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平成恐慌の序幕(1)<本山美彦>-3

2009-04-11 | 時事問題
二 投資銀行の消滅

既述のように、〇八年三月末、ベア・スターンズが、米金融当局の指示によって、J・P・モルガンン・チェースによって救済合併された。

そうした事情もあって、リーマンが〇八年九月一五日、米連邦破産法十一条の適用を申請したとき、金融界はリーマンも当然救済されるものと思い込んでいた。しかし、ポールソン(Henry 'Hank' Merritt Paulson)米財務長官(United States Secretary of the Treasury)は、救済の意思はないと突っぱねた。

これで、金融機関はパニックに陥った。次に救済されない銀行はどこか、という疑心暗鬼に駆られたのである。金融機関の相互間で財務状況への相互不信が高まった。銀行間取引での資金のやり取りが急速に縮小した。九月一五日、ポールソン長官の発言が伝えられるや否や、ドルの調達金利は四倍以上に急騰した。

慌てた金融当局は、翌日の一六日、AIG(American International Group, Inc.)を救済するという決定をした。金融機関の見殺しという政策を中止したのである。しかし、金融機関の混乱は収まらず、欧州の金融機関にも飛び火した。先進国から流れ込んでいた途上国の投資マネーの逆流が生じた。アイスランド、ハンガリー、アルゼンチンなどがそのために通貨危機に追い込まれた。リーマン・ショックこそが、金融不安を本格的な金融危機に現実化させたのである。

信用は途絶した。企業買収資金、自動車ローン供与、クレジット・カード・ローン、等々、あらゆるローンがしぼんでしまった。

自己資金だけでなく、その数十倍の借入金で投資することを「レバレッジ(leverage)の投資」というが、投資銀行の投資行動とはこのレバリッジを過信するものであった。レバレッジとは梃子の意味である。投資銀行は、リーマンと同じ軌跡をたどって破綻の危機に瀕した。投資銀行第三位のメリルリンチ(Merrill Lynch & Co., Inc.)は、米大手商業銀行のバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)によって買収された。一位のゴールドマンサックス(Goldman Sachs)と、二位のモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は、銀行持株会社に模様替えし、米国において、投資銀行は消滅した。

リーマン破綻から〇八年末までの軌跡を整理しておこう。

〇八年九月一五日、リーマン破綻。
九月一六日、FRB(米連邦準備理事会、Federal Reserve Board)がAIGに最大八五〇億ドルの特別融資を発表。AIGは事実上国有化された。
九月一八日、FRB、ECB(欧州中央銀行、European Central Bank)、日銀が市場へのドル供給を発表。
九月二九日、米下院が金融安定化法案を否決。株価暴落。
一〇月 三日、米金融安定化法案が成立。
一〇月一三日、欧州各国が金融機関への公的資金注入を発表。
一〇月一四日、米、大手九金融機関への公的資金注入を発表。
一〇月二九日、FRBが政策金利を〇・五%下げ、年一・〇%に。
一〇月三一日、日銀が政策金利を〇・二%下げ年〇・三%に。
一一月 六日、ECBなども利下げを決定。
一一月一四・一五日、G二〇(5)、ワシントンで金融サミット。
一一月二三日、米財務省など、米金融大手シティグループ(Citigroup)の追加支援策を発表。
一二月一二日、麻生首相、追加景気対策を発表。改正金融危機強化法が成立。
一二月一六日、FRBが、政策金利を年〇~〇・二五%に引き下げ。事実上のゼロ金利政策と量的緩和を開始。
一二月一九日、日銀が政策金利を〇・二%引き下げ、年〇・一%に。CP(6)の買い切り方針なども表明し、事実上の量的緩和に踏み込む。
同日、米政府、一七四億ドルの大手自動車会社救済策を発表。
(「〇八金融危機の軌跡1」、『讀賣新聞』二〇〇八年一二月二六日付)。




(1) ホットマネーとは、短期的に国際金融市場を駆け回る資金のこと。ある国が経済危機に陥った場合、ホットマネーは短期間のうちにいっせいにその国から退避する。情報化社会においては情報の伝達速度、資金の移動手段どれもが非常に速くなっており、ホットマネーの金融市場へ与える影響は大きいものがある。 http://www.1keizai.net/fx/kaigai/000262.html

