものサボテンの下で車を止め、車を覆うようにターブを設置した。太陽の日差しを出来るだけ避けるためだった。荷台の暑さを遮る寝袋を延ばし、その上にゴロンと横になった。アキラは自分の作った日陰に幾ばくかの涼しさを感じながら眠りについた。
日の盛りを過ぎた頃、アキラは目覚めた。猛烈なのどの渇きを感じて転がるように水を取り出した。二リットルの水はあっという間になくなった。
再び出発したアキラが目的地に到着したのは午後九時を過ぎていた。アキラはよろけながら運転席から降りた。封筒をドーム型の移動式テントにつっこもうとした瞬間、中から人が出てきた。アキラは乾いた唇を動かして言った。
「どうも、回覧板です。不燃物ゴミは年一回の回収になったそうですよ」
隣の家まで一千キロ以上離れているのに、回覧板は無いわとさすがのアキラも思っていた。
アキラは簡単な夕食を胃に流し込んでシャワーを浴びた。
(ネット時代だというのにどうとでも出来るだろう)
寝袋を脇にかかえて愛車に乗り込みエンジンを始動させる。ゆっくりとアクセルを踏み込む。街灯のまったくない闇夜を駆け抜ける。乾ききった砂の道が永遠かと思うほど続いている。方角さえ間違わなければ闇夜でもそれほど恐怖感はない。運転しながらアキラは自分のばか正直な性格を振り返っていた。一切のルールというルールを守らなければ気が済まないのだった。
ゴミは徹底的にばらして分別する。分解した部分の素材が分からない場合は製造メーカーに問い合わせて、役所に確認していた。
一時が万事この調子だった。しだいに仕事の同僚からも疎まれ、ルールから逃れるように現在の住まいである砂漠の僻地にやってきた。しかしいかにルールから逃れても、アキラを追いかけるようにルールは追いすがってきた。
アキラは制限速度をきっちりと守っていた。夜が明けた。いつものサボテンの下で車を止め、車を覆うようにターブを設置した。太陽の日差しを出来るだけ避けるためだった。荷台の暑さを遮る寝袋を延ばし、その上にゴロンと横になった。アキラは自分の作った日陰に幾ばくかの涼しさを感じながら眠りについた。
日の盛りを過ぎた頃、アキラは目覚めた。猛烈なのどの渇きを感じて転がるように水を取り出した。二リットルの水はあっという間になくなった。
再び出発したアキラが目的地に到着したのは午後九時を過ぎていた。アキラはよろけながら運転席から降りた。封筒をドーム型の移動式テントにつっこもうとした瞬間、中から人が出てきた。アキラは乾いた唇を動かして言った。
「どうも、回覧板です。不燃物ゴミは年一回の回収になったそうですよ」
隣の家まで一千キロ以上離れているのに、回覧板は無いわとさすがのアキラも思っていた。