「しかしあれだね、建てて貰ってあれなんだけど、お母さんもどうしてこの家にしたんだろうね」アキラは煙が漏れ出す壷風のなべにつっこんだ大きな木のスプーンで紫色の液体を混ぜながら妻のウイッチに愚痴をこぼした。
「とかげの尻尾入れた?」ウイッチはまたその話かと少しうんざりしながら手を止めて諭すように言った。
「どうしてってヘンゼルとグレーテルの子孫を迎える家は代々お菓子の家って決まってるからでしょう。母もやっと建てることができたって喜んでるのにその言い方はないでしょう」
「お菓子の家もすてきだけど住むにはどうなのかな?もう虫が来るのは想像できたけど、かけ布団が綿菓子なのはだめだよ。朝、起きたら全身べたべただよ。掛け布団は羽毛でもいいかな」
「そうね、服はコットンを着ているから布団と毛布は普通でもいいわ」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。でも水回りもどうにかしないと困る。排水パイプが飴で出来ているから、お風呂は我慢するにしても(バスタブはチョコで出来ている)シャワーを浴びたとたんに壁も床も溶けだしてべたべただよ。君は魔女だから魔法でどうとでも出来るかもしれないけど僕は魔女の家に来た普通の人間の婿殿なんだからどうしょうもないよ」
「(うるさいわね。好きで一緒になったんだけど私がいないと人間って本当に何もできないのね)わかったわ、居住エリアのお菓子はすべてアクリル樹脂で封入する魔法をかける」
「ありがとう。助かるよ。それと最後にもう一つだけお願いしてもいいかな」
「どうぞ」
「耐震構造をお願いしたい」
「したでしょう」
「しましたね。でも基本的に柱は飴で出来ているでしょう。追加の補強の梁と壁を作ったけれどあれも飴でしょう」
「ぎくり」
「だからお菓子は表面の内装だけ、家の構造は鉄骨ラーメンにして欲しい。お母さんには内緒で」
(魔法でなんでも出来るけれどお母さんの目はだませるかしら。それとももう一家、百パーセント混じりっけなしのお菓子の家を作ろうかしら。
渡る世間は魔女ばかり。
「とかげの尻尾入れた?」ウイッチはまたその話かと少しうんざりしながら手を止めて諭すように言った。
「どうしてってヘンゼルとグレーテルの子孫を迎える家は代々お菓子の家って決まってるからでしょう。母もやっと建てることができたって喜んでるのにその言い方はないでしょう」
「お菓子の家もすてきだけど住むにはどうなのかな?もう虫が来るのは想像できたけど、かけ布団が綿菓子なのはだめだよ。朝、起きたら全身べたべただよ。掛け布団は羽毛でもいいかな」
「そうね、服はコットンを着ているから布団と毛布は普通でもいいわ」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。でも水回りもどうにかしないと困る。排水パイプが飴で出来ているから、お風呂は我慢するにしても(バスタブはチョコで出来ている)シャワーを浴びたとたんに壁も床も溶けだしてべたべただよ。君は魔女だから魔法でどうとでも出来るかもしれないけど僕は魔女の家に来た普通の人間の婿殿なんだからどうしょうもないよ」
「(うるさいわね。好きで一緒になったんだけど私がいないと人間って本当に何もできないのね)わかったわ、居住エリアのお菓子はすべてアクリル樹脂で封入する魔法をかける」
「ありがとう。助かるよ。それと最後にもう一つだけお願いしてもいいかな」
「どうぞ」
「耐震構造をお願いしたい」
「したでしょう」
「しましたね。でも基本的に柱は飴で出来ているでしょう。追加の補強の梁と壁を作ったけれどあれも飴でしょう」
「ぎくり」
「だからお菓子は表面の内装だけ、家の構造は鉄骨ラーメンにして欲しい。お母さんには内緒で」
(魔法でなんでも出来るけれどお母さんの目はだませるかしら。それとももう一家、百パーセント混じりっけなしのお菓子の家を作ろうかしら。
渡る世間は魔女ばかり。
分冊百科シリーズの新作「週刊パンサー戦車を作る」を購入したお年寄りを目撃。
「孫にすすめられてのお、それでわしゃあ作る事にきめたんじゃー」
「ご入荷いたしましたらお電話さしあげますね」
「わしゃあ買いにくるから大丈夫じゃあ」
「では次回だけ、一度お電話さしあげますね」
「いやあ、大丈夫じゃあ」
パンサー戦車をめぐる打ち合わせが店内に響き渡っていた。
それを聞きながら大丈夫なのだろうかと思ったとか思わないとか。
「孫にすすめられてのお、それでわしゃあ作る事にきめたんじゃー」
「ご入荷いたしましたらお電話さしあげますね」
「わしゃあ買いにくるから大丈夫じゃあ」
「では次回だけ、一度お電話さしあげますね」
「いやあ、大丈夫じゃあ」
パンサー戦車をめぐる打ち合わせが店内に響き渡っていた。
それを聞きながら大丈夫なのだろうかと思ったとか思わないとか。