(2) WTIは、米国テキサス州西部とニューメキシコ州南東部で産出する低硫黄の軽質原油のことをいう。WTIは、硫黄分が少ないため、ガソリンを多く取り出せるのが特徴。WTIの原油先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引され、その取引価格は原油価格の国際的指標となっている。なお、北米のWTI、欧州のブレント(Brent Crude)、アジアのドバイ(Dubai Crudeが世界の三大原油指標。

WTIは、世界的な原油価格の指標にとどまらず、世界経済の動きを占う重要な経済指標となっている。WTIの原油先物は、大手石油会社・精製会社・卸売会社だけでなく、投資ファンドなど石油業界と関係ない投資家も幅広く取引に参加している。参加者が多様で売買が成立しやすい点で人気を集め、世界で圧倒的な取引規模の原油先物となっている。

ちなみに、原油の単位であるバレル(barrel)は、英語で「樽」を意味する。石油をシェリー酒の空樽に入れて運んだことから、原油や石油製品の国際単位となった。一バレルは約一五九リットル。http://www.ifinance.ne.jp/glossary/market/mar037.html

ブレント原油は、主に北海にあるブレント油田から採鉱される硫黄分の少ない軽質油である。 ブレント油田の他にノルウェーのオセバーグ油田やイギリスのフォーティーズ油田から採れる原油も含まれるが、こういった原油を混合(ブレンド、blend)しているからではなく北海のブレント(Brent)油田から主に採れるためブレント原油という。ブレントという名前の由来は岩層区分のBroom, Rannoch, Etieve, Ness and Tarbatから取られた(Wikipediaより)。

ドバイ原油は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで産出される原油のこと。産出量自体はそれほど多くないが、ほぼ全量がスポット取引(長期契約ではなく、短期での取引)であり、その時々の需給関係や国際的な思惑などで、価格が大きく変動する。そのためオマーン原油と共に、中東産の原油価格の基準となっており、さらにはアジアにおける原油相場の指標銘柄にもなっている。

日本の場合、原油のほぼ全てを輸入に頼っているうえに、その大半を中東産の原油に依存している。また、ドバイ原油とオーマン原油のスポット価格を基準にした市場連動価格方式で価格を決定している。そのため、オマーン(Oman)原油にも影響を与えるドバイ原油の価格に大きな影響を受ける。ちなみに、ドバイ原油価格の発表はプラッツ (Platts)社がおこなっている。

プラッツは、エネルギー関連情報の主要な配信社。一世紀以上に渡ってビジネス情報を配信しており、現在はマグロウヒル社の一部門となっている。主な配信は産業ニュースと各商品市場の価格指標であり、原油、天然ガス、電気、原子力、石炭、石油化学、金属などの価格を発表している。アジアの原油市場ではこのプラッツ社発表のドバイ原油およびオマーン原油の価格が基準になっている。東京工業品取引所の中東産原油の先物価格はプラッツ社の指標に大きな影響を与えている(Wikipediaより)。

(3) ダウ平均株価(Dow Jones Industrial Average)は、米国の経済ニュース通信社であるダウ・ジョーンズ社が算出している米国の代表的な株価指数。日本では、「ダウ工業株三〇種平均(ダウ平均)」、「NYダウ」、「ニューヨーク平均株価」などと呼ばれている。工業以外の産業も含まれているのに、慣例的に「工業株三〇種平均株価」という。その構成銘柄は時代に合わせて入れ替えがおこなわれている。算出が始まって以来、現在まで継続して構成銘柄に残っている会社はゼネラル・エレクトリック(GE=General Electric)社のみである。〇八年九月二二日現在の三〇社は以下の通り(シンボルのアルファベット順、(No)シンボル、企業名、業種、採用日)。

