はがきのおくりもの

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大学導入論の講義録

2020年06月03日 | とうきび大学物語2019~

 木瀬です。お久しぶりです。

 皆さん、新型コロナウィルス感染症が猛威を振るっていますが、いかがお過ごしですか?

 奥井が大学一年生向けにオンライン授業を行ったそうです。そのときの講義録を手に入れましたので、ご紹介します。

 

   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 大学導入論、スタディスキルセミナーの第1回授業を担当する学長の奥井です。よろしくお願いします。

  皆さんは医療従事者になることを志し、とうきび大学に入学しました。
 楽しい大学生活や充実した大学生活をを夢見ていたことと思います。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大し、大学構内に入ることもできず、不安でいっぱいでしょう。

◆新型コロナウイルス感染拡大との遭遇から何を学ぶか?

 最大の不安は、新型コロナウイルスでしょう。
 本学では緊急事態宣言に伴い、大学の授業開始を5月8日まで遅らせました。しかし、未だに緊急事態宣言は解除されません。そこで、本学では学生の皆さんの学修を守るため、遠隔授業を本格的に開始することにしました。この授業も遠隔授業の一つです。

 新型コロナウイルスとの戦いが繰り広げられていますが、大学における新型コロナウイルスとの戦いとは何でしょうか。
 それは、「感染拡大防止の戦い」かつ「学生の皆さんの学修を守る戦い」です。
 この戦いは教職員だけが戦うものではありません。学生の皆さんも一緒に戦ってもらわなくてはなりません。
 皆さんはどう戦いますか?

 新型コロナウイルス感染拡大という事態に遭遇してしまった、皆さんも私たちも大変なピンチに直面しています。
 世界の国々では「ロックダウン」を行い、都市を封鎖し、外出禁止を厳格に課しています。日本では都市封鎖はされていませんが、緊急事態宣言が出され、不要不急の外出をしないよう要請されています。
 そうした中、若者がオーバーシュート(爆発的増加)の原因となる恐れが大きいとして、若者の自覚を求める声が高まっています。私は若者だけが原因とは思いませんが…。
 皆さんは新型コロナウイルス対策の注意事項は知っていますね。知っているだけでなく、皆さんはしっかりと実行してくれていると思います。何しろ、医療従事者になろうとしている皆さんですから。

 では、こうしたピンチのとき、どう行動したらよいでしょうか。
 「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、どうやってピンチをチャンスにしたらよいでしょうか。
 ピンチをチャンスにするためのヒントとして、昔話「わらしべ長者」を用いたお話をしましょう。これは昔、私が高校生に語ったお話です。

 「わらしべ長者」の話をします。わらしべとはワラのことです。「わらしべ長者」とはこんなお話です。

 昔、一人の貧乏な人がいました。観音様に願をかけたところ、「初めに触ったものを、大事に持って旅に出なさい」とのお告げをもらいます。男は観音堂から出たところ、石につまずいて転び、1本のわらしべをつかみます。
 男がわらしべを持って歩いていくと、大きなアブがまとわりつくので、アブを捕まえてわらしべの先に結び付けます。すると、大泣きしていた男の子がアブが結び付けられたわらしべを欲しいと言います。わらしべは観音様からいただいた大事なものでしたが、わらしべを男の子に譲ります。するとお礼に蜜柑を3つもらいます。
 さらに歩くと、喉の渇きに苦しんでいる商人が蜜柑を欲しがるので、蜜柑を譲ると、上等な反物をお礼にもらいます。さらに、急病で倒れた馬と反物を交換したところ、馬が元気になります。さらに、旅に出る人が、馬を借りる代わりに、3年たっても戻らなかったら屋敷を譲ると言われます。田畑を耕しながら3年、5年と待ちますが、屋敷の主人は戻らず、男は屋敷の主人となり、裕福な暮らしを手に入れました。

 「わらしべ長者」の話を、単に運のいい人のお話と読むのも、観音様を信じたお陰であると読むのも、単純すぎてあまり面白くありません。そこで、「わらしべ長者」の話を人が成長する話と読んでみることにしました。

 「わらしべ長者」の話は、男が石につまずいて転ぶところから始まります。ここが大事です。転ぶ、すなわち失敗することが成長の始まりになります。
 1つ目の学びは、「失敗したときつかんだものを大事にせよ」です。

