ナノテクノロジーでは、自然界で行われている営みから学ぶところが多い。すでにいくつかの例を説明した(下表参照)。
昨日述べた太陽光による水の分解は光合成を真似たもので、人工光合成とも呼ばれている。植物の葉のクロロフィル(葉緑素)が光を吸収して、水と炭酸ガスから炭化水素を作り出し、酸素を放出する。クロロフィルは光を効率良く吸収することと(11//5参照)、それに続く反応プロセスに重要な役割を果たしている。この反応プロセスで、水が酸化しその結果酸素が生成する。同時に炭素間の結合が生じ炭化水素が作られる。
これらの反応が効率よく進行するためには触媒が必要であるが、その正体はあまり明らかではない。ジョージア工科大学の研究グループは、水の集団が触媒の役割を果たしているという実験的な証拠を見いだしている*。光電気化学電池を用いた人工光合成では、酸化チタンや酸化鉄などが触媒として用いられ未だ生態系とは程遠い。一方、スイスを中心とする国際研究グループは、藻類から採取したたんぱく質をを混入した酸化鉄が、光電気化学電池の電極として高い性能を発揮することを見いだしている**。
*http://www.sciencedaily.com/releases/2012/04/120402162702.htm
**http://www.nanowerk.com/news/newsid=23783.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.Tu_rB7jS39Y.google
光合成で炭酸ガスの取り込みも興味深い。温暖化現象の解消に貢献し得ることとまたバイオ燃料も生成出来る。触媒を用いて炭酸ガスをメタンやメチルアルコールに還元し得ることが示されているが、人工的に光照射により炭素間の結合を形成し炭水化物を作り出すことは未だなされていないようである。
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