 (01)AA、Alcoa Inc.、アルコア、アルミニウム、一九五九年六月一日。(02)AXP、American Express Co.、アメリカン・エキスプレス、金融、一九八二年八月三〇日。(03)BA、Boeing Co.、ボーイング、航空機、一九八七年三月一二日。(04)BAC、Bank of America Corp.、バンク・オブ・アメリカ、金融、二〇〇八年二月一九日 。(05)C、Citigroup Inc.、シティグループ、金融、一九九七年三月一七日。(06)CAT、Caterpillar Inc.、キャタピラー、重機、一九九一年五月六日。(07)CVX、Chevron Corp.、シェブロン、石油、二〇〇八年二月一九日。(08)DDE.I、du Pont de Nemours and Company、デュポン、化学、一九三五年一一月二〇日。(09)DIS、The Walt Disney Co.、ウォルト・ディズニー・カンパニー、娯楽・メディア、一九九一年五月六日。(10)GE、General Electric Co.、ゼネラル・エレクトリック、総合電機・金融、一九八六年五月二六日(最初に指定された)。(11)、GM、General Motors Corp.、ゼネラルモーターズ、自動車、一九二五年八月三一日。(12)HD、The Home Depot Inc.、ホームデポ、小売業、一九九九年一一月一日。(13)HPQ、Hewlett-Packard Co.、ヒューレット・パッカード、精密電機 一九九七年三月一七日。(14)IBM、International Business Machines Corp.、アイ・ビー・エム コンピューター、一九七九年六月二九日。(15)INTC、Intel Corp.、インテル、半導体、一九九九年一一月一日。(16)JNJ、Johnson & Johnson Inc.、ジョンソン・エンド・ジョンソン、医薬品、一九九七年三月一七日。(17)JPM、JP Morgan Chase and Co.、JPモルガン・チェース、金融、一九九一年五月六日。(18)KFT、Kraft Foods Inc.、クラフト・フーヅ、食品、二〇〇八年九月二二日。(19)KO、The Coca-Cola Co.、コカ・コーラ、飲料、一九八七年三月一二日。(20)MCD、McDonald's Corp.、マクドナルド、外食、一九八五年一〇月三〇日。(21)MMM、3M Company、スリーエム、化学、一九七六年八月九日。(22)MRK、Merck & Co.、メルク、医薬品、一九七九年六月二九日。(23)MSFT、Microsoft Corp.、マイクロソフト、ソフトウェア、一九九九年一一月一日。(24)PFE、Pfizer Inc.、ファイザー、医薬品、二〇〇四年四月八日。(25)PG、Procter & Gamble Co.、プロクター・アンド・ギャンブル (P&G)、医薬品、一九三二年五月二六日。(26)T、AT&T Inc.、エーティーアンドティー、通信、一九九九年一一月一日。(27)UTX、United Technologies Corp.、ユナイテッド・テクノロジーズ、航空宇宙・防衛、一九三九年三月一四日。(28)VZ、Verizon Communications Inc.、ベライゾン・コミュニケーションズ、通信、二〇〇四年四月八日。(29)WMT、Wal-Mart Stores Inc.、ウォルマート・ストアーズ、小売業、一九九七年三月一七日。(30)XOM、Exxon Mobil Corp.、エクソンモービル、石油、一九二八年一〇月一日。(Wikipediaより)。

(4) FTSE一〇〇種総合株価指数(Financial Times Stock Exchange 100 Index)はロンドン証券取引所(LSE=London Stock Exchange)における株価指数であり、欧州を代表する株価指数でもある。LSEに上場する銘柄のうち時価総額で上位一〇〇銘柄で構成されている時価総額加重平均型株価指数。なお、この一〇〇銘柄でLSEに上場する企業の時価総額の約八割を占めている。発表はLSEとフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)との合弁企業であるFTSEグループから発表されている。一九八四年一月三日の算出開始時を一〇〇〇としている。過去最高値は一九九九年一二月三〇日の六九五〇・六である(Wikipediaより)。

(5) 株価収益率(PER)=Price Earnings Ratio)は、株価を一株当たり当期純利益で割ったものである。時価総額を当期純利益で割って算出される。PERは日本の呼び方である。米国では、PERでなく、P/EとかPEと表記されている。株価収益率は、株主の側から見れば、「利益が全て配当に回された場合に何年で元本を回収できるか」という指標として見ることができる。企業の側から見れば、PERの逆数は、「株主からの出資をどれくらいの利回りで運用しているか」という指標と見ることができる。株価収益率には、決算により確定した純利益を元に算出される数値(前期実績PER)と、期末で予想される純利益を元に算出される数値(予想PER)がある。