 「わらしべ長者」の男がつかんだものは、わらという価値があるかどうかわからないものです。しかし、男はわらしべを観音様からいただいたものとして大事にします。
 皆さんも失敗したときつかんだものを、それが大したものと思えなくても大事にしてください。例えば、試験ができなくて「もう少し勉強しておけばよかったな」と思ったら、「もう少し勉強しておけばよかった」と思った気持ちを大事にしてください。1学期に欠席が多くて欠点を取ったとき「もう少し頑張って学校に来ればよかった」と思ったら、そのとき思った「学校を休まないことにしよう」という気持ちを大事にしてください。

 2つ目の学びは、「大事にしているものを人のために与えなさい」です。
 男は、大事にしていたわらしべを子どもにあげてしまいます。蜜柑も反物も馬も先に与えてしまいます。見返りがあるから差し上げたのではなく、差し上げたところ、お礼をもらうのです。ここが大事です。差し上げることによって、新たな出会いが生まれます。
 毎日少しずつ勉強することによって得たものを活かして、それを人に提供する。提供できるものをより価値のあるものにしようと、自分の技術なり、知識なりを磨く。それをまた人に提供する。そうした繰り返しのなかで成長しますし、よりすばらしいものや人と出会います。

 3つ目の学びは、「出会いを大事にしなさい」です。
 男は、様々なものや人との出会ったとき、素っ気ない態度や欲張りな態度を取りません。絶えず出会いを大切にしているようです。
 幸運の女神は後ろ髪がないと言います。後になってからあのときの出会いを大事にしておけばよかったと思っても、後の祭りです。「わらしべ長者」の男は、どの出会いも軽く扱わず誠実に対応しています。
 いままで出会いを大事にしてこなかったし、すぐに出会いを大事にできるようにはならない、と思うかもしれません。しかし、大丈夫です。出会いやチャンスは100万回あります。少しずつ出会いやチャンスを大事にできるようになればいいのです。

 新型コロナウイルス感染拡大というピンチに遭遇しているあなたにとって
1.このピンチの中で、つかんだものは何ですか?
2.このピンチの中で、大事にしているものは何ですか?
3.このピンチの中で、どんな出会いがありましたか?

 これらを考えながら、問1を考えてみましょう。

問1 「新型コロナウイルス感染拡大との遭遇」から、あなたは何を学ぶか?

 問1に対するあなたの考えをレポートに記入してください。

◆医療従事者になろうとするあなたの目的は何か?

 次のテーマに移ります。第2の不安、目的と目標についてです。

 その前に、本学のルーツや建学の精神、教育理念を確認しておきましょう。
 とうきび大学のルーツは、1950年に開設された(財)とうきびマッサージ師養成所です。ルーツは70年前なのですが、本学は設立9年目の若い大学です。皆さんが本学の歴史を創っていくことになります。
 本学の建学の精神は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」、教育理念は「仁愛・知識・技術」です。本学の4年間で、知識・技術をしっかりと身につけ、人に優しい仁愛の心を育てていってください。

 人工知能(AI)が発達し、人間が行う仕事をAIに奪われてしまうのではないかという言説が飛び交っていますが、「人に優しく、社会に貢献できる人材」である看護師・助産師や理学療法士、作業療法士は、今後も必要とされ続けるでしょう。
 ですから、看護師や理学療法士、作業療法士を目指して本学に入学した皆さんは、とてもよい選択をしたと言えます。

 しかし、看護師や理学療法士、作業療法士になるということは、目標ではあるのですが、目的にはなりません。
 看護師や理学療法士、作業療法士になるという目標ははっきりしているけれど、何のためになるかという目的がわからないという人はいませんか。
 目的がわからないと、目標を達成したときに困ります。
 あなたの人生の目的は何ですか?
 あなたは何を大切にして生きていきますか?
 看護師や理学療法士、作業療法士になって、どんな人生を歩みたいと思いますか?
 大学に入学したばかりの今、改めて考えてみましょう。

 目的と目標を持つことはとても大事なことです。
 そのことを昔話「ウサギとカメ」を用いて、高校生に話したことがありますので、紹介します。

 皆さんは、「ウサギとカメ」の童話を知っているでしょう。あらすじはこんな話です。
 ウサギは足が速いのが自慢で、歩みののろいカメに「世界のうちにお前ほど歩みののろい者はない。どうしてそんなにのろいのか」とからかいます。バカにされたカメは「それなら、向こうの小山のふもとまでかけっこで競争しよう」とウサギに競争を挑みました。
 スタートすると、案の定、ウサギはぐんぐんリードを広げ、カメの姿はすっかり見えなくなりました。そこで、ウサギは「どんなにカメが急いでも晩までかかるだろう」と安心して一休みして、居眠りしまいます。その間に、カメは着実に歩みを進め、ウサギがはっと目をさました時には、カメは山のふもとのゴールに到着していました。
 そして、やっと到着したウサギに、カメは「あんまり遅いウサギさん、さっきの自慢はどうしたの」とからかいました。

