もうすぐ時刻は午前1時になろうとしている。
とあるマンガ喫茶の個室。
テーブルに自前のパソコンを投げだし電源ボタンを押す。
起動を待つ間、タバコに火をつける。
しらじらしい起動音が小さく鳴った。
連日のやまない雨のおかげで、タバコはしめり気味だ。
懐も湿り気味。
ため息と一緒に煙をはきだす。
女の事を考えた。
都市伝説を扱うSNSでコンタクトをとった。
艶っぽい話ではなく、仕事でだ。
フリーライターとして雑文を切り売りしている身分の俺はネタは自分で探さなくてはならない。
その女がこの店と時間を指定した。
「ネットに幽霊がでる。それを見た人は必ず叫ぶ。
その情報を提供する。そのかわり、いくばくかのお金をいただきたい。」
そう女は言うのだ。
お金か。
俺に金をたかるとは、この女もよほど生活に困っていると思える。
まあ、金は恵んでやる。
ネタがなくても、たかられたことをネタに一本原稿を書くつもりだ。
ゆるゆると時間は過ぎていった。
店内はこの時間にも関わらず、たくさん人がいる気配がする。
都会はそんなもんだ。
金曜の週末の夜。
たばこを一本灰にした。
女が現れる気配は無い。
無駄足か…。
そう思った時、チャーラーン♪
こん平師匠のサンプリング音がメールの到着を告げる。
例の女からだ。
「遅れてごめんなさい。あと10分で着きます。時間節約のため概要をまとめたものを送ります。」
添付ファイルは動画だった。
不審にも思ったが、乗りかかった船と覚悟を決め、再生ボタンを押した。
画面いっぱいに動画は展開された。
写ったのはレックボタンを押して後ずさる若い女。
白いワンピース姿のショートカット。
(この女がメールの女なのか?)
鬱蒼とした夜の森。
そこに女は立っている。
「あなたはこんな話を知っていますか?
一カ所に集まった見も知らない者同士がほぼ同時に悲鳴をあげる。
そんな事が頻発するマンガ喫茶がある事を…」
そう言って女は画面の右に消えていった。
森の静寂だけが画面に続く。
ライトに引きつけられた蛾や羽虫がときおり飛ぶ。
沈黙が続く。
(なんだなんだ…)
食い入るように画面を注視する。
キャーという大音量の叫び声と共に、血だらけの顔面が大写しになる。
ウワー!
思わずイスから飛び上がり叫んだ。
右の部屋からも左の部屋からも何かを蹴飛ばす音と共に、叫び声が同時にあがる。
左右の部屋だけではなく、店内の至る所で叫び声があがった。
(やられた…)
そう思った。
あの女(女かどうかも分からないが…)同じような人種をこの店に集めやがった。
何人集めたか分からないが、ここに集まった相手全員にフラッシュ系のおなじみ迷惑メールを送りつける。
まんまと、知らないもの同士が同時に叫ぶマンガ喫茶の都市伝説を成立させやがった。
心拍数の上がった鼓動はまだおさまらない。
とあるマンガ喫茶の個室。
テーブルに自前のパソコンを投げだし電源ボタンを押す。
起動を待つ間、タバコに火をつける。
しらじらしい起動音が小さく鳴った。
連日のやまない雨のおかげで、タバコはしめり気味だ。
懐も湿り気味。
ため息と一緒に煙をはきだす。
女の事を考えた。
都市伝説を扱うSNSでコンタクトをとった。
艶っぽい話ではなく、仕事でだ。
フリーライターとして雑文を切り売りしている身分の俺はネタは自分で探さなくてはならない。
その女がこの店と時間を指定した。
「ネットに幽霊がでる。それを見た人は必ず叫ぶ。
その情報を提供する。そのかわり、いくばくかのお金をいただきたい。」
そう女は言うのだ。
お金か。
俺に金をたかるとは、この女もよほど生活に困っていると思える。
まあ、金は恵んでやる。
ネタがなくても、たかられたことをネタに一本原稿を書くつもりだ。
ゆるゆると時間は過ぎていった。
店内はこの時間にも関わらず、たくさん人がいる気配がする。
都会はそんなもんだ。
金曜の週末の夜。
たばこを一本灰にした。
女が現れる気配は無い。
無駄足か…。
そう思った時、チャーラーン♪
こん平師匠のサンプリング音がメールの到着を告げる。
例の女からだ。
「遅れてごめんなさい。あと10分で着きます。時間節約のため概要をまとめたものを送ります。」
添付ファイルは動画だった。
不審にも思ったが、乗りかかった船と覚悟を決め、再生ボタンを押した。
画面いっぱいに動画は展開された。
写ったのはレックボタンを押して後ずさる若い女。
白いワンピース姿のショートカット。
(この女がメールの女なのか?)
鬱蒼とした夜の森。
そこに女は立っている。
「あなたはこんな話を知っていますか?
一カ所に集まった見も知らない者同士がほぼ同時に悲鳴をあげる。
そんな事が頻発するマンガ喫茶がある事を…」
そう言って女は画面の右に消えていった。
森の静寂だけが画面に続く。
ライトに引きつけられた蛾や羽虫がときおり飛ぶ。
沈黙が続く。
(なんだなんだ…)
食い入るように画面を注視する。
キャーという大音量の叫び声と共に、血だらけの顔面が大写しになる。
ウワー!
思わずイスから飛び上がり叫んだ。
右の部屋からも左の部屋からも何かを蹴飛ばす音と共に、叫び声が同時にあがる。
左右の部屋だけではなく、店内の至る所で叫び声があがった。
(やられた…)
そう思った。
あの女(女かどうかも分からないが…)同じような人種をこの店に集めやがった。
何人集めたか分からないが、ここに集まった相手全員にフラッシュ系のおなじみ迷惑メールを送りつける。
まんまと、知らないもの同士が同時に叫ぶマンガ喫茶の都市伝説を成立させやがった。
心拍数の上がった鼓動はまだおさまらない。