■一通り発言が一段落した後、松田教授から問題提起がありました。
-前日の基調講演の中で、島田先生が、「泊食分離」を提唱。これを突き詰めると、温泉旅館は宿泊に専念せよということ。食事はコンビニでも地元のレストランで良いということになる。
-温泉旅館は、日本の文化。食事を含めたトータルなおもてなしが大事では。泊食分離をやってビジネスホテルに勝てるのか。これは欧米の価値観ではないのか。
ということで、「泊食分離」の考え方に強い異論を示しました。
■大西社長から
-ホテルの食事だけではどうしても飽きが来る。泊食分離は、特に長期滞在型の場合、食の多様性という意味では良いのではないか。 という意見でした。
■中道シェフは、
-泊食分離というのは、泊まりのプロと食のプロのコラボレーションととらえることができるのでは。例えば、建物の中で、宿泊と食事が役割分担されるというイメージ。食事の部分をテナント的に取り入れる考えということもできるのではないか。 ということで食の質を保つ手法としては、必ずしも否定的ではありませんでした。
■大西社長から
-松田教授の話も中道シェフの話も厳しすぎる面がある。経営を考えるとなかなか難しいのでは。北海道の観光地では、ビジネスホテルと変わらないくらい、1泊2食の単価が下がっている。今は、効率化競争をしている状態で、大型の温泉ホテルは、これではなかなかビジネスホテルには勝てない状況。また、一定のキャパシティのホテルが温泉かけ流しをやると、お湯がドロドロになってしまう。自分としては、温泉は清潔さが一番ではないかと思っているとのこと。
■松田教授からは、次のような反論がありました。
-温泉も食事と同じで鮮度が命。お湯が空気に触れた時点から劣化が始まっている。「沸き立て」が重要。確かに北海道では薄利多売のところが出てきている。1泊2食で3,000円で出しているところがある。それはなぜか。食材、温泉はある、人材、考える頭がない!今までは、道や国が守ってくれた。これでは宝の持ち腐れ。プールのように広い温泉がドロドロになるのは当たり前。そのような大きな浴槽はホテル側の都合でつくられたもので、客が求めたものではないのでは。
-北海道には、何が必要か。「ブランド化」が必要。アジアで北海道は、「アジアの宝」という言われ方をしている。それはなぜか。豊富な食、温泉があるから。そして温泉は日本の文化だから。これからは、アジアが世界の中心となるトレンド。北海道は、アジアの中での最高のリゾート地を目指すべき。
■また、中道シェフから滞在型を考えた時のポイントとして、
-客は、自然、温泉、鮮度の高い食材を求める。現実を考えると、やはりカニの姿を見ると喜ぶが、どこでもカニばかりでは飽きてしまうし、新鮮なジャガイモのバター焼きでも喜ぶはずだがリスクが大きい面がある。そこで、食については、いい料理をするための技術の共有化が大事だと思い、料理人学会なるものを立ち上げている。
■松田教授からは、
-かつてモンゴルにソニーのウォークマンを持って行ったところ、「これはフィリピンでつくったものか、日本でつくったものか」と聞かれた。他国の人が「日本でつくった」ことに価値を見いだしていることを忘れるべきではない。
■ということで、松田教授が「温泉は日本文化」だという強烈な主張を述べ大西社長が現実的に応じる。中道シェフが理念を語るといった展開でなかなか緊張感のある分科会でした。分科会の合間にはこだて湯の川オンパクの発表もありました。
■分科会の中でも様々な取組や考え方のエッセンスが出てきて大変参考なりました。これまでの論旨を聞いていると、沖縄は今後、人口は増えそうだし元気が良くなりそう。北海道は、イメージ先行で結果が伴っていない。これはかなり「ヤバイ」状態。「北海道」というイメージにあぐらをかいている間に取り返しのつかない差を他地域につけられてしまう可能性もありそうだね。この危機意識を道民で共有する方法ってないのかな。