 というお話です。カメがウサギに勝つという信じられない話ですが、昔から、なぜ、カメが勝ち目のない競争をしたのか、私はとても不思議に思っていました。
 でも、ある人に教わってわかりました。
 カメは、「ウサギはウサギ、自分は自分。ウサギとの競争は考えないで、マイペースでとにかく山のふもとのゴールを目指そう。」と考えたのだそうです。
 カメの目標は山のふもとのゴール、目的は自分との戦いに勝つことでした。
 カメは、目標を定めて、全力をあげて必ずやり遂げることを繰り返すことで、夢を実現しようとしていたのです。

 学年の始まりですから、皆さんも、今年の目標をはっきり立てて挑戦してみましょう。例えば、1年間遅刻をしない、学校や部活動を休まない、約束した時間を守る、など何でもいいでしょう。1つ、今年の目標を立て、やり遂げてみてください。
 大事なのは、「目標を定めたら、全力をあげて、必ずやり遂げよ」ということです。カレンダーに、できた日には○、できなかった日には×をつけることにすれば、結構長続きします。ぜひやってみてください。
 カメのように、目標を定め、全力をあげてやり遂げてみると、夢は思い続ければ必ず叶う、ということが実感としてわかるようになります。
 だまされたと思って、目標を定めて、全力でやり遂げてみてください。

 ウサギの目的と目標は何であったと思いますか。
 ウサギの目的は「カメをからかうこと」のようですが、しっかりとした目的を持っていたとは思えません。また、目標はなかったように思えます。目的と目標を持たなかったから、ウサギは競争の途中で居眠りしてしまったのでしょう。
 皆さんは目的と目標をしっかりと持っていますか。

 目的と目標を持たないとウサギのようになってしまいますよ、と大学生の皆さんに言うつもりはありません。それでは、あまりにも子供扱いですから。
 そこで、競争に負けたウサギのその後をお話にしてみました。

 競争に負けたウサギはその後、どうしたでしょうか。
 「カメに負けたウサギ」というレッテルを貼られたウサギは、みんなからバカにされました。
 そこで、ウサギは「失敗から学んで、見返してやる」と決心し、目標と目的を持たなかった自分を反省します。
 しかし、そう簡単には目標と目的を持てるようにはなりません。カメのようにコツコツと努力することもできません。といって、もう一度カメとかけっこをして勝っても、「カメに負けたウサギ」というレッテルは消えません。
 ウサギは悩み苦しみました。けれども、ウサギはウサギのままでした。
 学校の試験勉強は、前の晩だけの一夜漬けです。仕事に就いた後も、明日やれる仕事は明日に回して、今日は遊んでしまいます。目的や目標を持つことができず、今を楽しむことをやめられませんでした。
 そういうウサギでしたが、明日に回すと間に合わない仕事は、徹夜してでも終わらせました。集中力と瞬発力だけがウサギの取り柄でした。
 やがてウサギは歳をとっていきました。だんだん体力がなくなり、徹夜ができなくなりました。明日やれる仕事でも、今日からやり始めないと終わらなくなってしまいました。
 困ったウサギは、少しだけ生き方を変えることにしました。短期間の小さな目的と目標だけは立てることにしました。将来の大きな目的や目標は考えないままでしたが、明日と明後日のことくらいは考えることにしました。
 それでも、今を楽しむという生き方は変えられないので、ウサギは目の前のことを短期間でやりとげることに集中し、今やっていることを楽しむことにしました。
 すると、ウサギは悩まなくなりました。これまでは将来のことが気になって、今を十分に楽しめないときがありましたが、目の前のことに集中することにしたら、心おきなく今この瞬間を楽しめるようになりました。将来のことで悩まなくなったら、昔の失敗を思い出してあれこれ思い煩うこともなくなりました。
 ウサギは今、会社でそれなりの役職に就いています。若手社員にはウサギもカメもいます。どちらのよさもわかる上司となって、皆から慕われているようです。
 ウサギはウサギのままでしたが、ウサギは失敗から学んだでしょうか。皆さんはどう思いますか。