株価収益率の標準値は一四~二〇の間が適正とされるが、当該企業の成長性に楽観的な場合は高PERまで買われ、将来に不透明感が高い場合は低PERで取引される。また石油や鉄鋼、海運など国際商品市況に業績が大きく影響をうける業種は、低PERで取引されることが多い。日本ではバブル景気が崩壊する一九九〇年代頃までは、四〇~六〇もの相当割高な株価で推移してきた。また新興市場では成長性を期待した取引が中心となることから、NASDAQでは六〇~八〇程度をコアとした株価収益率の推移が見られる。 

株価純資産倍率(PBR=Price of Book-value Ratio)もよく使われる指標である。企業の資産面から株価の状態を判断する指標である。このPBRという略称も日本のものであり、米国では、P/Bと表記するのが一般的である。PBRは、一株あたり純資産額に対する株価の倍率(状況)を測る指標である。一般にPMRが一倍であるとき、株価は解散価値と等しいとされ、それ以下だと割安株として扱われる。一倍以下の水準では会社が保有する純資産の額より株式時価総額のほうが安いことを意味しており、継続的に事業をおこなうより解散した方が株主の利益になる可能性がある。魅力的な事業・資産を持つにも関わらず低PBRで推移している企業は絶好の買収対象になる。PBRの計算の元となる純資産は、各会計時期(半期・四半期等)における決算で、すでに確定した数値が使用される。そのため当該企業の業績や資産内容に対して重大な懸念が発生している場合は、来期以降の純資産が減少する可能性があり、この場合はPBR一倍を大幅に下回る株価が形成されることがある。財務面で社債や長期借入金などの他人資本を中心に経営をおこなっている企業では、自己資本比率が小さく、PBRが高くなっている場合がある。連結会計をおこなう企業の場合、純資産には連結純資産と個別純資産があり、いずれの数値を元にを算定するかによってPBRの数値にズレがでる。

自己資本利益率(ROE=Return On Equity)という指標も重要なものの一つである。それは、株主資本(払込資本金と内部留保との和)に対する当期純利益の比率である。ROEという表記も日本国内でも用いられているものである。かつては株主資本利益率とも呼ばれていたが、〇六年五月の会社法制定とこれに前後する会計基準の改正において、「株主資本」と「自己資本」とが異なる値として明確に定義されたことで、現在では「自己資本利益率」が正確な呼称として位置づけられる。ある企業が、一年間の企業活動を通じて、「株主の投資額に比してどれだけ効率的に利益を獲得したか」、を判断するのに用いられる指標で、当期純利益を、前期及び当期の自己資本の平均値で除したものである。なお、分子として経常利益を使用する場合もある。

一株当たり当期純利益(EPS)と一株当たり純資産額(BPS)を用いても表現可能である(ROE=EPS÷ BPS)。自己資本について会社四季報では「株主持分」と表記されているので注意が必要である(Wikipediaより)。

(5) 「グループ・トゥエンティ」。二〇か国の財務相・中央銀行総裁会議。日、米、英、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スウェーデン、スイス、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ。

(6) CPとは、コマーシャル・ペーパー(Commercial Paper)のこと。短期の無担保約束手形。金額と満期日を特定して発行されるもの。譲渡が可能な証券の一種で、ほとんどのものは無記名式である。運転資金調達の手段としては譲渡性預金(CD=(negotiable)Certificate of Deposit)と類似している。CPでもCDであっても同様の利回りを生み出すことから資金コスト面では大差がない。一般的にコマーシャル・ペーパーは、譲渡性預金市場との競合を避けるため、償還期限が三〇日以内となっているものが多い。発行は割引方式となっており、金利分を額面から割り引いて販売される。発行体は、通常、優良企業に限定されている。http://www.finance-dictionay.com/2008/03/cp.html

本山美彦氏のブログ 「消された伝統の復権」から転載
http://blog.goo.ne.jp/motoyama_2006