●日本学生野球憲章第13条
「選手または部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手または部員であることを理由として支給され、または貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない。」
●文面をみると、野球選手であることを理由に、学費、生活費などの金品を受け取ることができないという訳だが、高校野球指導者でもこれをちゃんと知っていた人はどれくらいいるんでしょうね。
●北海道の場合だと、野球がうまくて、より高いレベルを目指したい子で、過疎の地元には公立高校しかない。しかもそこは9人揃うかどうかも危ういし、まともな指導者がいるとは思えないとしたら、選択肢は、都会に住民票を移して野球の強い公立高校に行くか、札幌、旭川、苫小牧などの私学強豪と言われる高校に行こうとするのが普通でしょう。公立はその年によって戦力にばらつきはでるし指導者が転勤してしまう場合もあるし、誘われて条件が整えば私学強豪を志すのが当然だと思う。
●今は、中学時代でも高いレベルを求めて、例えば、道北の中学生が札幌の硬式中学野球のクラブに所属したりする時代。ガンバっている子どもを奨励する仕組みがあって良いと思う。
●高校に進学して、親から離れた生活でしかも私学、さらにユニフォーム、Vジャン、グラコンなどを揃え春は毎年、本州遠征。ナイター照明が揃い室内練習場まである恵まれた環境で野球ができる代償として、お金もたっぷりかかる訳で、私学の特徴として、スポーツ奨励の特待はなにもおかしいとは思えないし、学校自治の分野まで高野連が当然のように口出ししている現状自体が異常に思えてしまう。
●今回のプロとアマの関係で、確かに行きすぎた面はあったと思うけど、それに過剰に反応して対処療法的に大人がつじつま合わせに奔走して、「経済的に厳しい親は奨学金について学校と相談しろ」とはね。それが無理なら子どもが学校を止めて野球をする機会を失っても高野連は知らないというのだろうか。「子どもの才能を伸ばす」という基本的なことは忘れているとしか言えない気がする。もっと冷静に対処してほしいと思うのだが。
●学業優秀だと、入学金免除、授業料免除におこづかい付という学校も現実にある中で、野球だけが異常に厳しくする合理性は感じられない。特待制度を認めない理由として、①教育の一環なのに、野球偏重の生活になる、②中学生の進路指導に悪影響を及ぼすなどの理由を挙げているがなんだかスッキリしない。
●野球留学の問題にしても、「甲子園」に出たいと思えば可能性の高い高校を選択をするのは当然だし子ども達が学校を選ぶ権利まで高野連が侵害していると思えてしまう。
●しかも、1990年と2005年の2回、過去に通達は出したというものの、その後も学校のホームページで「特待」を公然と認めていた学校がかなりあり、そのようなことがあることも新聞に公然と書かれていた訳で、高野連が禁止の通達を出しながら今まで黙認しておいて、「子ども達を練習試合に出すなとか、部長は辞めろ」というのは筋が通らないと思う。
●ちなみに、報道によると、『野球以外の高校スポーツを統括する全国高等学校体育連盟の梅村和伸専務理事は「『スポーツ特待制度は悪だ』という判断が好ましいのかどうか。金銭問題や教育論だけで語れないものがある。全国調査を行う前に、議論がもっと必要だったのではないか」と疑問を呈した。また、特待制度廃止がスポーツ全体にも及ぶことになった場合については「多くの学校が取り入れている現状では混乱が起きる可能性もあるし、本当にやる気がある生徒の意欲をそぐことになる」と懸念した。』とごく当たり前の見解を示している。
●いずれにせよ、食わずぎらいではなく、近いうちに、高野連がどんな「特待」が野球には適しているかきちんと研究してほしいと思う。