■政府・与党が、北海道道州制特区推進法案の要綱素案をまとめた。
■素案は、「北海道道州制特別区域推進法案の基本的考え方(素案)」という形で示されている。
■概要は、次のとおり。
(1)基本理念
国と北海道との適切な役割分担及び相互連携の下、北海道の自主性・自立性が十分発揮され、住民の福祉の向上に資するよう総合的に実施する。
(2)国及び北海道の責務
国は、道州制特区を推進するため、国から北海道への事務の移譲及び北海道から市町村への事務が円滑に進むよう、必要な措置を講ずるよう努力。
北海道は、区域内の市町村の自主的な合併の推進、区域内の市町村への事務の移譲、行政の効率化等に努力。
(3)道州制特区推進計画の策定等
北海道は、道州制特区の具体的目標、達成状況に係る評価等の事項を定める道州制特区推進計画を関係市町村の意見を聴いた上で、作成・公表。
(4)事務処理等の特例措置
道州制特区の推進を図るため、国の地方支分部局が実施していつ次の事務を北海道に移譲。
①調理師養成施設の指定・監督
②国又は独立行政法人が開設する医療機関に係る公費負担医療等を行う指定医療機関の指定・監督
③鳥獣保護法に係る危険猟法(麻酔薬の使用)の許可)
④商工会議所関係の許認可等の一部
⑤直轄砂防事業の一部
⑥民有林の直轄治山事業の一部
⑦開発道路に係る直轄事業
※開発道路とは、道道のうち北海道開発のため特に必要と認めて指定した道路区間
⑧二級河川に係る直轄事業
(5)財政措置
⑤~⑧については、国が直轄事業で負担している額(国負担分を全額)を事項別交付金として交付。
(6)国の権限に属する事務の移譲等の要請
北海道知事は、関係市町村の意見を聴いた上、道議会の議決を経て、国に対し、道州制特区を推進するため国の権限に属する事務の移譲等を要請することができる。
(7)道州制特区推進本部の設置
道州制特区を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に内閣総理大臣を本部長とする道州制特区推進本部を設置
※ 北海道知事は、参与として本部会議で意見を述べることができる。
※ 3桁国道の移譲などは、大規模な職員の移動が予想されるので、道、市町村の行政改革の実施状況などを踏まえ、受入体制を十分考慮して検討。
(8)その他
⑦及び⑧の事務の移譲から5年後、この法律の施行の状況、地方行財政制度のあり方、国・北海道の経済・社会・財政状況等を勘案、この法律の規定について、(5)に定める財政措置のあり方を含め検討、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
《施行期日》
原則として、平成19年4月1日。ただし、事務の移譲については、準備に要する期間を勘案し事項によって別途施行期日を定める。
※⑤及び⑥は、平成19年~22年までの間。⑦及び⑧は、平成22年に移譲する。
■結局、なにが残ったのか。北海道特例の死守、3桁国道などの移譲阻止つまり北海道開発局の存続、国の省庁の非協力(一種のサボタージュ)。北海道特例がなくなることで受ける北海道のダメージが強調され(それは実際に大きいけれど。)、まともな道州制の議論が新聞の紙面を飾ることはほとんどなく決着してしまった。法案の要綱からすると、実際の施行は、事務の移譲のスケジュールに左右されるため、まったく中身がなくなってしまった。極端に言えば、事務の移譲に手間取っている間に、反対勢力によって法律そのものが改正されて更に意味のないものになってしまう可能性まで秘めている。例えば、開発道道一つをとっても地域にとっては、開発局が整備した方が道に移譲されて整備するよりも整備が進むのではいかという疑念は拭えない。
■本来、道州制は、地域に自己決定権を委ね、自己責任よる地方主権型社会をつくろうというもの。国が全国一律に決めるよりもより地域に近い組織の方が地域の実情に即したきめの細かいサービスを展開できるという考えから始まっている。
■道が提案した法律の上書き権などは、まったく無視され、地域をどう変えていくかという議論もなく北海道や道内市町村の行政改革ばかりが強調される形になってしまった。道も自分から提案しておきながらまわりのブーイングで腰が引けた部分もあったのではないか。
■道州制を先行的に実施して、地域が工夫して活性化する仕組みをつくろうという議論が財源論議にかき回されてしまったのは残念でならない。小泉首相の声かけで始まった「北海道道州制特区」。道州制特区は、北海道自治の新たな形をつくろうとスタートしたが、結果的にみれば、地域だけで取組むには影響が大きすぎて誰も責任を取りきれない程の仕組みだったと言えないか。「道州制は、国のかたちを変えるもの」という本来の意義をあぶり出したと言えよう。
→道州制特区でタウンミーティング
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→道州制で時事通信社がアンケート