沖縄について

2006年11月18日 | Weblog
欺瞞と不誠実と非民主的な方法でこの国の教育基本法が塗り替えられようとしている今、私たち日本人の戦中と戦後の 象徴の場、沖縄で知事選が行われる。沖縄は国内の米軍基地の実に7割を負担し、また時々の政府は沖縄振興を約束しながら、それは政官財米国が複雑にからみあった公共事業しか打ち出せず、そして、沖縄はずっと県民所得が最下位で推移してきた。あきらかに政策的な失敗だろう。それでも、歴代の内閣の中には先の大戦で悲惨な地上戦を体験せざるを得なかったこの土地に負い目を感じ、沖縄に実際住んでいる住民の立場から考えようとした政治家もいるにはいた。しかし、安倍内閣ではどうか。

   現地に行って、高市早苗沖縄担当大臣の「出来高払い発言」の反響
   を知った。彼女は10月21日に沖縄を訪問し、基地移転の進捗状況に
   応じて北部地域振興策を進めると発言したのである。金が欲しけれ
   ば、国策に協力して、さっさと基地移転を進めろという居丈高な姿
   勢がこの発言の背後にある。(YamaguchiJiro.comより)

語るに落ちるとはこの事である。今回の知事選で与党が勝てば、アメリカの軍事的プレゼンスの中に沖縄はますます組み込まれ、本当の意味での自立した経済政策や地方自治の概念など彼方に消し飛んでしまうだろう。国が札束で頬を打つだけではなく、いずれカジノ特区が沖縄に出来、どこかの米ファンドがそれに投資し、政治家が一儲けし、人や自然の豊かさより軍事と金が一番だと言う価値観が改めて植えつけられるだろう。

   名護では、小説家の目取真俊氏と対談した。最近まで高校教師を
   していた同氏は、沖縄の若者を取り巻く絶望的な状況を語ってく
   れた。学校では学費滞納による退学者が相次ぎ、既存の奨学金や
   学費免除制度では追いつかない。経済的自立ができていない若年
   層での結婚、出産が多く、貧困の悪循環が始まっている。仕事と
   いえば、本州から来る観光客相手のサービス産業における低賃金
   労働しかない。(同じくYamaguchiJiro.comより)

沖縄で起こっていることは今の日本を先取りしている。偽装請負や派遣業が跋扈し、格差が是正されず、職からあぶれた若者は国家という大きな物語に自分を擬装するしかなくなり、国や宗主国のいいなりの先兵になり、為政者のアイツが敵だという煽る言葉に簡単にだまされるかもしれない。それは北朝鮮でもいいし、教師でもいいし、末端の公務員でもいい。それに異を唱えないように、子供の頃から我が国の郷土と歴史を愛せよ、と強要されるだろう。

かつて米軍基地の代理署名拒否問題で日本政府から起訴されて被告席に立った大田昌秀元知事は、最高裁の法廷で次のように問いかけた。「沖縄の基地問題は、単に沖縄という一地方の問題ではなく、日本の主権と民主主義が問われる、すぐれて日本全体の問題ではないでしょうか」と。

その大田氏の系譜を引く糸数慶子氏が沖縄知事選に立候補している。氏は平和の語り部として、いままで精力的に活動してきたと聞く。選挙戦は予断を許さない情勢らしいが、基地負担の桎梏から一度抜けて、今までの国の沖縄への経済政策が本当に正しかったのか。基地がなくとも、あるいは大幅に縮小したほうがかえって、生活が豊かになるのではないかという観点からも糸数氏の主張には価値があるのではないだろうか。もちろん、戦争と基地と平和の問題は沖縄の女性だから語れる事がある。沖縄の女性だから語る資格がある。


人びとが負わされた重荷のうち、最大の部分をになったのは多分、各
民族の女性たちだったでしょう。 彼女たちの苦難、忍従、そして人知
れぬ力を世界史は、余りにもあっさりと忘れてしまうものです。彼女
たちは不安に脅えながら働き、人間の生命を支え護ってきました。戦
場で斃れた父や息子、夫、兄弟、友人たちを悼んできました。この上
なく暗い日々にあって、人間性の光が消えないよう守りつづけたのは彼
女たちでした。 (ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領)