マルハニチロホールディングス(本社・東京)の子会社アクリフーズの群馬工場(群馬県大泉町)で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された事件で、群馬県警は25日、この工場の契約社員、阿部利樹容疑者(49)=同県大泉町=を偽計業務妨害の疑いで逮捕し、発表した。

 県警の説明では、阿部容疑者は「覚えていない」などと話し、容疑を否認しているという。

 発表によると、阿部容疑者の逮捕容疑は、群馬工場内で昨年10月3~7日に4回、冷凍食品計4袋にマラチオンを混入し、冷凍食品を回収させたり、操業を停止させたりして、工場の業務を妨害したというもの。

 4袋は、「みなさまのお墨付きミックスピザ2枚入り」(10月3日製造)、「チーズがのび~る!チキンナゲット5個入り」(同4日)、「チーズが のび~る!グラタンコロ!」(同5日)、「とろ~りコーンクリームコロッケ」(同7日)で、検体1グラムあたり1マイクログラム未満~430マイクログラ ムのマラチオンが検出された。製造日が阿部容疑者の勤務日と一致したという。

 阿部容疑者は2005年10月から契約社員として働き、ピザの製造ラインで、生地を練ったり焼いたりする作業をしていた。ピザ、フライ、グラタン、コロッケは別々の部屋で加工、冷凍されており、各商品の製造ラインが1カ所に集まる「包装室」が農薬の混入場所と疑われていたが、阿部容疑者は加工段階の担当だった。

 県警は今月10日にアクリ社から業務妨害容疑の被害届を受理し、従業員の任意聴取を本格化。阿部容疑者からも話を聴いたが、14日の勤務後に行方不明になっていた。家族から捜索願を受けて24日夜、埼玉県警が同県幸手市の駐車場で阿部容疑者を発見した。群馬県警は今後、混入の具体的な場所や方法、動機などを調べるという。

 マラチオンの混入は昨年12月29日、両社が公表して明るみに出た。昨年11月以降、石油や機械油のような臭いがするという苦情が寄せられたという。残留農薬基準値の150万倍に相当する1万5千ppmのマラチオンが検出されたコロッケもあり、同工場で製造された94品目約640万袋が自主回収の対象となった。21日までに約549万袋を回収している。

 マルハ社広報によると、群馬工場の従業員は昨年12月1日現在で294人。内訳は正社員64人、契約社員194人、パート11人、派遣社員25人という。

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 〈マラチオン〉 野菜や果物につくアブラムシなどの駆除に使われる有機リン系の農薬。「マラソン」 の名で商品化され、粉と液体のタイプがある。毒物や劇物に指定されていないため、ホームセンターなどで数百円単位から誰でも買える。液体タイプは、溶剤に 由来する強い異臭がする。1日に体重1キロあたり2ミリグラム以上を摂取すると、嘔吐(おうと)や下痢などの急性症状が出る可能性がある。