はがきのおくりもの

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初めての学生向け学長だより

2020年08月05日 | とうきび大学物語2019~

木瀬です。お久しぶりです。

今回は、奥井が学生向けの学長だよりを発行したというので、紹介します。

すでに、教職員向け学長だよりは40号を超えたと聞きましたが、学生向けは初めてだそうです。

とうきび大学では学生向け学長だよりは初めてらしいので、学生さんたちはどんな感想を持つでしょうか。

では、学生向けの学長だより第一号をどうぞお楽しみください!

 

      ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 新型コロナウィルスの感染が一段と拡大しています。
 学生の皆さんも不安な日々を過ごしていることと思います。

 本学において、1名の学生がアルバイト先の友人の濃厚接触者となり、PCR検査の結果、陽性と判定されました。
 新型コロナウイルス感染者となった学生は出席停止ですし、その学生と接触した学生や教職員の皆さんには自宅待機をしていただきました。
 また、感染学生とその接触学生たちが予定していた学外実習は中止としました。
 接触した学生や教職員の皆さんについては、保健所から濃厚接触者には当たらないと判定されましたので、自宅待機を解除しました。

 このようにコロナ禍が蔓延する状況ですから、学生の皆さんには自身の行動に十分気をつけるとともに、深く考えていただきたいと思います。
 感染者になるだけではなく、濃厚接触者になることにより、授業や実習を中止とせざるを得ないなど、他の学生や教職員に多大な影響があります。
 学生の皆さん、学外での行動でも三密にならないよう、十分に注意して行動してください。

 さて、このような状況の中で、学生の皆さんに〈寛容〉と〈自由〉についてぜひ考えてほしいと思い、筆を執りました。

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     〈寛容〉について
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 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令中には、営業する店に貼り紙をしたり、県外ナンバーの車を傷つけたりする「自粛警察」と呼ばれる行為が目立ちました。
 「自粛警察」と呼ばれる行為については、正義感から行った行為であったとしても、他人への攻撃ですから、許されることではありません。
 〈寛容〉を忘れた社会は、とても住みにくい社会です。
 小さな正義感から〈寛容〉を忘れてしまうことのないようにしたいものです。

 今回、本学において1名の学生が新型コロナウイルスに感染しました。
 新型コロナウイルス感染が他の学生や教職員に及ぼす影響は大きなものがあります。
 しかし、当該学生を責めるような行為は絶対にしないでください。

 どんなに注意をしていても感染することがありますし、ちょっとした注意不足で感染することもあります。
 いつ自分自身が感染するかもわからないのですから、感染した人を責めないでください。

 そして、この機会に自分自身の〈寛容〉を高める努力をしてください。

 皆さんは医療従事者を目指しています。
 医療従事者は、自らの不注意で病気になったり、怪我をしたりした人を小さな正義感から攻撃することはありません。
 自らの不注意で病気になったり、怪我をしたりした人であっても、そうでない人と同様に親身に治療をします。
 小さな正義感を持ち出して患者さんを責めることは、絶対にしません。

 医療従事者を目指す皆さんには、自身の〈寛容〉を高め、感染者となった学生さんの苦しみに寄り添ってほしいと思います。

■■━━━━━━━━━━━━━━━━
     〈自由〉について
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◆「劇場クラスター」における〈自由〉について

 「劇場クラスター」の報道の1つに、次のようなものがありました。

「 新型コロナウイルスの感染者が相次いでいる東京・新宿で行われた舞台を観覧した女性看護師の感染が確認され、勤務していた病院の新生児集中治療室などにいた新生児11人が濃厚接触者となりました。
 感染が確認されたのは市立川崎病院に勤務する40代の女性看護師で、クラスターが確認された新宿での舞台を7月1日から5日にかけ、あわせて5回観覧していたということです。
 女性看護師は、高度な治療が必要な新生児が入院するNICU(=新生児集中治療室)などで勤務していて、新生児11人が濃厚接触者となりました。
 川崎病院は、NICUなどへの新規入院をしばらくの間中止するとしています。 」

 NICUに勤務する看護師の舞台を観覧する〈自由〉について、皆さんはどう考えますか。

 看護師にも舞台を観覧する〈自由〉があることは確かです。
 しかし、コロナ禍が蔓延している現状の中で、この自由の行使は適切だったでしょうか。

 結果的に新生児11人が濃厚接触者となってしまった点からみると、適切であったとは言えないでしょう。

 では、市立川崎病院は在職する職員に舞台の観覧等を禁止すれば良かったでしょうか。
 自分で自分を律することができない人は、他者が規則で律するしかありませんが、何もかも規則で縛るのは息苦しくてたまりませんね。

 コロナ禍が蔓延している現状ですから、自分で観覧する〈自由〉を行使しないと決める、ということが望ましいと私は考えますが、皆さんはどう考えますか。

◆アルバイトをする〈自由〉について

 続いて、アルバイトをする〈自由〉について考えてみましょう。

 学業とアルバイトの両立は、昔から大きな課題になっています。
 しかし、コロナ禍の現在、新たな観点からも大きな課題となっています。

 昔からの課題は、アルバイトをする〈自由〉が自分の学業をおろそかにしてしまうという「自分の自由」の範囲内の課題でした。
 現在の課題は、 アルバイトをする〈自由〉が他者の学業を制限するという「他者の自由」に関わる課題になっているのです。

 アルバイト先で新型コロナウィルスに感染したり、濃厚接触者になってしまうと、自分自身が出席停止になったり、実習に出られなくなるだけではなく、自分と学内で接触した学生や教職員も自宅待機になったり、実習が中止になったりします。
 自分の〈自由〉が他者の〈自由〉を奪ってしまうのです。

 この問題にどう対処すれば良いでしょうか。
 大学が規則で学生のアルバイトの〈自由〉を縛れば良いでしょうか。
 それとも、アルバイトは学生の〈自由〉のままで良いでしょうか。
 皆さんはどう考えますか。

◆内面規律と〈自由〉について

 ところで、中学校や高校には校則がありますが、小学校や大学には校則はありません。
 なぜでしょうか。

 小学生は、先生や親の言うことを素直に受け入れるので、校則として明文化した規則は必要としません。
 大学生は、規則で縛らなくても自分で判断して適切に振る舞えるはずですので、大学には校則がありません。つまり、大学生は自分で決めた規律(内面規律)を守ることができると見なされているのです。
 中高生は、自分で決めた規律(内面規律)を守ることが十分にはできておらず、「他人から規律を与えられない自由」を得る過程にいます。この「他人から規律を与えられない自由」を得る過程で、校則が必要とされているのです。

 中高の先生は、校則という外から規律(外面規律)を手段として用い、生徒たちに自分で自分を律する内面規律を育てようとしています。
 中高の先生にとっては、この「内面規律の育成」が生徒指導上の最も大きな課題であり、最も苦労をしていることでもあるのです。

 最近、法律や規則に定められていなければ、何をしてもよいと考える人が増えているような気がします。外面規律には従うが、内面規律は持たないという、自分で判断できない人たちです。
 この人たちは、「他人から規律を与えられない自由」を放棄しているのです。
 内面規律を持たない人が増えれば、外面規律を増やさざるを得なくなりますので、細かなことまで法律や規則で縛られる「管理社会」になってしまいます。

 皆さんには、外面規律で細かく縛られなければ行動できない人ではなく、内面規律で状況に合わせて適切に判断して行動できる人であってほしいと思います。


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