薪能が最初に催されたのは平安時代、場所は興福寺だという。
興福寺の薪能は「薪御能」と呼ばれるそうだ。
薪御能は毎年5月11日~12日に春日大社と興福寺にて催される。
私が観たのは、12日の午後5時30分から始まる南大門の儀。
立見の無料席と3000円の協賛席とがあり、協賛席のチケットは当日でも購入することができるようだが、席はすべて自由席なので早めに行って様子をみる。
午後3時半頃に興福寺に到着する。
すでに20~30人ほど並んでいる。
本でも読みながら2時間待ってもいいと思ったが、せっかく奈良まで来たのだからと、チケットだけ購入して、近くの元興寺へ向かう。
元興寺については後日記す。
4時半の開場時刻にあわせて興福寺へ戻る。
北側から入り、舞台正面の桟敷席に座るが、長時間座のはキツイだろうと思い、西側の椅子席へと移動する。
演目は、宝生流能「東北」、大藏流狂言「太刀奪」、観世流能「鉄輪」。
演能の前には、「舞台あらため」と「外僉議」がある。
平安時代の舞台は野外の芝生だったため、芝生に置いた紙の上を高下駄で踏み、芝生の湿り具合をみて、上演の有無を決めていたという。
その儀式が「舞台あらため」で、その結果を伝えるのが外僉議文である。
これは興福寺の薪御能だけでしか見ることができない儀式というので、ありがたい気持ちで見入った。
「東北」が終わると、火が入れられた。
次第に日も暮れていき、なんともいえない幽玄の美。
一年前は、こうして奈良で能を観ることができるとは想像もできなかったと不思議な気持ちになる。
上演中は写真撮影は禁じられているので、終わったあとの舞台を撮ってみた。