日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
http://onimimicola.jimdofree.com

◎本日の空想話(うぐいす嬢のエンターテイメント)

2016年03月26日 | ◎これまでの「OM君」
私は市営グラウンドの隣のアパートに住んでいる。今日は土曜日。土曜日には少年野球の練習試合が行われる。私はこう見えて野球が好きなのだ。
暇を見つけては観戦に向かう。
しかし今日は友達が遊びに来ることになっているので出かけるわけにはいかない。
試合の場内アナウンスは聞こえるので、さっきから気になって仕方がない。

「三番ファースト田口くん。背番号4。昨日は緊張してよく眠れなっかとのことでーす」
(おや、アナウンスのお姉さんの声がいつもと違う。そして、そんなプチ情報はいつもアナウンスされないのに…)
そんな思いはよそに場内アナウンスは続く。
「よく眠れなかったのは、今日の試合のせいではなく、実は同級生の静香ちゃんに告白してあっさり振られたそうです。どうやらすでに静香ちゃんには好きな男性がいたそうです。田口君くじけるな。負けるな田口君。今日は打席に立てる心境ではありませんが頑張って試合に挑んでおります。皆様どうかここで温かい拍手で田口君を元気づけてください。おっと~田口君、内野ゴロです。しょうがありませんね。
続きまして四番センター山本君。山本君も最近いいことが無く落ち込んでいます。先日行われた算数のテストで0点を取ってしまい、お母さんにこっぴどく怒られ、ゲーム機のACアダプターを隠されています。お母さんもうそろそろACアダプターを返してあげてください。ACアダプターが無いとゲームは出来ません。おっとセンターフライでスリーアウト、チェンジです。今日はこれ負けかな~」

(おいおい、このうぐいす嬢はどうしたいんだ)
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◎本日の空想話(店員さんの守備範囲)

2016年03月13日 | ◎これまでの「OM君」
「いらっしゃいませ」
「白くて長くてくるくるっとしたものください」
「白くて長くてくるくるっとしたものですね。かしこまりましたー。オーダー入りまーす。W・L・R(ホワイト・ロング・ロール)ワーン」
「サンキュー」


「いらっしゃいませ」
「透明でぬめっとしていて、それでいて金属質なものホットでください」
「かしこまりましたー。C・W・M・H(クリヤー・ウエット・メタル・ホット)ワーン」
「サンキュー」


そのやりとりを眺める老夫婦がいた。
「ばあさんや。あの若者たちはいったい何を買っとるのかのう」
「じいさんや。あれはのう、ミントのガムとかフリスクとかあるじゃろう。あれじゃあ~」
「ばあさん何を言ってるのかワシにはよくわからんぞう」
「だから、客はサウナ部屋みたいな小さな箱に入るんじゃ。オーダーした感じを機械が表現するんじゃあ。箱の中がその感じに満たされて客がすっきりするんじゃと」
「へえ、そうかい。じゃあ、わしもちょっくらやってみるかいの」
「じいさま本気かい?」
「ああ、本気じゃよ」

「ごめん」
「いらっしゃいませ~本日はどのような感じにいたしましょうか」
「そうじゃな、ワシが生まれた、誕生直後の気分をおねがいしようかの」
「かしこまりましたー。B・A・Tワンー」
「出来るのか」
「はい扉を開けておすすみください」

廊下にはたくさんの扉が並んでいた。
赤いライトが点滅している扉がある。
どうやらそこに行けばいいらしい。
イスが一脚置かれた無機質な小部屋。
イスに座ると電気が消え真っ暗になった。

この匂いは香取線香、シナモン、実母散。
実家は薬問屋をやっていた。
懐かしい。
ワシは産婆さんに取り上げてもらったんじゃあ。
母の顔があった。


「じいさま。どうじゃった?」
「すごいなテクノロジーの進歩は」
「じゃあ、私もやってみようかいの」
「ばあさまもやるか」
「やる」
「何て言うんじゃあ」
「秘密じゃあ」

「いらっしゃいませー」
「あの、あの、初恋の気持ちでお願いしたいんじゃが」
「かしこまりましたー。F・Lワーン」

ばあさまもイスに座ると部屋は真っ暗になった。
ばあさまの目の前には若い頃のじいさまが見えた。
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