 カメのように目的と目標をはっきり持つことはとても大事なことです。
 どんな看護師や理学療法士、作業療法士になりたいと思いますか。医療従事者になってからの目的や目標は何ですか。何を大切にしたいと思いますか。守りたいものがありますか。
 あなたはなぜ、看護師や理学療法士、作業療法士になろうと決心したのですか。
 大学に入学したばかりの今だからこそ、今の初心を心に刻んでほしいものです。

 このようにお話ししてくると、「自分はどうしてもカメになれない。ウサギタイプなんだ」と、目的を持てない自分に自信を失ったり、「目的なんていらない」と反抗したくなったりする人が出てきます。
 当然のことです。ウサギはウサギのままでいいのです。
 ただし、短期間の目的と目標を持つことはかなり有効ですので、当面の目的と目標については、はっきりとさせたほうがいいですよ。
 例えば、皆さんは理学療法士や作業療法士になるという目標を持っています。その目標を達成したときには、次の目標が必要になります。また、目標に向かっているときにスランプに陥ったり、挫折したりすることがあるかもしれません。そのとき、目的がはっきりしていれば、どうすればよいかを判断できます。

 長期的な目的と目標については、気が変わることもありますので、ウサギのように深く考えないのもありでしょう。もちろん、アリのように長期的な目的と目標に向かってコツコツと進んでいくこともありです。

 では、ここで問2に挑戦することにしましょう。本学の目的は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」ですが、あなたの目的は何ですか。

問2 看護師や理学療法士、作業療法士になろうとするあなたの目的は何か?

 問2に対するあなたの考えをレポートに記入してください。

◆今、不安に感じていることは何か?

 不安3は、「目的や目標を達成するためにどうすればよいか?」という不安です。

 この不安について考えるとき、高校と大学の違いを知っておく必要があります。
 高校では「学習」という言葉を使い、大学では「学修」という言葉も使います。
 「学習」の「習」は、教えを受けて学ぶという意味です。
 「学修」の「修」は、身につけて正しく行うという意味です。

 この違いを皆さんはどう理解しますか。
 身につけて正しく行えるようになることが、医療従事者になるためにはどうしても必要です。そのための「学修」を皆さんは本学で行うのです。

 現在の大学教育改革の流れも確認しておきましょう。
 教える側を中心としたTeachingから、学修者を中心としたLearningへと変えていこうということが、大学教育改革の潮流です。
 これはまさしく「学修」です。学生の皆さんは、身につけて正しく行えるようになることが求められているのです。
 大学には必要なことを学生の皆さんがきちんと身につけて正しく行えるように支援する責任があります。
 そして、学生の皆さんは必要なことをきちんと身につけて正しく行えるようになったことを示す責任があるのです。
 これが、現在の大学教育改革の流れです。このことは忘れずにいてください。

 こういう話を聞くと、不安が増えてしまうかもしれませんね。
 「今現在、何を目的・目標に学んでいるのかが見えてこない」「どうしたら身につくんだろうか」「どこまで身についたか、わからない」など…。

 不安になっているのは、あなただけではありません。みんな不安を感じているのです。不安を共有すれば、不安は安心に変わるかもしれません。

 ということで、次の問3の回答を見せ合い、共有する授業を考えていたのですが、できなくなりました。後で、皆さんのレポートを集計して、みんながどんな不安を感じているかを共有したいと思いますので、少々お待ちください。

問3 今、不安に感じていることは何か?

 問3に対するあなたの思いをレポートに記入してください。

◆不安や課題、失敗に直面したとき、どうするか?

 大学は高校より自由度が大きいところです。
 自由にできるということはとても素晴らしいことなのですが、困ったことに、「自由度が大きくなると、不安になる人が増える」のです。
 大学生活を楽しむためにも、充実したものにするためにも、不安に強い人になりましょう。ポジティブな人になりましょう。

 自由にやってもいいことが増えれば、やった責任は自分で取らなければなりません。
 そうすると、失敗したらどうしようと不安になります。
 また、自分にできるのだろうかと自分への不安も高まります。
 他者と一緒にやることであれば、他の人とうまくやれるだろうかと他者への不安が高まります。
 さらに、やったことで将来がどう変わるのだろうかと未来への不安も高まるかもしれません。

 あなたは、そうした様々な不安から逃げたいと思ってしまうほうですか。それとも、不安を楽しんでしまうほうですか。

 物事にはすべて正と負の両面があります。不安についても、負の側面だけでなく、正の面もあるのです。
 失敗への不安は、成功を生む源です。
 自己への不安は、向上心の源になります。
 他者への不安は、社会性を育む源です。
 未来への不安は、将来計画を作る源になるのです。
 このように、「不安」はとても大事な感情なのです。
 不安を感じている自分を認めてあげてください。そうすると、不安が様々なものを生み、育む源であることに気づくことができるようになります。

