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教育分野への株式会社参入構想と文部科学省の「抵抗」<58> H14.11.25

2010年08月05日 | じんたん 2002


 奥井の言うように、規制緩和、自己責任、自立自尊という流れは、その後加速し、今、日本では、足元が断崖絶壁であることに気づき始めたところなんでしょうね。南ココナツ国尊那州は、日本の二の舞にしたくないですね。


教育分野への株式会社参入構想と文部科学省の「抵抗」

 構造改革へ向けた規制緩和の一環として、総合規制改革会議が打ち出した医療・福祉、教育、農業分野への株式会社の参入構想を受けて、政府がその具体化へ向けた「構造改革特別区域法案」をこの秋の臨時国会に提出する。

各省庁の権益は維持された

 産業再生・国際交流などの分野を含めて全国から426件の具体的構想が寄せられ、このうち教育分野は44件を占めた。

 しかし、具体的に法案に盛り込まれたのは一五件で文部科学省はこの構想の最も大きな柱である学校への株式会社の参入を認めなかったほか、個別の規制緩和案件に多くの条件を要求しており、法案の内容には大幅に省庁の裁量の余地を残した。

 国際化の進展や地域の教育のニーズの多様化、若者の学力低下への対応と競争環境の変化などを背景にして、全国から寄せられた規制緩和へのアイデアは多彩でさまざまな分野に及び、小学校から大学院まで幅広い範囲に及んでいる。

 「保育園・幼稚園の園児と小学校低学年を一緒に教育する」(北海道ニセコ町)、「小学校低学年で国語と算数を重点的に学ばせる」(茨城県東海村)、「公設民営のインターナショナルスクールの設置」(東京都港区)など地域の事情をふまえて新たな教育ニーズに沿ったものが少なくない。外国人居住者が増えている群馬県太田市は小中高一貫教育を行う「外国語教育特区」が、少子化で空き教室を抱える大都市近郊の東京都八王子市からは不登校専門の小中一貫教育校の設置が提案された。

 文部科学省は、一五項目については「規制緩和と地方分権の流れ」と受けとめて容認し、これまで国の規制のもとで実施できなかった新しい試みが「特区」のもとで可能になる見通しとなった。国の学習指導要領をはずれたカリキュラムで運営される「特区研究開発学校」の制度もその一つで、在留外国人の子弟を多く抱える地域で数学や理科を英語で授業したり、小中高の一貫教育もそれぞれの地域の事情に応じて可能になる。

 また、不登校などのニーズに応じた少人数の教育をNPO(非営利組織)が運営するに際して、特区内で学校法人の設立要件として定められていた「校地・校舎の自己所有」という制限を緩和して学校として運営が容易にできる道を開いた。これにより、条件つきながらいわゆる「公立民営」型の学校設置もしやすくなると見られる。


民間参入のメリットに目を向けよ

 論点となったのは、病院経営とともに焦点だった株式会社による学校経営への参入が、文部科学省の強い抵抗で見送りになったことである。教育ニーズの多様化を受けて、学習指導要領など国の一律の規制のもとで強まる学校経営に壁を乗り越える試みとして、民間参入による「学校」運営を特区で進めるアイデアに対し、文部科学省は民間の営利法人が直接学校経営に参与することを、「憲法に定める教育の基本理念を逸脱するもの」として、仮に特区であっても認められないと強く反発した。

 「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」という憲法二六条をよりどころにした文部科学省の言い分は、つまるところ郵政民営化論議でも主張された国による「全国一律」のユニバーサルサービス論にいきつく。そこでは義務教育をコアにした教育の水準確保が国の独占的な責務であって、学校教育への株式会社の参入は配当重視の「利益追求」と経営の不安定性に伴う公益性の低下に結びつくという、民間や地方への不信感につながっている。

 教育分野への株式会社参入というアイデアは、小泉改革がめざす財政の効率化を背景にして登場したことは確かである。ただ、財政面での非効率化に加えて、公教育の制度疲労がさまざまなかたちで噴出するなかで、受益者側からは「学校」の画一的なサービスへの不満が高まり、学校運営に民間セクターの参入を求める声は少なくない。

 米国などではいわゆるチャータースクールで、運営者側が求める教育目標に合わせて株式会社が学校運営を請け負い、予算配分を受けて人事や教育内容を動かしていくしくみが一定の成果をあげている。公・私を問わず受益者が選択する学校へ教育クーポンで学費を支払い、運営する試みも行われている。

 明治以来、国が全国共通の公教育を一律に「配給」してきたのが日本の教育制度であって、こうしたピラミッド型の枠組みを崩したくない文部科学省には「株式会社参入=教育の質の低下」という抜きがたい認識があるようにみえる。官の「独占」のもとで日本の学校制度は私立学校の設置にも多くのハードルが設けられていて、地域や民間が新たな教育ニーズのもとで学校設立を企てても実現しにくい構造がある。

 今回の特区法案では、不登校の児童を対象にした学校設置に限って学校法人の設立要件を緩和し、公設民営などの新たな運営形態に道を開いたが、こうした試みを含め、特区構想がめざす学校への民間参入のメリットに目を向けるべきであろう。

「教職研修(2002-12)」「教育の断面」柴崎信三(日本経済新聞論説委員)より


  規制緩和、自己責任、自立自尊という流れは加速していくだろう。寄って立つところを自分で確保しなければ、気がついたら、足元が断崖絶壁であるかもしれない。


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