昨日の記事で、カーボンナノチューブを用いた大容量蓄電池に触れた。今日はまずナノ粒子を用いて蓄電池の容量を増やすことができることを説明しておこう。
リチウムイオン蓄電池は、通常陽極、陰極およびリチウム塩を溶かした有機溶媒からなる。充電時には、陽極の電子が電源を通って陰極へ運ばれる。これにともなって、溶媒中のリチウムイオンが陰極へ移動する。陰極へ到達したリチウムイオンは陰極の電子をとらえリチウム原子となり陰極材料と反応して化合物を構成する。陽極と陰極との間に負荷を接続しない限りこの状態が保存される。つまり電池が充電されたことになる。負荷を接続すると、陰極の電子が負荷を通って陽極に向かって流れる。それにともなって、リチウムイオンが溶媒中を陽極に向かって戻る。
リチウムイオン蓄電池の性能を向上するには、充電時の電流と蓄え得る電気量を大きくすればよい。電流を大きくするには、陽極の面積を大きくし、陽極に到達した陰イオンから出来るだけ速やかに電子を取り上げ得るようにすればよい。陽極表面に自己アセンブリしたシリコンやカーボンのナノワイヤーを付着し、電流が10倍になったという報告もある。また、電気量を大きくするには、陰極の表面面積を大きくし、出来るだけ多くのリチウム原子を陰極に蓄え得るようにする必要がある。このため、陰極をナノ粒子でコートすることが試みられている。
電気自動車やハイブリッド車に用いられるリチウムイオン蓄電池の性能を上げることは、自動車メーカーにとって最重要問題の一つであろう。各自動車メーカーもその開発に余念がないと思われる。Nanowerkのデータベースによると、蓄電池を製品化している会社が世界中で19社もある。あまり名前を知らない会社が多く、おそらくベンチャー企業であろう。
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