 目の前に課題があったとき、あなたはその課題をさっさとやってしまうほうですか?それとも、なかなか始められないほうですか?
 できない言い訳ばかり考えてしまって、課題に取り組むことを先延ばしにしていませんか?
 先延ばしにしても課題は解決しません。できるところから始めることにしましょう。「案ずるより産むが易し」です。始めてみたら、意外とそう難しくないかもしれません。また、少しだけ前に進めるかもしれません。一歩前に進んでしまいましょう。大抵のことは何とかなります。
 楽に始めるための工夫として、ブレーンストーミングやKJ法がお勧めです。ここでは詳しく説明しませんので、自分で調べて挑戦してみてください。

 「やればできる!」と言う人がいますが、「やらなきゃできない!」のが現実です。「やればできる」はやらない言い訳でしかありません。「やらなきゃできない」と勇気を振り絞って一歩踏み出してみましょう。
 やってみて直接体験したことが、成功体験につながるのです。
 実際にやってしまった人をお手本ににしたり、ロールモデルを見つけてもいいでしょう。
 仲間や先生、指導者、親からの励ましで、一歩前に踏み出すことができるかもしれません。だから、仲間を励ましましょう。
 前に踏み出すには、心身の状態を前向きの気分に持って行ったり、高揚感を高めることも必要です。いろいろと工夫してみましょう。

 このように「勇気を振り絞って一歩前に踏み出そう」とお話ししても、失敗を恐れてなかなか始められない人がいます。失敗したくない気持ちはよくわかります。そういう人のためにも、失敗というものについて、少しだけ学んでみましょう。

 実は、失敗には種類があるのです。
 避けられる失敗と避けがたい失敗、成長に役立つ失敗などです。
 避けられる失敗は準備不足が原因で起こることが多いので、不安になる必要はありません。しっかりと準備をすればいいのです。
 避けがたい失敗はどれだけ準備しても起こってしまう失敗なので、これはもうあきらめるしかありません。クヨクヨしないことです。周囲の人も避けがたい失敗であることを理解するので、クヨクヨせず顔を上げて前向きに頑張っていれば、あなたを応援してくれます。ピンチがチャンスになるのです。
 成長に役立つ失敗は、試行錯誤から起こる失敗です。失敗から学んでいけば、成功につながる失敗です。
 いたずらに失敗を恐れるのではなく、避けられる失敗を避ける努力をし、失敗してしまったら、ピンチをチャンスにすることに全力を尽くせばいいのです。

 ここで、思考実験をします。
 皆さんはこれからプレゼンテーションを行うことになりました。皆さんを3つのグループに分けます。3つのグループには、指導者からそれぞれにアドバイスが出ます。
 1つ目のグループには、「完璧にやりなさい」というアドバイスがありました。
 2つ目のグループには、「失敗しても大丈夫」というアドバイスがありました。
 3つ目のグループには、「失敗して皆を笑わせて」というアドバイスがありました。
 どのグループが一番よいプレゼンテーションをしたでしょうか。
 答えは、3つ目のグループです。自己評価も他社評価も3つ目のグループが最も高かったのです。
 失敗して皆を笑わせようと考えてプレゼンテーションを行ったグループが一番よい評価を得たのです。
 失敗してもいいのです。失敗したほうがいいのです。気を楽にして一歩前に進んでしまいましょう。

 不安を感じたとき、どうしますか?
 課題が目の前にあるとき、どうしますか?
 失敗したとき、どうしますか?
 前向きの気分を、どう育てますか?

 これらの問いをしっかりと受け止め、考え、行動していきましょう。
 最後の問いです。

問4 不安や課題、失敗に直面したとき、あなたならどうするか?

 問4に対するあなたの考えをレポートに記入してください。

 最後にもう一度、本学の建学の精神を復習しましょう。
 本学の建学の精神は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」です。皆さんはぜひ、人に優しく、社会に貢献できる人になってください。
 仲間と創意工夫を重ね、教育理念「仁愛・知識・技術」を深めていってください。

 未来のあなたは、今のあなたの行動が創ります。
 苦しい事態に直面している今だからこそ、不安を認め、共有し、不安を糧にして自分を成長させていきましょう。私たち教職員は全力で皆さんを支援します。

 最後に、問5です。

問5 この授業で最も学んだことは何ですか?

 問5に対するあなたの回答をレポートに記入してください。

 以上で、大学導入論第1回の講義を修了します。


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