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ビリー・ワイルダー『情婦』

2008-01-01 22:03:52 | 映画
情婦 WITNESS FOR THE PROSECUTION
 (アメリカ、1957、117min)

 監督:ビリー・ワイルダー
 製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
 原作:アガサ・クリスティ
 脚本:ビリー・ワイルダー、ハリー・カーニッツ
 撮影:ラッセル・ハーラン 
 音楽:マティ・マルネック
 
 出演:タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒ、
     チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスター他

 エンド・クレジットが流れるときに入る「結末を決して人には話さないでください」というナレーション通りの、どんでん返しの連続となるストーリー・テリングの巧さは、なるほど精巧な機械仕掛けのように組み立てられていて、それをテンポよく一瞬たりとも飽きさせぬように描いていくビリー・ワイルダーの手腕は見事だ。葉巻や「ココア」などの小道具はひとつひとつ印象深く扱われていて、台詞の巧さとともに印象に残っていく。

 ただし、この監督の映画の多くはその手際の見事さが余りにも目について、ああ、なるほど、と感心することはあっても、あっけにとられるという経験はない。むしろかえって興をそがれることもある。悪く言えば、作り込みすぎていて、あざとく感じることがあるのだ。

 それで、ビリー・ワイルダーの映画で一番好きな映画は、と問われると、つい『教授と美女』か『ニノチカ』などと脚本作品を答えてしまうのだけれど、この『情婦』という作品は、監督作品としては『深夜の告白』に次いで好きな映画だ。

 この映画のストーリー・テリングの面白さの多くは、タイロン・パワーやマレーネ・ディートリッヒらのキャスティングに負うところも大きいのだろうが、「結末を・・・」というナレーションとは裏腹にこの映画を何度でも見ることを可能としているのは、何といっても老敏腕弁護士に扮したチャールズ・ロートンと看護婦役のエルザ・ランチェスターの二人の演技に拠る。そしてこの二人の掛け合いを見るためにだけでも何度でも見たい映画だ。



 

 





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